AK HC2はまさにこの『Headphone Bar』で使うために導入したんですよ(多胡氏)
ワイヤレスってまだまだ過渡期だと思うんですよ(齊藤氏)
(HC2は)「マイ七味」とかを持ち歩く感覚に近いのかも(多胡氏)
ヘッドホンの良さというものを体験していただければ(齊藤氏)
Astell&Kernの大人気ポータブルUSB-DAC新色「AK HC2 Midnight Blue」と、3.5mm4極マイク入力対応版「AK HC3」の正式発表を記念して、Astell&Kern国内代理店アユート・齊藤さんとTAGO STUDIO代表・多胡さんの対談インタビューをお届けします。
※対談インタビューは1月に実施しました
――今回はAstell&Kern AK HC2の新色登場を記念して、「昨今のポータブルオーディオやデスクトップオーディオ市場の変化について」というテーマで、アユート 齊藤さんとTAGO STUDIO 多胡さんの対談インタビューを企画しました。おふたりとも、よろしくお願いします。
アユート 齊藤氏(以下「齊藤」):よろしくお願いします。
TAGO STUDIO 多胡氏(以下「多胡」):よろしくお願いします。一応ここはバーなので…お酒、出しましょうか?
齊藤:お酒…あった方がいいですよね、絵的にも(笑)。
多胡:じゃあせっかくなので、新年のお祝いにシャンパンいきましょう!(グラスに注ぎ始める)
多胡:では改めまして、2023年もよろしくお願いします、カンパーイ!
齊藤:カンパーイ!
多胡:(ひと口飲んで)…「乾杯」から始まるインタビューというのもなかなか斬新ですね(笑)。
齊藤:いいお酒を飲みながらいい音楽が聴ける、っていうのがこの『Headphone Bar』の醍醐味ですからね(ひと口飲んで)おいしいです!(笑)
――さて、今回は齊藤さんからのご指名で多胡さんとの対談インタビューとなりました。齊藤さん、今回多胡さんをご指名した理由は?
齊藤:一度多胡さんとゆっくりお話ししてみたいな、と考えていたのが第一の理由です。ヘッドフォン祭などのイベント当日にお会いすることはあるんですが、いつも「お疲れ様です」とか、ご挨拶くらいしかできないので。
あとは…この『Headphone Bar』もオープンされたので、ぜひおうかがいしてみたいなと思っていました。
多胡:ありがとうございます。おかげさまで『Headphone Bar』はオープンから半年近く経過しまして。皆さん「なんだこの店は?!」って言いながら入ってこられる感じですね。
齊藤:あ、こういう(ヘッドホンで音楽が聴ける)お店だとは知らずに来るんですか?
多胡:高崎って出張などで来られる方が多いので、駅から近いこともあって結構おひとりでいらっしゃる方が多いですね。もちろん僕の知り合いもよく来てくれるんですけど。でも、知り合いだとしても最初はみんな「ここではどうしたらいいの?どういうシステムなの?」って戸惑いますね、世界で唯一のお店なので。
そこで、僕から「ここはミュージックバーだけどヘッドホンで音楽を聴くシステムなんだよ、だけど別にみんな黙って聴かなきゃいけないわけじゃなくて、お話したい人はお話してもいいし、音楽を聴きたい人は聴いていればいい。スピーカーで大きな音を出しているわけじゃないから、そこは自由ですよ」って説明すると「なるほどね!」って。
齊藤:僕も最初に説明を聞いてなるほど、って思いました(笑)。
――多胡さんと齊藤さんの扱うAstell&Kern製品の関係といえば、AK HC2を発売日に早速購入されていましたね。
本日発売の「AK HC2 」購入してみました。これ音質バランス素晴しい!出張はスマホ、T3-01、AK HC2 があれば十分ですね。しかし、このサイズでこの音質凄いな。 pic.twitter.com/GgRp7VHQmz
— 多胡邦夫 (@TAGOOOOO) June 17, 2022
多胡:実は、AK HC2はまさにこの『Headphone Bar』で使うために導入したんですよ。このお店ではアナログレコード、またはカウンター備えつけのiPad miniでお客様に音楽を楽しんでいただくんですが、その時に、デフォルトの変換プラグよりも音質的にアップグレードできて、カウンターの上がゴチャゴチャしないシンプルなものってないかな、と探していたんですよ。そこにこんなに小さくて、お客様にも「これを使うといい音で聴けますよ」ってお勧めできるAK HC2が登場したんです。
