レコーディングエンジニアの太田タカシさんがiPhone 15にドングルDAC(小型USB DAC)を繋いで有線イヤホンSIMGOT EA500、水月雨(MoonDrop) Aria2、qdc SUPERIORを比較レビューします。
目次
はじめに
ドングルDACを使えばiPhoneが高音質に
1万円台の有線イヤホンを音質比較
SIMGOT EA500レビュー
水月雨(MoonDrop) Aria2
qdc SUPERIOR
まとめ
みなさんこんにちは、今回は有線イヤホンの比較レビューです!
先にお伝えしておくと私自身は有線派です。それこそ利便性で言えばワイヤレスの方が圧倒的に便利なのですが、「挿せば使える」「充電がいらない」「(ワイヤレスよりも)無くしづらい」そして音質の優位性から基本的には有線のイヤホンを使っています。
とはいえやっぱりワイヤレスは便利なのと音質も有線イヤホンと遜色無くなってきているので、自分の好みやライフスタイルで選んでいけたらいいのではないかと思っています。
レコーディングやライブの現場では接続の簡易さやワイヤレスでのラグが演奏に影響を与えてしまうので有線を使用しています。
有線が好きだ!と言っても、問題はデバイス。そうなんです。iPhoneユーザーの共通の悩みはイヤホンジャックがないことではないでしょうか。
iPhoneを有線イヤホンに繋いで聴くためには、LightningやUSB Type-Cからの変換が必要になってきます。ここが結構キモになっているんですよね。
恥ずかしながら私自身Lightningの時はヘッドホンジャックの変換くらいの感覚でいたのですが、iPhone15 Pro MAXに機種変をした際にUSB Type-Cからの変換が必要となるので色々調べてみると、どんなに安かろうと高かろうと変換ケーブルにはDACが搭載されていることを知りました。
見た目がシンプルな変換ケーブルの時はiPhone側でデジタルからアナログへ変換していると思っていたのですが変換ケーブル側でデジタルからアナログ変換をしているのです。
それを知ってしまうと「聴ければ良いや」と思いつつ、やっぱり良い音質で聴きたいのが人の常、そして実際どうなのかを調べてしまうのがエンジニアの常、500円くらいの変換と2万円弱のドングルDAC「FIIO KA3」を導入し、聞き比べて違いを確認したところ、あまりの違いに愕然としました。
iPhoneってこんなに音良かったっけ?と思うほどレンジ、奥行き解像度全てにおいてバージョンアップされる感覚でした。
その体験以降ドングルDACは大事な持ち物のひとつとなっており、iPhoneのみならずMac Book Airに接続して音楽を聴く時や、外でちょっとした編集作業をする時もPCのヘッドホンアウトを使わずにドングルDAC経由でモニターして作業したりしています。
iPhone15 Pro MAXに機種変してからずっと使っているKA3は、あまり味付け感がなく解像度が上がるのでお気に入りです。
【商品情報】FiiO KA5
» 詳細を見る
iPhone 15 Pro MAXにドングルDACを繋いで有線イヤホンを聴くようになり、多種多様な有線イヤホンも試してみたくなりました。ということで今回は1万円台の有線イヤホンの聴き比べをしていきたいと思います。
KA3ともうひとつ、ドングルDAC「iBasso Audio DC-Elite」をお借りしましたので、この2機で比較していきます。
DC-Eliteは、パキッとしっかりとした音色が印象で各楽器が鮮明になるイメージです。
【商品情報】iBasso Audio DC-Elite
» 詳細を見る
それでは試聴していきます。
最初にSIMGOT EA500です。EA500は「いい音を楽しむ為の敷居を低くする」という理念のもとフラッグシップのEA2000のノウハウを応用して作られたイヤホンです。
通常のダイナミック型イヤホンと異なり内磁型と外磁型のデュアル磁気回路を搭載していて、広い周波数特性と低い歪み、ダイナミクスと臨場感をを実現しています。
