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2022.03.13
メーカー・プロインタビュー,

「TAGO STUDIO T3-03」の製作秘話を多胡邦夫さん&TOKUMIの小山さんにインタビュー【前編】

「TAGO STUDIO T3-03」の製作秘話を多胡邦夫さん&TOKUMIの小山さんにインタビュー【前編】

人気ヘッドホンブランド「TAGO STUDIO」の新作「T3-03 (BK)」「T3-03 (GAMING PKG)」の製作秘話をTAGO STUDIOの多胡邦夫さんと、製造担当の(株)TOKUMIの小山さんにインタビューしました。2回に渡ってたっぷりお届けします。

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いよいよ明日3月14日に発売を迎えるTAGO STUDIOのヘッドホン「T3-03 (BK)」「T3-03 (GAMING PKG)」。
今回は発売直前ということで、その生みの親でありご自身もアーティストとして活躍されているTAGO STUDIO多胡邦夫さんと、製造担当(株)TOKUMIの小山さん(残念ながら諸事情により写真NG)にお話をうかがうため、群馬県高崎市のTAGO STUDIO TAKASAKIさんにお邪魔しました!
・T3-01という代表作がある中なぜまた有線ヘッドホンを作ったのか?
・ゲーミングモデルが生まれた理由とは?

など、気になるお話がいっぱいですので、T3-03をすでにご予約された方も、まだ迷っているという方もぜひご覧ください!
※インタビューは感染症対策を施した上で実施しております

多胡邦夫 プロフィール

多胡邦夫氏プロフィール画像

作曲家・音楽プロデューサー / TAGO STUDIO TAKASAKI 運営責任者
アメリカンロックに強く影響され、学生時代よりバンド活動を始める。
群馬県で音楽を志す者の中では知らない者がいないと言われるほど、各コンテストを総ナメにし、更なるステップとして上京する。

ソロアーティストとしての修行をする傍ら、浜崎あゆみ、hitomi、Every Little Thing、柴咲コウ、AKB48等へ楽曲提供を行い数多くのヒットを飛ばす。 全国初の試みとなる群馬県高崎市のプロ専用レコーディングスタジオ「TAGO STUDIO TAKASAKI」の運営責任者として設置、運営に直接携わり、新たな才能の発掘、育成を行うとともに「高崎サウンド」の創造に尽力している。

近年ではヘッドホン「TAGO STUDIO T3-01」を開発。国内最高権威のオーディオ・ビジュアル・アワード「VGP2018」の受賞など、オーディオ業界においてメードイン高崎ブランド「TAGO STUDIO」を確立させた。

クチコミで広めていただいた5年間でした(多胡氏)

ーー実は以前こちら(TAGO STUDIO TAKASAKI)でインタビューさせていただいたのがちょうど5年前となります。

» こちらの記事を見る

ブログメインイメージ

当時は「(T3-01の出荷が)もうすぐ100台」というお話もありましたが、この5年間で多胡さんおよびTAGO STUDIOとしてどんな変化があったでしょうか?

多胡氏イメージ1
T3-01シャツ着用で制作秘話を語る多胡邦夫氏

多胡邦夫氏(以下「多胡」):その頃はスタジオを開設してから2年くらいで、スタジオとしては認知していただいていたんですがヘッドホンのブランドとしては当然認知度ゼロ!(笑)まったく「無」な状態からのスタートでした。
元々は「レコーディングスタジオで鳴っている音をそのままご自宅でファンの皆さんに聴いていただきたい」という想いですね。おそらく世界で一番いいバランスで鳴っているのは”ミュージシャンが現場で作っている音”だろうと思うので、その音を直接届けたい。

あとはスマートフォンやPCで音楽を聴く時代になって、ヘッドホンとかイヤホンさえ良いものを作れていればまだまだ音楽文化を感動的なものとしてちゃんと伝えていけるな、というところと、それから…僕がお仕事をしている中で、自分で本当に頼りにできる、仕事道具としてのヘッドホンって意外と少ないということだとか、昔から言われている「モニターヘッドホンはバランスとるにはいいけどリスニングには面白くないよね」というふうに、モニターとリスニングの間にすごく垣根があって。

