final D8000 Pro Limited EditionとD8000を比較レビュー × 太田タカシ|プロのエンジニアによるヘッドホンレビュー
finalのフラッグシップヘッドホンD8000とD8000の質感を持ちながらプロ向けに再チューニングしたD8000 Proの限定モデルD8000 Pro Limited Editionをレコーディングエンジニアの太田タカシさんが比較レビューします。
目次
はじめに
- 平面磁界型ヘッドホン
final(ファイナル)とは
final D8000とfinal D8000 Pro Editionの特徴
- final D8000の特徴
- final D8000 Pro Editionの特徴
final D8000 Pro Limited Edition の特徴
- ヘッドホン本体
- ハウジング
- ヘッドバンド
- イヤーパッド
- コネクタ
- ケーブル
- ドライバー
final D8000 Pro Limited Edition装着感レビュー
final D8000 Pro Limited Edition音質レビュー
- 試聴環境
final D8000との比較
まとめ

レコーディングエンジニア 太田タカシ
1984年千葉県出身、バンド活動をする傍ら専門学校でレコーディングを学び、卒業後は音楽事務所のスタジオに勤務しレコーディングをしつつアレンジの基礎と制作進行を身につけた。その後、リハーサルスタジオ内のレコーディングスタジオでレコーディング・ミックス・マスタリング業務に従事した後、フリーランスに転身。現在はレコーディングの他にもサウンドプロデュースや若手の育成にも力を入れている。
主な作品参加アーティストはIndigo la End・ゲスの極み乙女。・リーガルリリー・グソクムズ・20th Centuryなど。近年はゲーム音楽やVtuberの作品にも参加している。
Twitter:@tario_ Instagram:@tario_
はじめに
みなさん平面磁界型ヘッドホンはご存知でしょうか?聞いたことがあっても音を聴いたことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
恥ずかしながら僕もそんな中のひとりです。
平面磁界型ヘッドホン
平面磁界型ヘッドホンについて簡単に説明すると、ダイアフラム(振動板)に直接ボイスコイルを貼り付け、それを2枚のマグネットで挟み込んで駆動させることでダイアフラム全体を均一に振動させる方式のヘッドホンのことです。基本的な構造はダイナミック型に近く、古くからある方式ですが、平面振動版全体を均一に駆動できるためフラットな音色を持つ機種が多く、特に近年急速に採用例が増えている方式です。
今回はハイエンド平面磁界型ヘッドホンfinal D8000 Pro Limited EditionとD8000の比較レビューをしていきます。どんなサウンドなのかワクワクしています!
final(ファイナル)とは
finalは日本のヘッドホン・イヤホンメーカーで、プロ向けやオーディオファイル向けのハイエンドヘッドホンから一般向けのエントリーモデルまで幅広く設計開発しているメーカーです。
ドラゴンボールやエヴァンゲリオンとコラボしたワイヤレスイヤホンやダイヤル調整で分解せずに自分の好きな音にカスタマイズできるMAKEシリーズなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
final D8000とfinal D8000 Pro Editionの特徴
それでは、今回比較レビューをするfinal D8000とfinal D8000 Pro Editionの特徴をみていきましょう。
なお、今回試聴するD8000 Pro Limited Editionは、D8000 Pro Editionの音質はそのままに、マットブラック&ゴールドの限定カラーを施し、和紙を使用した特殊生地による新開発イヤーパッドを装備した限定生産モデルとなります。
final D8000の特徴
final D8000は2017年に発売されたヘッドホンでAFDS(エアフィルムダンピングシステム)という独自技術を採り入れた平面磁界型ヘッドホンです。空気の層を利用して平面磁界型ヘッドホンの弱点である低音の不足を補うことで、音場感、低歪率がより活かされる作りになっています。
個人的に一番推したい部分が、「長期使用を考慮して修理を容易にする設計」を採用しているところです。決して安いとは言い難いハイエンドヘッドホンですので、一生に一度の大きい買い物!!という方も多いと思います。
プロの方であれば現場に持って行くこともあるでしょう。使ってるうちに不具合が起きることはどうしても避けられません。そんな時に修理が容易にできるということは、メーカーの製品に対する想いとユーザーに対する想いが感じられて凄く素敵だと思います。
final D8000 Pro Editionの特徴
final D8000 Pro EditonはD8000の繊細な音質をそのままに一般的なコンシュマー向けよりも大きな音を再生できるように再チューニングした製品です。実際に僕も音質が気に入っているリスニング向けのヘッドホンでミックスやマスタリングの細かい部分の仕上がりを確認するために大きい音で再生すると、ドラムなどのピークの強い楽器は特に、音が割れてしまうことがあります。用途が違うので当然ではあるのですが...。
同じように感じたエンジニアがきっといたのでしょう。D8000の質感を持ちながらレコーディング、ミックス、マスタリング時に扱えないか?という要望に答えたのがPro Editionということになります。
なお、再チューニングした結果D8000がそのまま大音量に対応したというだけではなく、ロックやポップス音楽などは特に解像度の表現が上がったということなので、その辺の違いも注目して聴いていきたいと思います。
final D8000 Pro Limited Edition の特徴
その前にもう少しfinal D8000 Pro Limited Editonについて細かくみてみたいと思います。
ヘッドホン本体
まずは全体を見ていきましょう。高級感もありますがスタイリッシュさも兼ね備えていてかっこいいです。D8000とPro Limited Editonの意匠に差はなく見た目としてはカラーリングの違いという感じでしょうか?
