フジヤエービックでは、このたびスタジオモニターヘッドホンが欧州で人気を博しているスロヴェニアの新興メーカー、OLLO AUDIO(オーロ・オーディオ)のリファレンスヘッドホンの発売を開始。第1弾モデルOLLO AUDIO S4Xの試聴レビューをお届けします。
OLLO AUDIO(オーロ・オーディオ)は、独自の技術によるサウンド・エンジニア専用ヘッドフォンを供給するスロベニアの新鋭ヘッドフォン・オーディオ会社です。
はじまりは、OLLO AUDIOのCEO ロック・グリックが、家族が寝静まる夜にホーム・スタジオで自身のバンド作品のミックスを仕上げなければいけなかった状況を解決するヘッドフォンを製作することから始まりました。
既製品のヘッドフォンでは、荒れ回る低音域と腰に響くサブ低音域を正確にモニターし、キックとベースのミックスを適切に判断することは不可能、と気が付いたロックは、スピーカー・コイルの振動を直接体に響かせる「タクタイル・サウンド」の技術を応用したモニター・ヘッドフォンのアイディアを思いつき、すぐに行動を起こします。
スタジオのモニタリングスピーカーを聴いているかのようにヘッドフォンでミックスするためのヘッドフォン、Sシリーズは、2016年のプロトタイプ製作から瞬く間にサウンド・エンジニア達の話題のリファレンス・ソリューションとなり、鮮やかな発展を遂げました。
第一線のサウンド・プロフェッショナル達が信頼する有数のヘッドフォン・デベロッパーに成長したOLLO AUDIOは、既存モデルのさらなる品質向上に努める傍、次世代製品となる3DサラウンドとVRのソリューションを見据えた新たな研究開発に取り組んでいます。
・・・音楽制作をやる方が、既存のヘッドホンの低域の出方に大きな不満を抱き、「自分の欲しい音のヘッドホンを作ろう!」とスタートアップした・・・というのは、ちょうど日本のTAGO STUDIO T3-01と同じですね!OLLO AUDIOの製品も、主にヨーロッパの音楽制作関係や、エンジニアなどを中心に評価を受けてきたようです。
さて、フジヤエービックではOLLO AUDIO S4Xを入手し、聴かせてもらいました!
それでは箱を開封しましょう。 "Made in Slovenia"がしっかり入ってますね。
本体は武骨な感じ。いかにも仕事の道具、といった感じですね。
見た目は「平面振動版ヘッドホン?」と思ってしまいそうですが、通常のダイナミック型ドライバーを使用しています。無骨なルックスですが持ってみると意外と軽いです。
イヤパッドは長時間使用に耐えるような厚みのあるもので、サイド部分が人工皮革、耳に当たる部分はベロア生地、このあたりもスタジオワークなどでの使用に対応しています。
リケーブル対応で、L/R各端子は2.5mmΦ3極となっており、HIFIMANあたりのケーブルと互換性ありそうでバランス接続対応も問題なさそう。こちらはショップで検証してみますね。ケーブルは長さ2mでプラグも含め質感は高く、しかも邪魔になりにくい細めの導体です。ソフトキャリングケースも付属します。
さて聴いてみましょう、超スタンダードな「ノラ・ジョーンズ」。おっとその前に、代理店さんからも「エージングが足りないと思います」といわれ、最初聴いた際には「ん?」なサウンドバランスでしたが、1日DAPに刺して音を出していたら、ずいぶん改善されました。
ノラ・ジョーンズなどのアコースティックな曲、ジャズなどはとても良い雰囲気で鳴らします、やや古めかしい、例えればAKGのモニターヘッドホンに近いような音色だと思います。開放型とはいえ音場が広がるタイプではなく各楽器の定位が目の前に分かりやすく展開し、なるほどモニターヘッドホンだと感じさせます。音がかっちり明確に、正確に出てくる点もスタジオユースのモデルだなぁ、という印象です。
このヘッドホンが作られた理由でもある「低域」については、確かにすっきりナチュラルにベースやキックの音が出てきて、先述のTAGO STUDIO T3-01にも似たバランスだと感じました。T3-01は密閉型で、こちらは開放型(音漏れはかなり出ます)なので、国内未導入の密閉型タイプモデル"S4R"なども一度確認してみたいですね。
高域は必要なレベルはしっかり確保していますが、ハイレゾ対応!というようなモダンかつ「繊細なな出し方とは少し違う音です。
ただ、メタルや一部アニソンなど「音がみっちり詰まった」曲を現代的にきれいに解像して聴かせるのは、少し苦手なタイプかもしれません。ただしロックなどはマスタリングやミキシングの差が良く分かります、悪い意味でも良い意味でも「骨格の定まった音」という印象を受けました。
ちょっと気になったのがヘッドバンドのステー部、全金属でヘッドパッドは分離しているのでダンピングされている箇所が全くないため、指ではじいたりするとカンカン鳴ります。開放型という事もあり、実際に音量を上げて試聴しているとヘッドバンド鳴らない?と思い、ヘッドバンドを指で押さえてみると、ちょっと音質が変わるような気がします(個人の感想です)。このヘッドバンド部は軽量化に役立っていますが、もしかしたらちょっと何かでダンピングしたほうが良いかもしれないですね。
また、開封の際には「ヘッドホンのサイド部から圧力をかけないでください」という内容の、ほのぼの感漂う手書きイラスト入り注意書きが入っています。取り扱いの際には気を付けたいですね。
インピーダンスは32Ω、平均的な音圧にするにはボリュームを少し上げる程度で鳴ってくれるので、それなりのDAPでも聴かせてくれます。念のためスマホ!であいみょんを聴いてみましたが、こういう感じの曲であれば、そこそこ鳴らしてくれました。
優れたヘッドホンアンプをしっかり使えば、上記試聴の傾向も結構変わる可能性もありますね。
OLLO AUDIO S4X ヒアリングの結果をまとめると、
+造りは今後改善の余地はありそうですが長時間リスニング対応の努力はしっかり
+とてもカチッとしてフラット、低域もすっきり聴ける。ミュージシャン好みしそう
+スタジオなどでのモニタリングヘッドホンとしての資質は十分。
+音の渦のようなサウンドは苦手かも、音数が減ってくれば素晴らしい
+今の日本で好まれる現代的な音とは少しベクトルが違う
+AKGなどのようなヨーロッパの香りを感じさせる音質傾向。
・・・ということで、最近没個性化が進むヘッドホンの世界に、新たな一石を投じてくれたモデルであることは間違いなさそうです。
本日、発売日の2020年12月10日より、フジヤエービック店頭(中野ブロードウェイ3F)にて、こちらの個体を試聴用デモ機として配備しました!気になる方は、お気軽にスタッフへお声がけください。