齊藤:そうか、「バーカウンターで使うのにちょうどいい」なんていう需要があったんですね(笑)。
多胡:カウンターにドカンと大きな機材を置いちゃうと、バーとしての雰囲気が悪くなっちゃうんですよ。サラッと置けて音が良くなるものが欲しいな、と思っていたらこのAK HC2が出た感じですね。
T3-01って”極限のナチュラル”なので、デバイスの特性がそのまま出てしまうんですよ。低音が強ければ強いまま鳴っちゃうし、出音がジリジリしていればジリジリ聴こえる。でもそんなT3-01でもそれまでのAK製品との相性が良かったので、このAK HC2もたぶん大丈夫だろう、と思って飛びついちゃいました。
もともと、AKで音作りをしている方と僕の好きな音がかなり近いと思うんですよ。ナチュラルな音というか。だからウチのT3-01とAKの製品ってすごく相性がいいんですよね。実は何種類か同じような小型USB-DACを買って聴いてみたんですけど、AK HC2が今のところ僕にとっては一番いいですね。
齊藤:ありがとうございます。僕ももともと、T3-01を個人的に使わせていただいていて、とても気に入っているので自分が出ている試聴会でも置かせていただいたりしているんです。T3-01に関しては、僕も前々からAK製品と相性がいいな、と思っていたんですね。
最近ではT3-03も白と黒、両方とも購入させていただいたんですけど、T3-03は特に”外に持ち出して使いたくなる”ヘッドホンだと思ったんですよ。そういったアウトドア的な使い方と非常にマッチングが良いなと。
それとやっぱりストリーミングですよね。今はほとんど、7割以上の方がストリーミングサービスで音楽を聴いている。そこでヘッドホンを鳴らすだけの駆動力をきちんと持っていて、質のいいもの…つまりAK HC2などとのマッチングが良かったかなと。
僕も最近は新しいデバイスはまず最初に多胡さんのヘッドホンで試す、という習慣がついてしまったんですが、2月10日発売の3.5mm端子版・AK HC3も「あれ、下手なDAPで聴くよりもいいんじゃないか?」ってくらい相性ピッタリで。
【商品情報】Astell&Kern AK HC3
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多胡:こちらこそありがとうございます。ヘッドホンやイヤホンをスマートフォンに直接接続できるならまだしも、今ってほぼ変換アダプタが必須じゃないですか。だったら、これだけの音質差があるなら普通の変換アダプタよりこっちのHC2の方がいいじゃないか、って思うんですよ。たしかにちょっと大きくはなるけど、音を聴いちゃうと戻れないなと。製品としていいところ突くなあ、と思いました。
齊藤:多胡さんのヘッドホンって、上から下までまんべんなく、過不足なく音が出ているんですよ。なので、上流の機器…プレイヤーとかDACとかの音がドーンと出てくる。市場には出音に色づけされた製品も多いんですけど、その中でAKの「ストレートで高解像度な音をそのまま出しますよ」という”音作りのマインド”が多胡さんのヘッドホンとマッチしやすいところにあった。もちろん人によって好みもあるとは思うんですけど、純粋に音が良い、説得力のあるコンビネーションなんじゃないかと思うんですよね。音源が良い・悪い、っていうのを超越したところがあるんじゃないかと。
多胡:よく質問されるんですよ、「このヘッドホンはどのジャンルが合いますか?」って。いやいやもう全ジャンルに合いますよ!って返すんですけど(笑)。なぜならすべてバランスよく鳴るように作ってあるので。だからウチのヘッドホンで聴いてフラットに聴こえる組み合わせを選んでくれれば、リファレンスにはしやすいんじゃかなと思います。
齊藤:特にヘッドホンを複数持つような人なら、多胡さんのヘッドホンを1本持っておくといいんじゃないかなと思います。ここを中心にしてどっちに振るか、みたいな感じで選べますよね。
多胡:そう、ウチの製品を「ゼロ地点のヘッドホン」として使ってもらえたらいいですね。
――現在のポータブルオーディオ市場はワイヤレス製品が主流となっていますが、そこであえて有線を使う理由とはなんでしょう?