また、交換可能なノズル設計によってチューニングの変更ができるという点もユニークですね。
外見はシルバーのメッキで手に持った感触ではずっしりとした重みがありますが、装着してみるとそれほど重さを感じません。
まずは自分の手持ちのKA3で試聴してみました。
最初の印象はエレキベースなどの低音の楽器の居心地がいいと感じました。適度な定位感と位置関係で聴くことができます。特に印象的なのが、低域を担う楽器が何をやってるか鮮明に聞こえてくるのでその辺りも楽しむことができました。ただ、高域に関しては若干シャリシャリした印象があります。
試聴環境をDC-Eliteに変えると中高域のシャリシャリ感はだいぶ抑えられ、全体的に腰が据わった印象に変わります。低音楽器の再現性も向上しました。クラシックやオーケストラ系音楽は特に心地よい派手さを楽しめます。
低域の位相がしっかりしていて、高域は少し散る印象がありますが、相性の良いドングルDACやリケーブルでコントロールできるレベルです。
【商品情報】SIMGOT EA500
» 詳細を見る
次は水月雨 Aria2です。Aria2は特許構造のダイナミックドライバーとTiNセラミックドームでフラットな高域特性と特殊なダイナミックレンジ、低歪を可能にしています。
また、技術だけでなく高級音響エンジニアの主観も取り入れ、測定器の高域精度の問題を解決、自然で開放的、そして原音に忠実な音を再現しています。
見た目は落ち着いた堅牢感のあるイメージです。こちらも手に持つと重量感がありますので、人によってはちょっと重さを感じるかもしれません。
こちらもまずは手持ちのKA3で聴いていきます。第一印象は中高域がとても綺麗だと感じました。ドラムのシンバルやハイハットがとても生々しく生ドラムの繊細なタッチ感が見えます。女性ボーカルも心地よい響きで聴こえます。かといって重心が高いわけでもなくギターアンプの低域の箱が鳴っている感じもしっかりと出ています。
DC-Eliteでは個々の楽器のディティールが上がって、より立体感が増します。クラシックなどでは空気の細部まで聴くことができます。中高域の再現性はやはり凄く気持ちいいです。低域までしっかり出ていてバランスがいいのですが、人によっては少し散っているように感じて物足りなさがあるかもしれません。
中高域から高域にかけての原音再生力が高く、低域は少し散っている印象がありますが、包み込む感じともとれるくらいなので好みの問題だと思います。
【商品情報】水月雨(MoonDrop) Aria2
» 詳細を見る
最後にqdc SPERIORです。独自の同軸デュアル磁気回路とデュアルキャビティ構造で優れた過度特性を実現したモデルです。ブランド初の10mmフルレンジドライバーを搭載し、幅広い帯域と調和の取れたサウンドを再生します。
qdcはカスタムIEMを作っているブランドということで、見た目もその雰囲気を帯びています。重量感はあまりなく自然にフィットする感じがします。
まずはKA3で聞いてみます。最初に印象に残ったのは音場の近さ、特にボーカル帯域を中心にしっかりと音が出ていると感じました。位相の良さが際立つイヤホンで低域から中域に関してはセンターラインがしっかりと際立っています。
DC-Eliteで聴くと過度特性の良さが際立ち、出音のレスポンスの速さに少し驚くレベルでした。そのおかげか曲のダイナミックレンジをしっかり楽しむことができます。
フルレンジドライバーということもあり、音域のレンジ自体は中域に纏まっていて一聴きして派手さやずっしり感はあんまりないのですが、カスタムIEMで培った技術なのか位相とレスポンスの正確性が特徴的なイヤホンです。
声の帯域を中心として低域から中域にかけての位相とレスポンスが凄くいい、ただそこのエネルギーが強い分、人によっては地味なサウンドに感じるかもしれません。
【商品情報】qdc SUPERIOR
» 詳細を見る