Astell&Kern A&futura SE300をオーディオ専門店スタッフがレビューします。アステルアンドケルンDAPの最新作は、フルディスクリート構成の24bit R-2R DAC回路、デュアルアンプを搭載し、様々な音質を楽しめるオーディオプレーヤーを詳しく紹介します。
目次
AKのA&futura SEシリーズとは
A&futura SE300の外観と特徴
A&futura SE300の音質レビュー
製品仕様
まとめ
デジタルオーディオプレイヤー(DAP)好きなら誰もがご存知のブランドといえば、2012年に韓国で設立されたAstell&Kern(以下AK)です。
デビュー作・AK100以来、10年以上にわたり数多くのDAPを生み出してきたAKですが、現在のラインナップは大きく3つにわけられています。AKの持つ技術をすべて投影した究極のDAPを意味するフラッグシップライン「A&ultima(エーアンドウルティマ)」シリーズ、AKの哲学と技術を活かしたHi-Fiオーディオの出発点となるスタンダードライン「A&norma(エーアンドノーマ)」シリーズ、そしてその中間に位置するのが、圧倒的な性能と最先端技術を盛り込んだHi-Fiクオリティのプレミアムライン「A&futura(エーアンドフューチュラ)」シリーズです。
特にこのA&futuraシリーズでは、ひとつのDAPに異なる2種類のDACチップを搭載してしまった「SE200」や、ユーザー自身でカートリッジ方式のDACモジュールを交換可能とした「SE180」など、AKの中では非常にエッジの効いたモデルを送り出してきました。
そのA&futuraシリーズ最新モデルが本日ついに発売を迎えました!それがこちらの「A&futura SE300」です!
今回はこのSE300について、詳細および音質レビューをお届けいたします。
まずはパッケージを開封。AKユーザーにはおなじみの保護シートが貼り付けられた状態で本体が収められています。
パッケージ内容がこちらです。SE300本体、マニュアル類、液晶および背面保護フィルム、充電・データ転送用USB Type-Cケーブルが入っています。
SE300本体のmicroSDカードスロットにはダミーカードが刺さっていますが、取り外しの際はうっかりどこかに飛ばして見失わないようご注意ください。
続いてSE300の外観チェックです。
右側面にはAK製DAPの象徴ともいえる、腕時計のリューズを模したボリュームノブが配置されています。右側面は全体的にシルバーの光沢仕上げとなっていますが、ノブの中央のみピンクゴールドがあしらわれているのが特徴です。SE300の筐体にはアルミとステンレスが使われており、重さは約317gです。
左側面には「戻る」「再生」「進む」の3つのボタンを配置しています。右側と異なり、サンドブラストのようなつや消し仕上げとなっているのも面白いですね。
本体上部には電源ボタンと2.5mm/4.4mmのバランス端子、3.5mmのシングルエンド端子が並びます。こちらの面もつや消し仕上げです。
本体下部にはmicroSDカードスロットがひとつと、Type-CのUSBコネクタを配置しています。こちらの面はBluetoothやWi-Fiなどの通信のためかと思いますが樹脂パネルとなっていました。
さて、外観的にはスタンダードなDAPという感じで特に変わったところはなさそうですが…このSE300の”トガった部分”は内部に隠されていました。それはDAPには欠かせない「デジタル信号をアナログ信号に変換する」部分、つまりDigital to Analog Converter(DAC)です!
