1919年に米イリノイ州・シカゴ近郊で設立された、現在も存続している老舗ワイヤーメーカー。無線（ラジオ）アクセサリー用のワイヤー・ケーブルなど、電子・通信分野への用途供給からキャリアをスタートし、戦時期には軍通信等の用途での重宝され、戦後も家電、放送機器、オーディオ・テレビ等の消費市場の成長に対応し、製品種類・用途を拡大していきました。
小規模ながら柔軟性を持ち、クライアントの希望する仕様に応じてワイヤ／ケーブルをカスタムで作る能力を重視してきたことが評価されています。 現在名はConsolidated Electronic Wire & Cable。

本作で使用した初登場となる「Consolidated Wire & Associated Co.」の単線ワイヤーですが、同社のヴィンテージワイヤーには錫メッキ銅タイプのものが多い中、こちらは1930年代後半から40年代前半という、たったの数年間しか製造されておらず、しかも「非メッキ銅＋三重コットン構造」という大変レアな代物になります。
サウンド特徴として“錫メッキよりもさらにしなやかで自然な倍音表現を示す”傾向があり、また34AWGという極細であることも、リケーブルカスタムのマテリアルとして最高に使いやすい逸材となっています。

1930年に米ミシガン州・デトロイトで設立された、現在も存続している老舗ワイヤーメーカー。自動車＋電気工学の発祥地デトロイトで生まれたのも納得の、モーター巻線用のマグネットワイヤ（電磁線）からキャリアをスタートしています。2000年前後には合併やグローバル展開強化が進み、世界最大のエナメルワイヤーメーカーとして現在に至ります。現在はSuperior Essex Inc.母体のEssex Solutionsというケーブル事業ブランド。
過去のヴィンテージナンバリングでDudloManufacturingという幻のヴィンテージワイヤーを使用したケーブルが存在していましたが、旧Dudlo工場で始動した新ブランドこそがこのEssex Wireになります。
Dudloはサウンド的に質が高く、また子孫ブランドを多く残していて、WAGNUS.としても何かと縁を感じる祖的ワイヤーメーカーです。

こちらも本作初使用で、フォートウェイン工場にて1948年3月に製造されたミルスペック前夜（正式MIL規格成立である1949年の前年に製造されたテスト・準拠仕様）のプレーンエナメル線という、これまた大変レアな逸品になります。
しかも導体は「British Copper Standard Bare Annealed」という、英国規格相当の高純度銅（99.9% Cu, 電気用精錬銅・軟銅焼鈍）であることがラベルに示されています。
この時期のプレーンエナメル（無着色エナメル）は、後年のポリウレタンやナイロンコートとは異なる、初期フェノール系樹脂やオレオレジンをベースにした非常に薄い絶縁被膜が特徴的で、現存数も極小かと思われます。
AnacondaやBeldenの同時期銅線と並んで、戦後アメリカン・トーンを象徴する大変貴重な歴史的素材です。

ケーブル仕様
Hot側：1930-40's Consolidated wire triple cotton 34AWG solid core 2×2
Cold側：1948 B.C.S.BA MILS-0031 Essex wire plain enamel 40AWG 2×2
Total 8core, 8strand

《高域》
空気的で伸びやかな、開放感に富んだ表現です。ハイハットやシンバル類のアタックには柔らかいクッション感があり、ナチュラルな質感が特徴的。
空間の奥行きと音の定位を明瞭に描写しつつも、響きはタイトで応答性に優れており、細かいリズムのノリや流麗なレガートにも的確にレスポンスします。

《中高域》
エモーショナルでありながら分析的な解像感も備えており、透明なアルペジオの立ち上がりやピアノの残響音が綺麗に写実されます。
ギターソロの倍音成分やコーラスの抜け感が色彩感を与えつつも、ほんのりと色褪せたようなニュアンスが独特でノスタルジックな音色感を表現します。

《中域》
芯をもって前に出てくるようなプレゼンスが特徴的で、声のニュアンスやエコーの余韻が音楽的に響き、感情の熱量がしっかり伝わるような印象です。
それでいてギターコードの倍音表現は自然で、カッティングやクランチトーンの粒立ちが心地よく、全体として情感と忠実さのバランス感に優れた音像表現といえます。

《中低域》
厚みがありながらもくっきりとした輪郭のベースラインやフロアタムで、グルーヴのうねりなどの明快さが特徴的です。
量感はしっかりと確保しつつもタイトに制御し、単純な重心の低さではなくローエンドとの滑らかさにまで繋がる印象で、楽曲の土台を安定的に支えながらもリズミカルさや推進力を感じさせます。

《低域》
凝縮感のあるキックが芯のあるリズムを刻む印象で、量感とインパクトが散らからずに調和します。
ヴィンテージからモダンまで幅広く応答できるような音像表現で、ローエンドへの沈み込みも深く、それでいて引き締まった上下感も特徴的です。

《トータルサウンド》
中高域の広い音場がまるで花束のような音の配置感が独特で面白く、良き古さを感じさせながらも現代の音にも対応できる良質さ・懐の深さが魅力的な仕上がりとなっています。
それはまるで長い時間を経て、色褪せても尚美しく、現代的な空間ともマッチするアンティークブーケのようなサウンドイメージです。

プレーンエナメルのエネルギッシュな充実度と、コットン層線ならではのナチュラルでウォームな空気的質感が上手く融け合った、アメリカン・ヴィンテージワイヤー産業のユニークなコラボレートサウンドをお楽しみ下さい。