多胡:僕も運動する時など、音の良し悪しよりもとりあえず鳴ってくれればいいやという時にはワイヤレス製品を使います。ただ、仕事やそれ以外のちゃんと音楽を聴きたい、気持ちを癒したいというような時は有線で…という使い分けですね。
齊藤:僕は…実は優先順位の1番として「ケーブルがある方がカッコいい!」というのがありまして(笑)。たとえばイラストにした時に、ケーブルがこう垂れている方がカッコいい!っていう個人的な美的感覚なんですけど。
多胡:たしかに!(笑)ヘッドホンをTシャツの絵柄にする時も、ケーブルがあった方がオシャレなんですよね。
齊藤:ケーブルつきの持つオシャレさ、っていうのはちょっと外せないポイントだなあと思っています。あとは…ヘッドホンだからこそケーブルが欲しい。ワイヤレスってまだまだ過渡期だと思うんですよ。
5,6年前にポータブルアンプが流行って、そのあとにポータブルプレイヤーが流行った。だけどその流行り方ってすべて”音源のあり方”に付随していると思っているんです。最初はCD音源しかなかった、ハイレゾ音源もクラシック・ジャズしかなかった時代から、ポータブルアンプ・プレイヤーが出てきたことでJ-POPや洋楽などもどんどんハイレゾ配信されるようになって、対応する再生機器もどんどん売れるようになってきた。次にストリーミングの時代を迎えて、それを聴くにはスマートフォンが一番便利な機器になった。そうするとそのスマホから音を取り出すためのデバイスが必要で、そのデバイスが有線なのかワイヤレスなのかということですよね。ただ、やっぱりまだワイヤレスは規格やハードの制限があるので、そこがもっと進化するまでは有線の製品が必要だろうなと思います。まとめると…やっぱり有線はカッコいいから!と(笑)。
多胡:あー、それ、一番腑に落ちたかもしれない(笑)。たとえばライブでギターを弾いているとして、ワイヤレスで音を飛ばすのも悪くないんですけど、やっぱりギターからアンプに直接ドーン!ってシールド(ケーブル)を挿していると「コイツ、本気だな…!」って見ちゃいますもん。レコーディングの現場も音質優先で、ワイヤレス機器はほとんど使わないですしね。将来的にはワイヤレスの音質が有線を超えることってあるんですかね?
齊藤:最終的には超える可能性がなきにしもあらず、かなと思いますけど…ワイヤレスだとまずクロストーク(註:隣接する信号がお互いに干渉する現象のこと。オーディオでは左右の音が混ざり合うことを指す)が消えるので。たとえばハウジングの左右にそれぞれDACを入れることができれば、音のセパレートも完璧ですからね。特性的にはワイヤレスが有線を超える日も来るとは思います。ただ、今のワイヤレスも、ある規格は遅延が少ないけどめちゃくちゃホワイトノイズが乗ったり、またある規格は音質が犠牲になっちゃったり…といろいろあるので、そういった規格の進化は必要でしょうね。
多胡:規格が進化した頃にはウチの製品もワイヤレスになっているかもしれない(笑)。特にゲームでは、コンマ何秒かの遅延が勝負の分かれ道になることもありますからね。
齊藤:ただ、ポイントはやっぱりアンプですよね。ヘッドホンの大きなドライバーを鳴らすだけの強力なパワーを持ったアンプを積まないといけないので。その場合、大きさや重さも問題になってくるでしょうし。
あと、僕は趣味の製品ってコレクション性も大事だと思ってるんですよ。持っておきたいじゃないですか、多胡さんのヘッドホンって。こうやって(カウンターうしろに並ぶヘッドホンを指さしながら)揃えたくなるじゃないですか。やっぱりこれこそ有線ヘッドホンならではの魅力じゃないかなって。
多胡:ウチの製品はリケーブルを楽しんでくれているユーザーの方も多いんですが、ケーブル込みでコレクションしたくなりますよね。
齊藤:ひとつのヘッドホンを、音をいろいろ変えながら楽しむこともできるし、飾っておくだけでひとつの工芸品として楽しめるのもいいですね。
それに有線だとバッテリーや技術に縛られることがないので、何十年前のヘッドホンでも長く使えますよね。ワイヤレス製品はその時その時の技術をひたすら投入しているので、どうしても「利便性」と「ガジェット」に寄っていく面がある。
そういえば、ここ(Headphone Bar)ではお酒のほかにゲームも楽しめるらしいですね?
