カスタムIEMの歴史を語るうえで欠かせないブランド・JH Audioから最新モデル「Jolene」が登場。今回は一足お先に試聴用サンプルをお借りしてのレビューをお届けします。
今でこそ「個人の耳型に合わせて作るイヤホン」として知られるカスタムIEM(イヤモニ)ですが、その基礎を築いたのがジェリー・ハーヴィー氏。世界的ロックバンドであるヴァン・ヘイレンのモニターエンジニアを務めていた際に開発したイヤモニが多くのアーティストに評価されたことから、のちにイヤモニメーカー・Ultimate Earsを設立。その後紆余曲折あって、自身の名を冠するブランド「JH Audio」をスタートさせ、今やアーティストだけでなく世界中のイヤホンファンからも人気を集めるまさに"イヤモニの神"的存在です。特に日本のファンを大切にすることでも知られ、ヘッドフォン祭をはじめとしたイベントにも積極的に来日・参加されています。
そんなJH Audioが日本時間3月6日深夜、突如として発表した最新モデルが「Jolene(ジョリーン)」です。これまでのRoxanne(ロクサーヌ)、Layla(レイラ)といったモデル同様、今回はカントリー・ミュージックの名曲からネーミングされています。発表以来、いつ日本に上陸するのか?!とイヤホンマニアの期待が高まっていたのですが、これまた先日突如としてその試聴機が2日間限定で展示され、多くのお客様に聴いていただくことができました。
【緊急決定】本日・明日の2日間のみ、先日情報が一部公開されたばかりのJH Audioの新モデル・Jolene(ジョリーン)の試聴機が聴けちゃいます!ちゃんと「JHJO」という文字が入ってますね。まだ日本国内ではほんのひと握りの方しか聴いたことのない最新作、ぜひ明日の閉店までにお試しを! #JHAudio pic.twitter.com/I7nbUgxz1d
— FUJIYA AVIC フジヤエービック (@FUJIYAAVIC) March 13, 2021
が、あまりにも突然かつ2日間のみという短期間で終了、しかもすでにアユートさんにお返ししてしまったので、まだまだどんな音か気になる方も多いのでは?そこで今回は、ちょうど本日3月25日から受注受付開始となったこの「Jolene(ジョリーン)」の音質レビューをお届け致します。残念ながら店頭試聴機のご用意にはまだお時間をいただきますので、それまでの間ちょっとでもご参考になれば幸いです。
今回の新モデル・Jolene(ジョリーン)の最大の特徴といえば「世界初のデュアル対向4DD+8BA 4ウェイ 12ドライバー搭載カスタムIEM」という構成。ちょっと長くてややこしいので帯域別にドライバ構成をご紹介すると…
High:BA Driver x 4
High-Mid:BA Driver x 4
Mid:4.9mm Dynamic Driver x 2
Low:9.2mm Dynamic Driver x 2
という布陣です。
DD(ダイナミックドライバ)を搭載したJH製品といえば、ちょうど上の写真でもジェリー氏が手にしている「Lola(ローラ)」がありますが、そちらと比較すると「ハイミッド(4BA)が追加された」「ローが2BAから2DDに置き換えられた」という点が異なります。はたしてこの構成の変更がどう音質に影響するのか?せっかく名前を出したので、Lola(ローラ)と比べながらお伝えすることとしましょう。
まずは見た目について。左がLola(ローラ)カスタム版のデモ機、右がJolene(ジョリーン)のデモ機です。どちらも結構な大きさですが、Jolene(ジョリーン)の方がより厚みを増しています。特に今回は容積を必要とするダイナミックドライバが2つも増えているので、これは仕方ないところかと。
と、こうして見比べてはみるもののJolene(ジョリーン)は耳型にあわせて作るカスタムIEMです。ということはデザインはユーザーの数だけ存在することになりますが、このJolene(ジョリーン)で見逃せないのが「専用デザインオプション【Jupiter Jolene】【Hyper Black Jolene】」の存在。これは他のモデルでは使うことのできないJolene(ジョリーン)だけに許されたデザインで、しかも"無料"でオーダー可能!
ベースデザインはおなじみのフライングガール(オーバーサイズ)ですが、まるで彫像のようなディティールの細やかさでカスタムIEMの特別感をアップしてくれます。こちらはシェルのカラーも固定になるためデザインの自由度は狭まりますが、Jolene(ジョリーン)でしかできないというプレミア感を考えると…こうして悩むのもカスタムIEMオーダー時の楽しみのひとつですね。
それでは音質の比較を、こちらもLola(ローラ)と比べてみます。Lola(ローラ)の音質上の特徴といえば「主張の強い高域」と「濃い中低域」が挙げられるかと思います。そこにハイミッドの追加とローのダイナミックドライバへの置き換えがなされるとどうなるのか、もしかしてこの特徴がもっと強調されるのでは…?と想像しながら聴いてみたのですが、意外や意外、そんな予想を良い意味で裏切る「あっさり感」と「透明度」がJolene(ジョリーン)の持ち味のようです。
ここで改めてJolene(ジョリーン)のリリース発表を見てみますと、
「Jerry Harvey がこれまでにデザインした IEM の中で、最も自然でアナログ的なサウンドの IEM です」
なる一文が。なるほど、たしかに他のJH製品でよくキーワードとして使われる「濃さ」「キャラの強さ」とはちょっと異なる方向性の持ち主と考えてよさそうですね。特に「自然」というポイントは他機種と明確に差別化が図られているようで、ボリュームを上げ気味にしても音質バランスが破綻しない、聴き疲れのしにくい音で聴いていられるところがあります。
※音量の上げすぎにはご注意下さい
また、「アナログ的」というとあまりクリアでないようなイメージを抱いてしまいますが、このJolene(ジョリーン)の差す"アナログ的な音"というのは、メリハリのハッキリした音ではなく、ハイミッド用ドライバを追加したことで生まれた、伸びやかな中高域が出す透明感を指しているのではないでしょうか。
形式 |
カスタムIEM (インイヤーモニター) |
---|---|
ユニット |
カスタムメイド・バランスドアーマチュアドライバー (L/R 各8 ドライバー/High 4,High-Mid 4) ダイナミックドライバー4 基 (L/R 各4 ドライバー/Mid 4.9mmDD 2,Low 9.2mmDD 2) ●L/R 各12 ドライバー、4 ウェイ・ハイブリッド構成 |
周波数帯域 |
20Hz ~ 23kHz |
入力感度 |
114dB @ 1mW |
インピーダンス |
10Ω |
コネクター形状 |
ロック機構搭載 オリジナル7pin コネクター |
付属品 |
カーボンファイバーアルミニウム製キャリングケース IEM ケーブル(3.5mm 3 極/7pin/低域調整搭載) シリコンイヤーピース (S/M/L)、フォームイヤーピース (S/M/L) 低域調整用スクリュードライバー、クリーニングブラシ |
「JH節」ともいえるノリの良さ、音の濃さといった方向性とはまたひとつ違った、JH Audioの新しい顔を見せてくれるのがこの「Jolene(ジョリーン)」というモデルかと思います。音質といい、専用のデザインといい、「同じことばっかりしてたら面白くないだろ?」と悪戯っぽく笑うジェリー氏の笑顔が浮かんでくるようです。こちらの試聴機はご用意までにもう少々お時間をいただきますが、到着次第すぐに当店ツイッターにてお知らせします!試聴機展示開始の際にはぜひ一度店頭でお試し下さい。