プロのレコーディング・ミックスマスタリングエンジニア太田タカシさんによるAudio-Technica ATH-R70xaとATH-R50xの比較レビューです。2つのモニターヘッドホンの音質の違いや用途によるおすすめのユーザーなど詳しく紹介します。
目次
はじめに
Audio-Technicaのモニターヘッドホン
ATH-R70xaの特徴
ATH-R70xaの装着感・音質レビュー
ATH-R50xの特徴
ATH-R50xの装着感・音質レビュー
ATH-R70xaとATH-R70xを比較レビュー
おすすめのユーザー
まとめ
みなさんこんにちは。レコーディングエンジニアの太田です。今回は、Audio-Technica ATH-R70xa・ATH-R50xの比較レビューです。
過去の記事やYouTubeでも紹介していますが、前モデルのATH-R70xはリスニング感とモニタリング感のバランスが良いため、ミックスやマスタリングの確認で普段から使用しているヘッドホンです。
プロが選ぶ!普段使いにおすすめのモニターヘッドホン × 太田タカシ|プロのエンジニアによるヘッドホンレビュー
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Audio-Technicaのモニターヘッドホンは、レコーディングだけでなくライブ現場でも多くのプロに愛用されています。その理由はさまざまですが、特にコストパフォーマンス、堅牢性、そして音質のバランスが優れている点が選ばれる大きな理由だと思います。
適度な周波数特性と適度なトランジェント、非常に味付けの少ないシンプルなサウンドが音を創るという場面ではとても重宝するのだと思います。
周囲のエンジニアにもボロボロになっても手放さずにずっと使っている方がたくさんいます。それだけ信頼性の高いヘッドホンだと言えます。
そんな信頼のおけるAudio-Technicaのモニターヘッドホン、かつ普段から使用しているATH-R70xの後継機ということで、自然と期待が高まります。
「トゥルーオープンエアーオーディオ」を掲げたATH-R70xaは、一般的な密閉型やセミオープンヘッドホンとは異なる構造です。
密閉型やセミオープン型のヘッドホンは、ハウジング内部の共鳴を利用して低音の調整をしていますが、ATH-R70xaは、ハウジングで低音の補強を行わないことで共振を抑え、ドライバーの振動を直接耳に届けることが可能です。このことにより、純粋でリアルな音場を実現しています。
ドライバーは、前モデルのATH-R70xと同様に全帯域を高純度で再現するシリーズ専用の「φ45mmの大口径ドライバー」を採用しています。
ハウジングは、ハニカムアルミニウムパンチングメッシュを採用。ナチュラルな空間の広がりを再現しています。
周波数特性はハイレゾ音源までカバーできる5〜40,000Hzとなっています。
ATH-R70xaは、ヘッドホンバンドとヘッドバンドが一新されました。スライダー機能が付き、ヘッドバンドの調整が可能です。堅牢性も上がったように感じます。
「L」と「R」が見やすくなった点も特筆したいところです。付け外しをする場面が多いため、すぐに装着したいときにパッと見てわかるのは非常に助かります。
実際に装着してみると、ATH-R70xを装着したときと印象は変わらず、ふわっとしていて音の聴き心地が良いです。着圧は強くないですが、程よくホールドされている感じがします。
僕の場合はバンドの長さを一番短くしても少し大きいため、頭部が小さいという方は一度お試しいただくと安心だと思います。
サウンドの特徴は、「解放すぎない開放型」という印象です。開放型のヘッドホンは、少し音が遠く抜け出ていく印象がありますが、ATH-R70xaは、そういった印象が少なく、低音域から高音域までシームレスに感じられます。
トランジェントに関しては、強くもなく弱くもなく適度でフラットな印象です。味付けや面白さといった意味では薄いかもしれませんが、制作環境では非常に適した音質です。
「このヘッドホンで良く聴こえないとダメだぞ...!」と、自戒も込めてシビアに見えてしまうヘッドホンです。
リスニング用途としては、オールジャンルに対応していると思います。自然なローエンドとハイエンドなので、ゲームや映画音楽、オーケストラもおすすめです。
【商品情報】Audio-Technica ATH-R70xa
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続いてはR50xです。
こちらはATH-R70xと同じサイズのφ45mm開放型専用設計のドライバーです。見た目が少しだけ異なります。
ATH-R70xのインピーダンス値が470Ωに対して、ATH-R50xのインピーダンス値は50Ωとなっています。
ATH-R70xはアンプのパワーがないと少し鳴りきらず音量が足りない可能性がありますが、こちらは50Ωなのでモバイル端末やDAP、オーディオインターフェイスのヘッドホンアウトからでも十分に鳴らすことができます。
ヘッドバンドもだいぶ違いがあります。直接クッションがネジ留めされています。ATH-R70xaと比較すると、ヘッドホンを着けているという感覚が強いです。サイズの余裕もあるので、頭の小さい方もフィットしやすいかもしれません。
肝心の音質ですが、ATH-R70xaよりも全体的にタイトにまとまっており、スッと集中して聴けるようなサウンドです。中低域の密度感については、ATH-R70xaの方がありますが、どちらが優れているということではなく、好みによるところという印象です。
ATH-R70xaと価格差があるため、下位モデルという位置づけかと思っていましたが、非常に優れたサウンドで、とてもコストパフォーマンスの良さを感じました。
【商品情報】Audio-Technica ATH-R50x
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ここからは、普段使用している前モデルATH-R70xとの違いを比べてみます。
いちばん最初に目が行くのは、ヘッドバンドの調整が可能になった点です。ハウジングも変更になってます。重さも11g軽くなっていますが、ATH-R70xも非常に軽かったため、そこまで大きな差は感じません。
聞き比べると音質の差を明確に感じました。ATH-R70xaの方が密度感が高く、低域から高域にかけて非常に綺麗に繋がっていきます。ATH-R70xもずっと好きで使っているのですが少し重心が下がったらいいなぁと思っていたところがカバーされている印象です。
どちらのヘッドホンもオーディオテクニカらしく、いい意味で得手不得手のないヘッドホンだと思います。
音楽制作で使うならATH-R50xをおすすめします。開放型なので外出先で使用することは難しいですが、いろんなデバイスで手軽に聴けるのは強みです。
ATH-R70xaは、モニター寄りのフラットな音作りで、テンションが上がる感じも欲しいという方のリスニング向けにもピッタリだと思います。
厚みを感じる中低域の密度とダイナミックレンジが、シネマチックなサウンドにとてもマッチするので、ゲームや映画なども楽しめるヘッドホンだと思います。
今回はオーディオテクニカのATH-R70xa、ATH-R50xの比較レビューをしました。
ATH-R50xは、開放型の入門機や制作用のモニターヘッドホンを探しているという方にもおすすめしやすいコストパフォーマンスの良いヘッドホン。ATH-R70xaは、前モデルからさらに音質に磨きがかけられ、サウンドチェックをする場合にも隙のないヘッドホンとなっています。
どちらもAudio-Technicaらしいクオリティで価格差はありますが、音質面での好みの差とお伝えできるところにも驚きました。モニターヘッドホンとして、また、長時間のリスニング用ヘッドホンとしてもぜひ一度お試しください。