多胡:実はカウンターの一番端の席には、T3-03 (GAMING PKG)が試せるようにモニターとPS5が用意してあるんですよ。ただ、オープン以来いまだに誰もプレイした人はいなくて(笑)いつも開店前に僕がひとりで遊んでるだけですね。いま群馬県ってeスポーツにすごく力を入れていて、いろんなゲームの全国大会を招致したりしているんですよ。
齊藤:TAGO STUDIOさんもそうなんですけど、群馬県、特に高崎って技術屋さんというかモノづくりをする方がすごく集まっている地域というイメージがありますよね。
多胡:そうですね、ヘッドホン関連だとウチの製品の制作をしていただいているトクミさんに、ブリスオーディオさんとか…intimeブランドのオーツェイドさんも高崎なんですけど、会社は僕が通っていた中学校のすぐ目の前にありますよ(笑)。本当に偶然なんですけど、特に個性的なメーカーさんが集まっているかも。
齊藤:T3-01やT3-03を作った多胡さんのように、良い製品を作る方の人柄や考え方を直接うかがう機会がいただけたら、自分にも吸収できるものがあるんじゃないかと思って今日の対談をお願いしたんですね。同じ業界にいて、ウチでもヘッドホンを扱っているのでもちろんライバル的な面もあるんですけど、尊敬できるところは尊敬して、その人が考えるサウンドというものをリスペクトしてオーディオ業界全体を一緒に盛り上げていければいいなと前々から思っていたんです。こうして多胡さんに改めてお会いして、お話をうかがったことでそんな思いが一層湧いてきましたね。
多胡:ありがたいことに、まだTAGO STUDIOという名前がまったく知られていない頃からアユートさんのイベントブースでT3-01を使っていただいていますからね。「アユートに置いてあったあのヘッドホンはなんだろう?」って話題になったりして、非常にありがたかったんですよ。
齊藤:やっぱり製品の相性が良かったからこそ、なんですよね。いくら良いものでもウチの製品との相性が悪かったら「これでお客様に聴いてもらおう!」とはならないので。ブースを出している側からすると、多胡さんのヘッドホンは機器の良さを伝えやすいんです。このセットだからこそこういう音になるんだよ、というのを伝えやすい良いヘッドホンだし、わかりやすいコンビネーションになるんだと思います。
多胡:(HC2を持ちながら)この製品の良さをそのまま伝えてくれますからね。
齊藤:誰が聴いても「良い!」って納得してくれるセットなんですよ。AK HC2と多胡さんのヘッドホンの組み合わせは「とにかく一回聴いてみて!」って言える良さがあるんですよね。それぞれの良さがしっかり伝わるし、シンプルな構成なので身構えて聴く必要がないのもいいですね。プレイヤーとポタアンと…っていろいろ用意するのが当たり前だった頃からは考えられない進化だと思います。
――こうしたインタビューでは自社取り扱いの製品をPRしていただくのが普通ですが、今回はせっかくですのでお互いの製品をPRしていただこうと思います。まずは齊藤さんからお願いします。
齊藤:T3-03は最近使い始めたんですが、これ…外用にとてもいいですよね(笑)。T3-01ももちろんすばらしいんですが、あっちはちょっと外に持っていって使うという感じではなくて、家でゆっくり聴きたい時のヘッドホンという感じで。細かく比べてみると装着感や音の漏れ具合、耳への密着度が違っている。特にイヤーパッドの厚みが微妙に違っていて、T3-03は外で装着した時にあまり大きく感じないんですね。持ち出すのにすごく便利で、外で聴くのに適した音になっている。
最初に聴いた時から欲しいな、と思っていて、昨年末のサウンド&レコーディング・マガジンさんのイベント(サンレコフェス)で多胡さんの目の前で「もう一度聴かせてもらっていいですか?」っていろいろ組み合わせて聴かせていただいて、そこで購入を決断したという経緯もありまして…。実は僕、外ではこれまでイヤホンばかりで「外でヘッドホンを使う」っていうことがほとんどなかったんですよ。でもこのT3-03は外に持ち出して使うのにちょうど良いヘッドホンで、ケーブルの着脱もできて、純正のバランスケーブルも用意されているので積極的に外で使っています。