TAGO STUDIO TAKASAKI ロビー試聴スペースイメージ
TAGO STUDIO TAKASAKI ロビー試聴スペース

多胡:でも僕的にはミュージシャンが現場でつくっているバランスが本当にすばらしいので、それがそのまま聴けるのであればモニターヘッドホンってリスニングとしても最高のヘッドホンになるはずなのになあ…とすごく不思議に感じていたんですね。なんでそこが分かれちゃうんだろう?もしそれがダメだっていうなら、現場で作っている音自体がそもそもダメなんじゃないか?っていう疑問が。

じゃあ僕らはいったいなんのために現場で一生懸命バランスをとっているのかっていうのがあったので、そのすべての垣根を越えられるヘッドホンを作りたいという想いで立ち上げた…で、最終的になぜ他のメーカーがここにたどり着けないのかがよくわかるっていうほどに吐くくらい気持ち悪い日々が続くんですけど(笑)。

やがて「これは世界一良い音のヘッドホンです」と胸を張って言えるものとしてT3-01が完成して、最初はオンラインだけで細々と「何台売れるかねえ」なんて話から始まって、その後一般販売が始まって…。今も小山さんとはよく話をするんですが、最初はヘッドフォン祭なんかでもお客さんがみんな横目でチラっと見ながら通り過ぎていくんですよ。それをなんとか(椅子から立ち上がって)「ぜひ!ぜひ!」って感じで呼び止めて。

僕らとしては聴いてさえもらえば、特にヘッドフォン祭に来るお客さんは耳が肥えているので良さを理解してもらえるという想いがあったので。で、聴いてもらうと「これいくらなんですか?え、安いじゃん!」っていう感じで皆さん評価してくださって。で、そういうことをSNSとかで拡散してもらったり…徐々に、ひとりひとりの方にクチコミで広めていただいた、そんな5年間でしたね。

そういうふうにTAGO STUDIOっていうものがレコーディングスタジオとしてだけではなく、ヘッドホンのブランドとして評価してもらえるようになってきた、という感じです。数多くの、本当に現場で音を作っているミュージシャンの方にも評価していただけて、それを聴いているファンの方にも評価していただけたことで、僕が最初に目指していた「モニターヘッドホンとリスニングヘッドホンの垣根を越えたい」っていうテーマに少し答えが出せたかな、というのが嬉しいですね。

T3-01ヘッドホンとANNI
リファレンスヘッドホンとしても活躍するT3-01

T3-03製造担当(株)TOKUMI 小山氏(以下「小山」):そうですね、多胡さんとは本当に同じ時間を共有してきたので…開発も含め、本当にずーっと一緒にやってきたのでまったく同じ感覚です。

私はヘッドホンを製造する側の会社の人間なので、レコーディングスタジオとしてのTAGO STUDIOとは異なるスタンスなんですが、イベントに出るごとに、以前は「どこのブランド?」だったのが「あ、TAGO STUDIOじゃん」って言っていただけるように、ヘッドホンブランドとしてのTAGO STUDIOをどんどん認知していただけているというのはすごく感動しましたね。

多胡:一番泣きそうになったのが、何年か前の中野サンプラザで…最初の頃の、100台くらいしか製造していなかった頃に買ってくださったコアなファンの方たちが、T3-01を首にかけて10人くらいウチのブースに集まってくれたことがあったんですよ。あの時の感動っていったらなかったですよね。10人が100万人くらいの応援団に感じるくらいの心強さでした。ああ、こうやって使ってくれているんだ、と嬉しくなりました。

小山:あとはまったく他のメーカーさんのブースでも、T3-01をリファレンスヘッドホンとして置いてくださったり…ああいうのは本当にありがたいなと思います。

多胡:音楽もそうなんですけど、たとえば曲を作って世に出て、CDが何枚売れた、配信で何回かかった…と数字で見ても全然リアルに感じられないんですよ。それがアーティストさんと一緒にキャンペーンや営業を回ってファンの方の声を聞くとようやく実感するんですけど、それまではへーっ、て通り過ぎる人ばかりだったのが、気づいたら自分たちを目的に来てくださるお客さんがいる。そこが熱くなりますよね。

ーー逆に、今も当時と変わらないところはどんなところでしょう?

