Cayin RU7をオーディオ専門店スタッフがレビューします。ディスクリート1-Bit DSD DAC方式を採用、ラインアウト機能の搭載や中高域のメリハリが効いた明るめの音質が特徴の小型USB-DACを詳しく紹介します。
目次
Cayinの小型USB-DACとは
Cayin RU7の特徴
前モデルRU6との比較
RU7音質レビュー
製品仕様
まとめ
1993年に設立された中国のオーディオメーカーCayin(カイン)は、得意とする真空管を採用した据置型ヘッドホンアンプ「MT-35MK2 PLUS」や、ローム社製DACチップBD34301EKVをいち早く採用したDAP「N8ii」などが人気のブランドですが、そのCayinが2021年12月に発売した小型USB-DACがRU6です。非常にこだわりの強いことでも知られるCayinらしく、小型USB-DACとしては極めて珍しいR-2Rラダー型抵抗DACを搭載したことで話題となりました。
そのRU6登場から1年半を経過し、また新たな”こだわり強め”な小型USB-DACが登場しました!それがこちらの「RU7」です!
【試聴レビュー】小型USB-DAC「Cayin RU6」はR-2Rラダー構成!?他とはひと味違う魅力に迫ります。
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今回はこのRU7について、前モデルであるRU6との比較を中心に詳細および音質レビューをお届けします。
まずはRU7のパッケージ内容からご紹介しましょう。本体、両端Type-CのUSBケーブル、USB A to C変換アダプター、マニュアルおよび保証書と専用保護ケースが付属しています。
Lightning端子搭載のデバイスで使用する場合は、別売の「CS-L2Cケーブル(Lightning to USB-Cケーブル)」が必要となりますのでご注意ください。
前モデルのRU6では別売となっていましたが、このRU7はグリーンの専用保護ケースがパッケージに同梱されています。ところでこのケースと同じ色の丸いプレートは何でしょう?裏面は粘着テープになっていますが…。
実はこのケース、裏面にマグネットが仕込まれているのでこんな風に金属にくっつけることが可能なのです。先ほどの丸いプレートにも金属が入っているので、粘着テープでスマートフォンなどの裏面に貼りつけることでRU7を固定することができますよ、という仕組みになっています。
RU7を正面から見た図がこちら。フロントパネル左半分に128*64ピクセルの有機ELディスプレイを備えています。
パネル上面にはボリュームアップ、ボリュームダウン、MODEと3つのボタンが並びます。形状は若干異なりますが、ここはRU6と変わりません。
フロントパネルの右側面に3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスの2種類のイヤホンジャックを装備している点も、やはりRU6と同じ。
スマートフォンなどと接続するためのUSB Type-C端子が左側面にある点も変わりません。
背面はちょっとカットが加わったことを除けば、こちらもRU6同様シンプルです。
などなど、ここまではあまり前モデルRU6と変わらないように見える今回のRU7ですが、横から見ると厚みがだいぶ薄くなっていることがわかります。
データ上はたった1.7mmの違いのはずなのですが(RU6の厚さ13.7mm、RU7の厚さ12mm)、本体そのものが小さいこともあり手にするとかなりの差があるように感じます。
ちなみに重さも前モデルRU6より3gほど軽くなって、約25gになりました。
左:前モデルRU6、右:RU7
違いはこれだけではありません。続いては中身の違いについてご紹介したいと思います。
もっとも大きな違いはDAC回路にあります。RU6では一般的なDACチップを使わずに左右で合計96個もの抵抗器を使用した『24-Bit R-2Rラダー型抵抗DAC』を採用したことで話題となりましたが、今回のRU7でもDACチップではなく、128個(4ch*32)の高精度薄膜抵抗で構成された抵抗ネットワークによる『ディスクリート1-Bit DSD DAC』を採用しています。
これはCayinのポータブルプレイヤーN7で採用されているものと抵抗数は異なるものの同様のDAC回路となっています。
また、このRU7はすべての入力信号をDSDに変換してから、ディスクリート1-Bit DSD DACでアナログ変換するという方式を採用しています。このため、前モデルRU6にあったノンオーバーサンプリング・オーバーサンプリングの切替機能はなくなりましたが、代わりにDSD64/128/256のサンプリングレート切替が可能になっています。
※Apple社製デバイスは出力電流に制限があるため、DSD256を選択した場合に出力できないケースがありますのでDSD64/128のいずれかを選択して下さい
もうひとつの大きな違いが出力の向上です。RU7ではデュアルアンプを並列に配置した「高出力パラレルフォーンアンプ」の搭載です。3.5mmシングルエンド出力で160mW@32Ω(RU6は138mW@32Ω)、4.4mmバランス出力で400mW@32Ω(RU6は213mW@32Ω)とどちらも出力がアップしています。
RU7ではモードの切替で固定電圧出力となるラインアウト機能が追加されました。ポータブルアンプなどと接続する際に非常に便利です。
なお、このラインアウト機能をONにするには3.5mmまたは4.4mmジャックにプラグが刺さっている必要があり、一度ラインアウトに設定したあとでプラグを抜くと自動的にフォーンアウト(イヤホンなどを使用する通常のモード)に戻るようになっていますので、ついうっかり切替を忘れて爆音でイヤホンを鳴らしてしまった!というような事故が起こりにくくなっています。
それではRU7の音質チェックです。スマートフォンと組み合わせ、サブスク音源をいくつか聴いてみます。イヤホンは前モデル・RU6と比較する意味でも、RU6の試聴時と同じSENNHEISER IE 900を選んでみました。
【商品情報】SENNHEISER IE900
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中高域のメリハリが効いた明るめのサウンドで、特に女性ボーカルの伸びの良さが際立ちます。前モデルRU6がフラット傾向であまり味付けのない音だったのに対し、いわゆるリスニングライクな聴いていて楽しさを感じるような音作りになっているようです。低域は少し薄めではありますが、その分中高域の押し出しがはっきりしているのであまり物足りなさはありません。
一方で、ボリューム機構は前モデルRU6と同じスイッチングリレー切替式の「ディスクリートボリュームコントロール」を採用しているため、再生中にボリュームを変更すると音途切れが発生します。Cayinが目指す高精度・低ノイズ・低消費電力の要求を満たすための方式ですが、頻繁にボリュームを変えるという方はやや気になってしまうかも知れませんのでご注意ください。
DAC | ディスクリート1-Bit DSD DAC | USB | Type-C |
---|---|---|---|
出力端子 | ヘッドホン出力:3.5mm + 4.4mm Balanced、ライン出力:3.5mm + 4.4mm Balanced | ディスプレイ | 0.96inch 128x64 OLED |
サイズ | 66mm x 24mm x 12mm | 重量 | 25g |
【商品情報】Cayin RU7
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Cayinの小型USB-DAC「RU7」は
・128個(4ch*32)の高精度薄膜抵抗で構成された抵抗ネットワークによる『ディスクリート1-Bit DSD DAC』を採用
・うっかり切替を忘れても安心な仕組みを備えた”ラインアウト機能”搭載
・中高域のメリハリが効いた明るめのサウンド
この小さな本体にCayinならではのこだわりを詰め込みまくった製品に仕上がっています。
Cayin RU7は本日より発売開始!もちろん店頭試聴機もご用意しておりますので、ぜひお手持ちのスマートフォンでお試しください。レビューと同じように、前モデルRU6との比較試聴もできますよ。