多胡:T3-03でイヤーパッドをちょっと薄くした理由というのは、より音を近くにしたかったんですよ。逆にT3-01は音場を広めにとってある。T3-01がすごく繊細な細い線で描かれた美しい絵だとしたら、T3-03はもっと1本1本の線が太い、輪郭のハッキリした絵になるように、もっと音を近くにしてインパクト重視という感じ。
スタジオでいうと、コントロールルームでエンジニアさんが音のバランスをとるために使うのがT3-01で、ミュージシャンがテンション上げながら演奏しやすいように使うのがT3-03というイメージです。だから外で楽しむにはT3-03の方が合っていると思います。
齊藤:T3-03は音が適度に近いんですよ。T3-01は空間が広いけど、この繊細な音はまわりに雑音があるところでは聴きたくない。でもT3-03は多少の雑踏の中でもちょうどいい音の近さで聴こえる。持ち運びするヘッドホンとしては、最適に近い音作りがされているんじゃないかなと思いました。
多胡:T3-01はちょっとした誤差も許されないバランスで作られている繊細なヘッドホンなので、いろんなノイズが入ってくるような環境ではストレスを感じてしまうかも知れない。そういう意味でもT3-03の方が外では使いやすいでしょうね。
齊藤:T3-01とT3-03とでお互いに良さがあるので、2つとも持っている僕からしてもしっかり使い分けができる感じだなと思います。
多胡:一番うれしい言葉ですね。2つのモデルがあるとどうしても「あっちよりこっちの方がいいよ」ってなっちゃいますけど、いやいやあっちにはあっちの良さがあって、こっちにはこっちの良さがあるんですよ、って(笑)。僕らははっきり分離して作っていますからね。
齊藤:単純に上位・下位っていう位置づけではないですよね。
多胡:そうです。さっきも言ったように、エンジニアさんがいる部屋とミュージシャンが演奏する部屋とで使い分けるっていう関係性ですね。
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――使い分けといえば、4.4mmバランス端子のAK HC2に対して3.5mm端子のAK HC3と2種類のポータブルUSB-DACが揃うことになりました。
齊藤:個人的には音質的な面では4.4mmのAK HC2の方が良いと思いますが、利便性という面ではもちろん3.5mmのAK HC3に軍配が上がる。具体的にいえば、AK HC2は本来のオーディオ的な、どっしりした音作りなので、「音楽を聴く」という意味ではAK HC2を推したいなと。一方でAK HC3はアンバランス接続だけどクッキリ・ハッキリを前面に出している音作りになっているので、T3-03とのマッチングが非常に良くて、特にゲームで使う時に合わせやすいんです。先日のイベントでもAK HC3とT3-03のセットで展示したんですが、皆さん納得できる音のクリアさ…エッジを立たせてクリアさを強調するような音の振り方にしてあります。
AK HC3はめちゃくちゃ音を拾うんですよ。たとえばノートPCにヘッドホンを直挿しすると内部ノイズが目立ったりするんですが、それがAK HC3を経由するだけで一気に聴きやすくなる。あるのとないのでは比較にならないくらいの音の違いです。実は多胡さんにも、このAK HC3とT3-03のセットで展示する前にご連絡しているんですよ。僕だけが「良い」と思っていても意味がないじゃないですか。
多胡:そうそう、「この組み合わせで問題ないと思うんですけど確認して下さい」って、わざわざね(笑)。
齊藤:せっかく置かせていただくので、お互いが「この組み合わせは良い」と納得していないとダメだと思ったんですよ。
多胡:だからちゃんと聴いて「うん、問題ないですね」って、事前にしっかりチェックさせていただいています(笑)。
