アコースティックリバイブ社新ヘッドホンケーブル "RHC-TripleC-FM" シリーズ の、気鋭の社外レビュワーさんによる集中レビューを掲載。多くのケーブルを集中レビューした長編力作につき、4エントリに分割してお送りいたします。
今回はアコースティックリバイブ社のご厚意によりお借りした、新素材 "TripleC"を使用した 新型ヘッドフォン用リケーブルの試聴レビューを、こちらのブログに書かせて頂きます。
まずは用意して頂いた各ヘッドフォンについて、デフォルトのオリジナルケーブルで聴いた印象、そしてアコースティックリバイブのケーブルにチェンジして聴いた印象を記していきます、最後までお付き合い頂き、自分なりの感想ですがお読み頂いた方にとって何かのご参考になればと思います。
【K271 mkIIの特徴】ライブ感が楽しめるモニターヘッドフォン
通常ケーブルでは、奥行きのある空間表現で、まるでステージを思わせるような臨場感のある演出のある音。
そこに過剰な派手さはなく、繊細さとエネルギーはあれど、どこか誠実さを感じさせる音です。
低域の膨らみを抑えることで全帯域バランスを整える「バスチューブ機能」が搭載されているだけあって、低音はややタイトですが、そのおかげで全体的に概ねバランスよく音を届けてくれます。
無駄な色付けがなく、軽やかで、ムラなく鳴らしてくれるその姿勢は「スタジオモニターヘッドフォン」としてだけでなく、音楽を楽しませてくれる機器だと思います。
軽快で小気味良く刻んでくれるリズムも心地いいですね。
ヨーロッパではスタジオモニター用ヘッドフォンとしてAKGが多用されており、プロユースだけにケーブル交換が可能となっています。
AKGの場合は「ミニXLR」というタイプの引っ張っても外れないロック付き端子のケーブルになっています。
溜まったホコリが一掃されたような爽快感
ややノイジーな付帯音や雑味、抜けきらず少しこもった感じが、スッキリと霧が晴れたような印象です。
ケーブルを変えて、「こんなにノイズが乗ってたのか…」というよりは、ここまで音を洗練させることができるのかと、少し驚きました。
全体的にクリア感が増して空間が澄んで音が明瞭になり、今まで隠れてしまっていた細かな音が姿を現して本来の音を広げられるようになった、というような感覚です。
全体的なバランスは変わらず、新たな無駄な色付けもありませんが、モニターヘッドフォンならではの敢えての「誠実さ」から、抜け感が出たことにより「爽やかさ」に変わったような気がします。
通常のケーブルに比べて、細かな音の綻びがとれて音の繊細さがより際立ち、弦楽器の音色にもハリが出て音像が掴みやすくなりました。全体的にイキイキとした音になったような気がします。
従来落ち着きのあった高域は『TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR』ではより音の広がりにも余裕が出て、高域の抜け感、キラキラした感じも、音楽で表現している宇宙や夜空の煌めきを感じさせてくれるようになりました。
タイトな低域の量感はそのままに、解像度が上がったことによって、より深く刻むようになったように感じます。
Aimerのヴォーカルもクリアになり透明感が出て、ライブハウス感のある奥行きのあるヴォーカルがより強弱がつき、吐息感やウィスパーヴォイスも聞き取りやすくなりました。
ハイトーン部分も余力が出て伸びやかに歌ってくれる感じがします。
それと同時に、弦楽器やピアノの高域への伸びがやや良くなったように感じます。
ヘッドフォン本体価格よりも高額なケーブルですが、K271mkIIのもつポテンシャルをすべて開放するかのような音が出ている、と感じました。
持ち前の解像度の高さやバランスの良さに加えて、本来そこにあるはずの細かな音やニュアンスもキャッチできるようになったので、リスニングはもちろん、音作りの際にも、より細かなチェックができそうです。
【PRO900の特徴】繊細さと鋭さを兼ね備えたハイブリッドなサウンド
通常ケーブルでは、摑みどころのないほど音の粒子が細かく、空間に音が溶け込んでいくかのような繊細さが印象的です。
低域の量感があれど、原型の掴めないほどソフトで細やか。その重力のように広がる低域のおかげで、尖った音やハリのある音の表現もより際立ち、立体感を引き立てます。
弦楽器やクラップなどは気持ちいいほどエッジが効いていてエネルギッシュです。
ヴォーカルのハイトーンの伸びやパワーのある声も、口元を如実に描き出してくれるほどリアルです。
全体のバランスは、やや低域が前に出ている感覚ですが、高域は凛としていて、やや硬めの音に感じます。低域、中域、高域とでは異なる性質の音は、まるで、温かいものは暖かく、冷たいものは冷たく適温で提供してくれるような、それぞれの素材に合わせて、適切と思われる音の表現や形状に変える嬉しい配慮のある音質は、この機器の魅力と言えそうです。
(生産完了品、現在は付属ケーブルが変更された PRO900i が販売中)
迫力ある音の波に呑まれるようなサウンドに
従来の音の抜けがよく爽快感のあるサウンドに、立体感や奥行き感が強調され、より広々とした空間表現になりました。
全体的なバランスは、低域がよりふくよかになり、音が奥から一斉にこちらに飛び出し、音の引き際でこちらまで一緒に吸い込まれる感覚になりました。今までクールに鳴っていたサウンドに、熱量がグッと上がったように感じます。
S/N感の向上に加えて、音の密度が増したことで迫力のある音になりましたね。
それにも関わらず、音の分離感や明瞭度も損なわれなかったのがすごいです。
あいかわらず低域、中域、高域それぞれ聞き取りやすい。
従来の繊細さゆえのふわりとした音の輪郭がハッキリして、音のうねりや音の纏まりなどが、わかりやすくなりました。
繊細なところはより細かくと、それぞれの良さをぐっと引き立てられているように感じます。
ヴォーカルには透明感とツヤが出て、より感情的な声の印象になりました。
若々しさを感じられる軽やかなヴォーカルだったのが、量感と色気を感じさせる吐息感まで細やかに表現してくれたのがうれしいです。
高域方向の余韻の清々しさは相変わらず魅力的です。
低域の重力のようにグッとのしかかる低音は、パンチのあるウーファーを積んだかのような芯のあるグルービーな低域に変わりました。
ただし、それはあからさまな低域ブーストではなく、本来の繊細さをそのままに、密度が上がって一筋通って広がるような音です。
それぞれの音が刻まれるような深みが出た感じです。
弦楽器はハリとまるで木のぬくもりのようなあたたかさを感じられるようになりました。
私をヘッドフォンオーディオの世界に引き込んでくれたULTRASONEのヘッドフォン、S-LOGICという機構による音にのまれるような臨場感と質感にリアリティのある音は、映画鑑賞にもオススメしたいです。