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2024.06.28
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プロが選ぶ!普段使いにおすすめのモニターヘッドホン × 太田タカシ|プロのエンジニアによるヘッドホンレビュー

プロが選ぶ!普段使いにおすすめのモニターヘッドホン × 太田タカシ|プロのエンジニアによるヘッドホンレビュー

リスニングにもおすすめのモニターヘッドホンbeyerdynamic DT 770 PRO X Limited Edition、Audio-Technica ATH-R70x、TAGO STUDIO T3-01をプロのエンジニアの太田タカシさんが比較レビューします。

太田タカシプロフィール画像
■ ライタープロフィール
レコーディングエンジニア 太田タカシ
1984年千葉県出身、バンド活動をする傍ら専門学校でレコーディングを学び、卒業後は音楽事務所のスタジオに勤務しレコーディングをしつつアレンジの基礎と制作進行を身につけた。その後、リハーサルスタジオ内のレコーディングスタジオでレコーディング・ミックス・マスタリング業務に従事した後、フリーランスに転身。現在はレコーディングの他にもサウンドプロデュースや若手の育成にも力を入れている。
主な作品参加アーティストはIndigo la End・ゲスの極み乙女。・リーガルリリー・グソクムズ・20th Centuryなど。近年はゲーム音楽やVtuberの作品にも参加している。
Twitter:@tario_ Instagram:@tario_

はじめに

モニターヘッドホン3機種を正面から撮影した画像

音楽のリスニングにモニターヘッドホンを使う人が増えてきている印象があります。

僕がキャリアをスタートさせた時は、SONY MDR-CD900ST一択の時代だったので、その特性からモニターヘッドホンを普段使いすることはあんまり考えられなかったですが、近年モニター用のヘッドホンも解像度や周波数特性が拡張され、楽しくリスニングできるヘッドホンが増えていることを実感しています。

ということで、今回は普段使いでも使える!と紹介したいモニターヘッドホン「beyerdynamic DT 770 PRO X Limited Edition」「Audio-Technica ATH-R70x」「TAGO STUDIO T3-01」をレビューしていきます。

普段のリスニングに使うヘッドホンを選ぶ基準

モニターヘッドホン3機種を右方向から撮影した画像

リスニングに使うヘッドホンを選ぶ基準は単純明快で、好きな音楽が自分の好きな感じで鳴ってくれるかが最大の基準になります。趣味全振りで特定のジャンルが最高!だけど別のジャンルはちょっと...となったとしても個人的には全然OKで、好きな音楽をヘッドホンで味付けして楽しむというような感じでいいのかなと思います。

その次に装着感です。なんだかんだで一度つけたら1時間以上装着するものですから、快適に越したことはないですね。と、理想を述べた後で恐縮ですが、自分が使用するヘッドホンとなると、職業病なのかオールジャンルで味付けなく聴けるヘッドホンを選んでしまいます。

解像度が高くアレンジや音色の細部まで見えるヘッドホンが好きです。時々好みが変わりますが、開放型を選ぶことが多いです。

モニターヘッドホンはリスニングにも向いている?

モニターヘッドホン3機種を左方向から撮影した画像

好みで選ぶということをお伝えしましたが、その味付けがなく、見通しが良い、開放型という特徴が好みの僕としては、リスニングのためのヘッドホンを選ぶ上で当然モニターヘッドホンが選択肢として入ってきます。

そこで、リスニングでのモニターヘッドホンを使うメリットデメリットを見ていきましょう

モニターヘッドホンのメリット

音質的なメリットとしては、比較的フラットな音質傾向でレスポンスが良いものが多いです。また、モニターヘッドホンの役割として、サウンドのチェックやノイズのチェックも大事な要素となりますので、味付けが少ないものが多いです。

もうひとつのメリットは、長く使える機種が多いことです。

レコーディングスタジオで様々な演奏者が使うことやPA現場でも使われることもあるため、耐久性が高いものが多いです。また破損してもほとんどのモニターヘッドホンは交換パーツが用意されていることが多く、セルフメンテナンスができるということも強みと言えると思います。

また、価格もリスニング用のヘッドホンよりもリーズナブルなものが多く、2万から7、8万円くらいの機種が多く、手を出しやすい価格帯であるという点もメリットになります。

モニターヘッドホンのデメリット

逆にデメリットとなるのが、フラットな音質です。

メリットとしてもフラットな音質と書きましたが、フラット=良い音かと言うと一概にそうとは言えないのが難しいところで、人によっては低音が不足して感じたり少し音量を上げると中高域が耳につんざくように感じることもあります。
また、レスポンスが良い故に長時間装着していると耳疲れを起こしやすい機種も少なくありません。

リスニングにもおすすめしたいモニターヘッドホンを比較レビュー

今回は、そんなモニターヘッドホンからリスニングにもおすすめできるヘッドホンをレビューしていきます。

3機種とも現場で使用しているエンジニアが多く、僕自身も普段からリスニングにも使えると思っているヘッドホンです。さらに、お求めやすい価格帯ということからも相談されるとおすすめすることが多い機種となっています。