齊藤:そう、だから僕は人気の高いT3-01ももちろんですけど、T3-03の方をもっとプッシュしていただきたい!(笑)これ、AK HC2でもAK HC3でも、CHORD Mojo2でも全部合わせやすいんです。T3-03はもっとフィーチャーされるべきヘッドホンだと思うんですよ。その中でもAK HC3と合わせた時の、この適度な音の近さが綺麗に分離されて、中心線がピシ―ッ!と決まる感じの相性の良さはぜひ一度聴いてみてほしいですね。AK HC3の音のカリッとしたところをT3-03が綺麗に表現してくれるんです。特にゲームをやる人なら、ゲームのSE(効果音)なんかも適切に聴こえてくるし、AK HC3はマイクに対応しているのでT3-03 (GAMING PKG)の特徴がそのまま活かせるという点でもお勧めです。
多胡:マイクがそのまま使えるのって便利ですよね。
齊藤:T3-03 (GAMING PKG)にはせっかく良いマイクがついているじゃないですか。ゲーミングヘッドセットって、マイクはめちゃくちゃ重要ですよ。
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多胡:ほとんどのゲーミングヘッドセットのマイクって異常な高感度になっているので、しゃべっていて辛いんですよ。だからT3-03のマイクは僕が実際にゲームやりながらテストしまくりましたもの。プリモさんと共同開発したこのマイクは、かなりのこだわりポイントです。
では僕の方からも製品PRを…AK HC2みたいに手軽で、ポケットに入って、持ち歩けて、いざ使う時には挿すだけで簡単に幸せな音で聴ける製品はなかなかないですよね。他の製品では「いわれてみればちょっと低音が強くなったかな?高音が明るくなったかな?」っていうものが多かったんですが、このAK HC2は明らかに音の全体の密度が上がって、それがiPadでもスマートフォンでもわかる。だから「マイ七味(唐辛子)」とかを持ち歩く感覚に近いのかも。普段食べているものにマイ七味をパパッと振りかけるとおいしくなるように、AK HC2があるといつもの音楽にプラスアルファの幸せが味わえるよ、という製品ですね。…こんなサイズでよくできたなあ本当に(笑)。
齊藤:扱っている僕らからしても「よくできた製品だなあ」と思います(笑)。
多胡:だからある意味、あぶない製品じゃないかなって。「もうこれでいいんじゃないか?」って満足しちゃいそうで(笑)。でも、それくらいの性能を持った製品ですよね。
齊藤:AK HC2もグレーの通常モデル、ピンクの大橋彩香さんコラボモデル、オレンジのfripSideさんコラボモデルときて、ミッドナイトブルーモデルが2月10日に発売されるんですが、いろんな方に使ってもらうには4.4mm端子という壁があるので、そこをどうやって超えるかという課題もあります。でも4.4mmバランス出力だからこそ、AK HC2だからこそ出せる音があるというのはぜひ知っていただきたいですね。T3-01やT3-03ならケーブルを交換するだけで使えるので、そういった点からも組み合わせとしてお勧めです(笑)。
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――新年最初のインタビューらしく、おふたりには「2023年の展望」もうかがいたいのですが。
齊藤:去年はコロナ禍での生活にも慣れてきた中で「オーディオってどうなっていくのかな」という不安もあったんですが、あまり変わらない、むしろ伸びていったという感覚もすごくありました。
趣味だからこそ、趣味品だからこそ需要は落ちないというか、こだわりがある製品ほど欲しくなる。逆にいえばオーディオ製品自体も洗練されていった年だったんじゃないかと。良いものは良い、と認められて、買う人が増えて、そういった製品も多く出て盛り上がった年だったのではないかと思います。