これまでAKはデビューモデル・AK100からWolfson、シーラス・ロジック、ESS、AKM(旭化成エレクトロニクス)…とさまざまなメーカーのDACチップを採用してきましたが、このSE300では48組・96個の超精密抵抗器をひとつひとつ厳選して検査、選別、配置した”フルディスクリート構成の24bit R-2R DAC回路”をブランドとしてはじめて搭載しました。R-2R DAC回路は多数の抵抗器をはしごのように並べることから「ラダー(梯子)DAC回路」とも呼ばれていますが、当然ながらすべての抵抗器の精度・相性の高さが求められるため設計はより複雑になります。一方で、メーカーが素材の選定からサウンドチューニングまで設計者が自由に行えるという利点もある方式なのです。
しかもSE300には独自開発したFPGA(Field Programmable Gate Array、回路構成のプログラム書き換え可能なIC)をこちらもブランドとして初めて採用することで、「OS/NOSモード切替機能」を搭載しています。
これは
また、SE300ではClass-AとClass-ABの2種類のアンプを切り替えることが可能な「Class-A/AB Dualアンプ」を搭載しています。
これらはそれぞれ、
あるいはOS・Class-ABの組み合わせで精細かつ鮮明なサウンドを楽しんだりと、
曲やその日の気分でさまざまな組み合わせの音を選ぶことが可能です。
それではSE300のサウンドチェックとまいりましょう。
イヤホンにはqdcの10BA+4EST(静電)搭載フラッグシップイヤホン・Anole V14-Sをセレクトしました。V14-Sは4つのチューニングスイッチで低域・中域・高域・超高域を変化させることができるイヤホンですが、今回はすべてのスイッチをOFFにしたフラットバランスに設定しています。
まずはNOSモード・Class-Aアンプで聴いてみます。解像感が高いこともあって、音の粒子をそのまま耳に流し込んでくるかのような生々しい聴こえ方です。低域の量感はやや控え目ですが力強さを感じさせ、もの足りなさはありません。いわゆるライブ感のあるサウンドという感じの荒々しさが味わえます。
ここでNOSモードのままアンプをClass-ABに変更すると、音の粒立ちはそのままながら荒々しさが薄れ、低域の力強さもちょっとおとなしめになるため、より耳になじみやすい方向に変化します。たとえると昔は勢いで押していたバンドがキャリアを積んで緩急のつけ方を覚えた…的な変わり方でしょうか。
続いてOSモード・Class-Aアンプで聴いてみましょう。一音一音の独立した感じが強かったNOSモードに比べ、こちらはそれぞれの音が互いに協調したようななめらかさを感じさせる聴こえ方です。低域の力強さはそのままですが、生のライブ感というよりスタジオライブを聴いているかのような”聴きやすいようにちょっと整えられた感じ”があるかと思います。
さらにOSモードのままアンプをClass-ABに変更すると、各音のなめらかさに加えてS/N比の高さが強調されるかのようにノイズレスな空間が広がります。いわゆるHi-Fiサウンド、という印象です。これまでのAK製プレイヤーのサウンドになじみのある方であれば、このOSモード・Class-ABアンプの組み合わせがもっとも”AKらしさ”を感じられるかもしれません。
入力 | USB Type-C (充電&データ転送) | 出力 | 3.5mm3極アンバランス出力(光デジタル出力兼用)、2.5mm4極バランス出力 / 4.4mm5極バランス出力 (GND接続あり) |
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内蔵メモリ | 256GB [NAND] ※システム領域を含む | 外部メモリ対応 | microSDスロット×1 (最大1TB) |
microSDスロット×1 (最大1TB) | microSDスロット×1 (最大1TB) | 再生時間 | 約12時間 |
サイズ (W×H×D) | 76.45mm × 139.45mm × 17.6mm | 重量 | 約317g |
【商品情報】Astell&Kern A&futura SE300
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Astell&KernのA&futuraシリーズ第4弾モデル「SE300」は、
・AKブランド初となるフルディスクリート構成の24bit R-2R DAC回路搭載、NOS/OS切替も可能
・2種類の駆動方式が楽しめる「Class-A/AB Dualアンプ」を搭載
・ライブ感あふれるサウンドからHi-Fi調サウンドまで、モードの切替でさまざまな音質に変更可能
と、1台で多彩な楽しみ方が可能なオーディオプレイヤーとなっています。
Astell&Kern A&futura SE300は本日発売を迎えました!試聴機も展示しておりますので、ぜひ店頭にてAKの新しいチャレンジが生み出したサウンドをご体験ください!