試聴環境

MacBook AirとRME ADI-2/4 Pro SEの画像

今回の試聴環境は2種類です。

まずは、MacMini(Intel)からUSB接続でRME ADI-2/4Proと接続、もうひとつは普段使いということでMacBookAirのヘッドホン出力からです。再生ソフトはどちらもApple Musicでロスレスで再生していきます。

beyerdynamic DT 770 PRO X Limited Edition

特徴

beyerdynamic DT 770 PRO X Limited Editionをハウジング横から撮影した画像

まずは人気の高いDT 770 PROをベースにブランド設立100周年を記念したアニバーサリーモデルbeyerdynamic DT 770 PRO X Limited Editionです。密閉型ヘッドホンになります。

beyerdynamicブランドに共通する印象ですが、優しい装着感が印象的です。特に海外のマスタリングエンジニアが使ってることが多いイメージがあります。

音質レビュー

beyerdynamic DT 770 PRO X Limited Editionをハウジング正面から撮影した画像

音質としては、過度ではなく適度なレスポンスとモニターとしては優しめの音色が特徴です。モニターとしての客観性を保ちつつ、少し拡がった音場でリバーブのテイルもしっかりと見えるのでスピーカーに近いような感覚もあります。

密閉型ヘッドホンのギュッと詰まった感じが苦手な方にもおすすめできるヘッドホンです。

形式密閉型インピーダンス48 Ω
SPL @ 1 mW/500 Hz98 dBSPL @ 1 V/500 Hz112 dB
コネクタGold-plated mini stereo jack plug (3.5 mm)& 1/4" adapter (6.35 mm)重量 (ケーブルを除く)305 g

【商品情報】beyerdynamic DT 770 PRO X Limited Edition

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beyerdynamic DT 770 PRO X Limited Edition

Audio-Technica ATH-R70x

特徴

Audio-Technica ATH-R70xをハウジング横から撮影した画像

次はAudio-Technica ATH-R70xです。こちらは開放型モニターヘッドホンです。オーディオテクニカのモニターヘッドホンでは唯一の開放型ですね。

とても軽いので長く付けていてもそんなに苦にならないと思います。最近じわじわと口コミで広まってるいるヘッドホンで、僕もとあるゲームの音楽プロデユーサーからの紹介で知りました。

音質レビュー

Audio-Technica ATH-R70xをハウジング正面から撮影した画像

音質については、開放型ではあるものの音場は結構近い感じです。レスポンスはあまり鋭くはないですが、音色はフラットでややドンシャリ傾向です。低域から高域までしっかり出ています。位相特性が良いのか低域はけっこう締まってる印象です。

味付けが少ない状態で音楽を聴きたい方やDT 770 PRO X Limited Editionとは逆に、開放型は音が散ってしまって聴きづらいという方に一度試してみてほしいヘッドホンです。

ATH-R70xは、インピーダンスが470Ωと比較的高いものなので充分にドライブするためにはヘッドホンアンプが必要になる可能性がありますのでこの点はご注意ください。

形式開放型インピーダンス470 Ω
出力音圧レベル98dB/mW周波数特性5 - 40000Hz
プラグφ6.3mm標準/φ3.5mmミニ 金メッキステレオ2ウェイ重量 (ケーブルを除く)約 210 g

【商品情報】Audio-Technica ATH-R70x

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Audio-Technica ATH-R70x

TAGO STUDIO T3-01

特徴

TAGO STUDIO T3-01をハウジング横から撮影した画像

最後にMade in TAKASAKI !!! TAGO STUDIO T3-01です。こちらもDT 770 PRO X Limited Editionと同じく密閉型のモニターヘッドホンです。木製のハウジングということもあり、少し重そうに見えるかもしれませんが、十分軽くイヤーパッドも柔らかいので装着性抜群です。

こちらも口コミや現場でじわじわと拡がっていったモニターヘッドホンで、僕の周りの使用率もかなり高い印象です。

音質レビュー

TAGO STUDIO T3-01をハウジング正面から撮影した画像

音質としては「モニターヘッドホン」という印象通りの音質で素早いレスポンスとフラットでやや中高域が出ている印象です。色付けをほとんど感じないので地味な印象を受ける方もいそうですが、音のディテールを瞬時に判断できる音だと思います。

モニターヘッドホンは音の顕微鏡と言われることがありますが、まさにそういう音感です。飾り付けなく良くも悪くも「今出てるのこの音だよ。」を教えてくれるヘッドホンです。

形式密閉型インピーダンス70 Ω
出力音圧レベル100 dB SPL/mW周波数特性5Hz - 40kHz
プラグΦ3.5 mm 金メッキステレオミニプラグ重量 (ケーブルを除く)約 321 g

【商品情報】TAGO STUDIO T3-01

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TAGO STUDIO T3-01

まとめ

モニターヘッドホン3機種をハウジング側から撮影した画像

今回は普段使いにおすすめのモニターヘッドホンを3つに絞って紹介させていただきました。

同じモニターヘッドホンといっても三者三様のサウンドで、全く趣の違う3機種です。シンプルで素直な傾向でありながら各メーカーの大事にしている部分がしっかり出ていて、どの場面で使って欲しいという傾向によってサウンドも異なります。

私見ですが、DT 770 PRO X Limited EditionとATH-R70x はミックスやマスタリングといったバランスを確認するモニターに、T3-01は個別の音作りやレコーディングの演奏時のモニターやミックス時の個別のサウンドチェックに特に力を発揮すると思います。

この記事を参考にしていただいて、ぜひ皆さんも「スタジオでの音」を聴いてみてください!

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