今年も個人的にはこのままの勢いが続くかなと予想しているんですが、ただひとつ、ストリーミングがどう変わっていくかがカギですね。これまでも「音源がどういう形状で出てくるか」によってオーディオ製品は変わってきたので。CDが出てコンポが、MDが出てMDプレイヤーが、MP3が出てデジタルオーディオプレイヤーが出てきたように、音源の形状に左右されてきた歴史があるんです。
僕らは機器を扱っている側なので、そこは敏感に捉えながらより良い製品を、せっかくT3-01やT3-03のように良いヘッドホンが出ているんだから、それらが生きる製品を出していければいいかなと思います。
多胡:音楽業界も含め世の中がデジタルの方にどんどん振り切られている中で、部分部分ではアナログへの揺り戻しが起きているのを感じます。
音楽もDTMやボーカロイドの流れから、最近はバンドを組んで生演奏する若手が増えている。海外でもイタリアのマネスキンというバンドが今すごく人気があるように、そういう生のバンドの良さが若い子たちに受け入れられてきている。音楽シーンではこのところヒップホップが全盛だったところにまたロックがバーッときているように、揺り戻しって絶対あるんです。だからオーディオも、今これだけワイヤレスが便利で一般化してきても「でもやっぱり本気で、いい音で聴きたいと思った時には有線だよね」という人もまた増えてきているんじゃないかな。そういう意味では適正な音で聴けるヘッドホンというものを、僕らはこれからも作らないといけない。
まだまだウチの製品って、知る人ぞ知る”ツチノコ”みたいなヘッドホンなんですよ。おかげさまでどこのお店でも売り切れているし、本当に売ってるの?作ってるの?っていう製品ですからね。聴いていただければ、聴いた方を幸せにする力を持ったヘッドホンだと僕は思っているので、一人でも多くの方に体験していただいて、幸せな時間に寄り添えるような商品としてお届けしたいです。
それと今年はいろいろと仕込んでいる企画もたくさんあります。皆さんが驚くような…コラボレーションというか、いろいろ、まだ言えないんですが(笑)。今まで購入していただいた方にも喜んでいただけるような、「おおっ、こんなことするんだ!」という話題を振りまけるようなことを考えています。僕はもともとエンタメ屋さんなので(笑)、普通のオーディオメーカーではやらなかった角度から皆さんに驚きと楽しさを提供していきたいなと思っています。
齊藤:そういう”仕掛け”、いいですよね。僕も見るのは大好きです!仕掛けるのは…ホント大変なんで(笑)。
――最後におふたりから、インタビューをお読みの方にメッセージをお願いします。
齊藤:日本だとまだまだ「イヤホンでしか音楽を聴いたことがない」っていう方が多いんですよね。
多胡:そうですね、この『Headphone Bar』に来られたお客様でも「ヘッドホンで初めて聴きました、こんなに音が良いんですね」っていう方、結構多いです。
齊藤:やっぱりイヤホン、ヘッドホン、スピーカーとそれぞれ音の鳴らし方の違いがあるので、イヤホンしか知らない方にこそヘッドホンの良さというものを体験していただければと思います。その第一歩として、多胡さんのヘッドホンとAK製品の組み合わせはすごく良いと思うので、ぜひ聴いていただきたいです。今はフジヤさんの「お試しレンタル」で、このAK HC2も多胡さんのT3-01やT3-03も全国の方にお試しいただけますのでぜひどうぞ!
多胡:ここ『Headphone Bar』でもおいしいお酒を飲みながら聴いていただけますので、高崎にお越しの際はぜひお立ち寄りください!
――齊藤さん、多胡さん、お忙しい中インタビューにお答えいただきありがとうございました!
Astell&Kern AK HC2 Midnight BlueおよびAK HC3は本日より発売開始、TAGO STUDIO T3-01およびT3-03・T3-03 (GAMING PKG)も大好評発売中です。
どのモデルも店頭試聴機をご用意しておりますので、ぜひ中野でも齊藤さん・多胡さんお勧めの組み合わせをお試しください!
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