多胡:僕が10代で音楽を作りはじめた頃から変わっていないんですが、やっぱり自分が作った作品に触れた人に少しでも感動を与えたい、感じてほしいというところですね。単純にいい曲、いいヘッドホンだというより”驚き”も含めたレベルで感動を届けたいんですよ。僕自身そうでしたけど、僕らの世代は新譜が出るとそれこそ部屋の電気を暗くして、なんなら正座して聴くくらい、1曲1曲「うおお…!」って感動しながら聴いていた、あの感じを伝えたいな、と。

どうしてもスマホだけで聴くとその感動も半減してしまうと思うんですけど、こういうバランスのいいヘッドホンで聴いてもらうとその感動がもれなく届けられるんじゃないかなと思うんです。音楽って同じ曲でも情報量が変わるとこんなに感動するんだ、って仕事柄わかっているので、それを少しでも多くの方に伝えたい。音楽って本当にいいんですよ、というのを伝えたいという想いは今もまったく変わらないですね。

T3-03を”廉価版”という立ち位置のものにはしたくなかった(小山氏)

T3-01とT3-03 (BK)
T3-01とT3-03 (BK)

ーーTAGO STUDIOの代表作「T3-01」は当店でも2021年度有線ヘッドホンの年間ランキング1位を獲得するなど今なお大人気モデルですが、今回同じ有線ヘッドホンというカテゴリとなるT3-03が誕生した経緯は?

多胡:もともとT3-01を出した直後から、もし次やるとしたらどういうのがいいかね?なんていう話を小山さんとしていて、いろんな妄想・構想があったんです。たとえばお客さんから「スイーベル(折り畳み)ができたら持ち運びやすいんですけど」「もうちょっと軽いといいな」みたいなリクエストもあったりして。でもT3-01では対応できないので、もし次を作るなら…というやつですね。

ざっくりいうと僕のイメージでは、T3-01はレコーディングエンジニアが使うことを想定して作っている、つまり音のバランスを突き詰めて作っているんですね。もちろんこれでギターを弾いたり歌をうたったりというのも間違いなく素晴らしいんですけど、たとえばロックバンドとかでこうやって(ヘッドバンギングしながら)ノリながら弾いたりしたりだとかっていう時にはもう少し軽くてフットワークよく使えるものの方が良い。

どちらかというとT3-01はコントロールルームでエンジニアが使うヘッドホンなので、スタジオのメインフロアの方でミュージシャンが演奏しながらテンションを高めていくために使うには別の方向性のヘッドホンが良いと。もし軽量化ができて密閉度も高くて、というヘッドホンが作れたら、レコーディングの現場ではもうその2台があればすべて完結するよね、ちょっとトライしてみたいなというのがきっかけです。

ーーT3-01は多胡さんがレコーディング時に満足できるヘッドホンが見つからない、というところからスタートした製品ですが、今回のT3-03はすでに先輩格のT3-01というモデルが存在するところからスタートした製品となります。その意味で開発は非常に難しかったのではないかと思いますがいかがでしょう?

T3-03 (BK)の製作コンセプト

T3-03 (BK)イメージ1
新しいコンセプトのもと生み出されたT3-03

多胡:最初に掲げたコンセプトというのが、
「エンジニアが使うT3-01に対してミュージシャンが使うT3-03」「軽量化する」「お値段はT3-01の半額くらいに」
の3つでした。もちろん僕らとしてはT3-01もものすごく頑張って価格を抑えているつもりなんですけど、若い世代のミュージシャンにはもう少し手の届きやすい価格帯で手に入れられるものを作りたい。で、フラッグシップのT3-01に対して音をどうするか?となった時に、すごく繊細な細いこまかい線で描かれた絵のように見えるのがT3-01だとしたら、T3-03はその線ひとつひとつがクッキリ太く、輪郭がカッチリ見える絵のようにしたいと考えました。

とはいえ低音も単純にボリュームを上げてぼわつかせたり迫力を出す感じではなく、たとえばバスドラムを踏んだ時に皮がドン!と振動する感じがより感じられる、躍動感のある低音を作っていけたら演奏するミュージシャンもテンションが上がるだろうし、と。後は…T3-01の子分だから安い音になりましたよ、ということではなくて、T3-01にはT3-01の良さが、T3-03にはT3-03の良さがあるという方向性にしたかった。単純に安いから悪いというわけでなく、場合によってはT3-03の方が好きだという人も出てくるような音に仕上げたかったんですね。

違いとしてはナチュラルな繊細さを持つT3-01と、躍動感とよりクッキリ見える音のT3-03という感じですかね、今でも覚えているんですけど、そこの(スタジオ近所の)高崎ワシントンホテルの前で小山さんに「こういうイメージなんですよ」というのを伝えたりして。

ーーそれを伝えられた小山さんはいかがでしたか?

小山:お付き合いも長いので(笑)イメージとしてはああ、こんな感じだろうなと理解しました。ただ、それを実際に設計に落とし込むとなると非常に難しいところがありましたね。

多胡:苦しみとしてはT3-03の方が苦しかった?(笑)

小山:苦しかったです…(笑)。
本当になにもないところから始まって、とにかく多胡さんと会話しながら最高のものを目指そうと出来たのがT3-01だったんですが、じゃあその最高のものがある中でまた別の良いものを作るというのはすごく難しくて。キャラクター付けは今回の最大の難関でしたね。

多胡:途中まではやればやるほど「T3-01って本当に良くできてるよね」と話が戻っちゃってましたね(笑)。

小山:私としてもT3-03を”廉価版”という立ち位置のものにはしたくなかったんですよ。T3-03はこの価格帯でできる最高のクオリティのものを目指したという形ですね。

T3-01と対比していきながらどういうふうにキャラクターを振っていくか、あまり振りすぎてもナチュラルバランスが崩れてしまうし、あまり派手にしすぎてもモニターヘッドホンとしての特色が変わってきてしまうし…と悩みながらの設計でした。

T3-03 (BK)イメージ2
廉価版にしたくなかったというT3-03

多胡:そこなんですよね。やっぱりナチュラルバランスというのは絶対に崩したくないので、その中でどう躍動感を与えるかがすごく難しくて。例えば単純にドンシャリにするとか、刺さるギリギリまで高音を上げちゃったりすれば簡単に派手にはなるんですけど、ウチがやるべきはそういうことじゃないよね、と。あくまでもモニターヘッドホンとして仕事でも使える、というのが大前提としてあって、そこでどこまで攻められるかっていう。

ワインでたとえるなら、まったく同じ畑からとれた同じブドウで作った2020年産のワインがあるとして、2021年に開けて飲んでいる感じなのがT3-03、それを2035年くらいに開けて飲んでいる感じなのがT3-01でしょうかね。どっちが良い悪いでなく、フレッシュでインパクトのある味わいと、ちょっと寝かせた深みが出ている味わいというようなイメージですね。

TAGO STUDIOヘッドホンデザインの統一性

ーーT3-03は素材を大幅に変更してはいますが、全体的にはひと目で「TAGO STUDIOのヘッドホンだ」とわかるデザインになっていますね。

小山:そこも結構難しかったんですけど、ありがたいことにT3-01がデザインの面でも評価していただくことが多かったので、デザインしている方としては逆にT3-03でどうするかというのは悩みどころでした。

多胡:そもそも「木を使わない」という方向に踏み切るのも勇気がいりましたね。T3-01、T3-02と楓材を使ってきて、第3弾で「なんで木じゃないの?」ってなるのもわかっていたんですけど、軽量化とかいろいろな面を考えると素材を変える必要があった。その代わり、パッと見た時にロゴの位置などで兄弟感、統一感が出るようにしましょうと。

TAGO STUDIO ヘッドホン3点持っている画像
TAGO STUDIOとして統一感を持たせたデザイン

小山:統一感を出す意味もあって、ヘッドバンドやケーブルはT3-01とT3-03で共通で使えるようになっています。T3-01を持っている方にも楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。

多胡:こうやって(実際に着け外ししながら)T3-03ブラックのヘッドバンドをT3-01に着けると相当カッコいいんですよね。

T3-03ヘッドバンド
ヘッドバンドの付け替えも楽しめる

ーーT3-01ユーザーには「ケーブルのタッチノイズが気になるのでT3-03のケーブルを着けたい」という方もいるようですが?

多胡:それ、もうめちゃくちゃ言われました(笑)。もしかしたら要望として一番多いかもしれないです。実際に現場で使っているプロデューサーの方からも「違う素材のケーブルはないの?長さとかも」って。そういう意味ではようやくタッチノイズの乗らないケーブルになりましたよ、と

小山:ケーブルは中の線材は同じで、被膜だけが変わった形となっています。

後半はゲーミングモデル「T3-03 (GAMING PKG)」について伺っていきます。
>>「TAGO STUDIO T3-03」の製作秘話を多胡邦夫さん&TOKUMIの小山さんにインタビュー【後編】

【商品情報】TAGO STUDIO T3-03 (BK)

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【商品情報】TAGO STUDI T3-03 (GAMING PKG)

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