個人的には黒のカラーリングに黒い文字やロゴが入ってるPro LimitedEditonの方が渋くて好きです。でも、finalのロゴがかっこいいのでD8000のしっかりロゴ見える感じも捨て難いです。総じてどちらもカッコいい。
手にとってみると、少しずっしりと重さを感じる印象です。重量感からしっかりとしたつくりを感じますが、長時間装着するとなると少し重く感じるかもしれません。
ハウジング
ハウジングはアルミマグネシウム合金となっています。チラリと見える金色はゴールドメッキ加工されたハウジングのパンチングメタル部です。渋い。
ヘッドバンド
ヘッドバンドはレザーを採用しています。分厚い部類ではないですが、クッション性があり長年使えそうな高級なソファーを思わせる感触です。
イヤーパッド
イヤーパッドには和紙を使った特殊素材を採用しています。少しひんやりとしたドライな感触がします。D8000と比較すると見た目も触り心地も異なり、D8000の方が若干しっとりした感触になっています。共通して密閉度はあまり高くないように調整しているようです。
コネクタ
コネクタは3.5mm(2極)です。ロッキング機構がついてるので不意に脱落することはないので安心感があります。
ケーブル
ケーブルは、しっかりと太さのある2種類の脱着ケーブルが同梱してあります。
Input:4.4mm(5極)OutPut:3.5mm(2極) 長さ:1.5m
Input:XLR(4pin) OutPut:3.5mm(2極) 長さ:3m
どちらもバランスケーブルです。
※D8000とD8000 Pro Editonは
Input:3.5mm(3極) OutPut:3.5mm(2極) 長さ:1.5m
Input:6.3mm(3極) OutPut:3.5mm(2極) 長さ:3m
の標準ステレオプラグとミニステレオプラグの2種類が同梱されています。
ドライバー
ドライバーは平面磁界型方式にエアフィルムダンピングシステムを採用しています。従来の欠点である低音域で振動板が大きく揺れマグネットに接触してしまう問題を解決して、再生出来る最低周波数を下げることに成功したとのことです。
final D8000 Pro Limited Edition装着感レビュー
先ほど少し重く感じるかも、とお伝えしましたが、実際に装着してみると思いのほかフィット感がよく実際の重さほど重みは感じません。むしろもう少し着けている感覚を感じたいくらいです。
また、密閉性が高そうな外観ですが、解放感があります。ただし、ミックス・マスタリング時にヘッドホンで作業をする際は何時間も装着し続けることもありますので、そのように長時間着け続けていると重く感じるかもしれません。
作りの良さと軽量化は両立するのが難しいところですので、仕方ない部分でもあるかもしれませんね。
final D8000 Pro Limited Edition音質レビュー
試聴環境
今回も私のプライベートスタジオで試聴を行っていきます。
試聴環境は、Mac Mini→Symphony MK2 IOです。ソースはAppleMusicからロスレスで再生しながらさまざまなジャンルを聴いていきます。
※ケーブルについては、バランス接続で聴く環境がないためD8000のケーブルを流用して試聴しました。
一聴して耳を惹いたのは、リッチな低音でした。D8000 Pro Editionの特徴ともいえる低音の厚みに感動を覚えました。中域は抜けがよく音の溜まりがないスッキリした印象です。中高域の解像度が高いので、J-Popなど音数の多い楽曲でも細部のアレンジまで聴き取れます。
トランジェントの立ち上がりも高いのでクラシックにおける静かなパートでのクラリネットの打鍵音、クラシックギターのピッキング音まで明瞭に聞こえるため臨場感があり、低音までしっかりと定位を感じとることができます。ビックバンドを聴くと管楽器のアタックの追従がしっかりしており、管楽器の倍音をタイムラインがずれずに再生されている印象です。
ネガティブな印象としては普段聴き慣れてるダイナミック型より押し出し感に若干弱さを感じましたが、聴きこんでいくほど気にならなくなり、むしろ何も誇張無く自然なトランジェントを感じられるので音楽を聴くのがとても楽しく感じます。
試聴していくうちに、最初に懸念してたヘッドホンの重さも気にならなくなってました。イヤーパットも全く蒸れずに試聴ができて装着感も好印象でした。
final D8000との比較
次にD8000との比較をしてみます。
D8000 Pro Editionと比較すると少しスッキリした印象です。その分空間を感じやすくなっています。ダイナミクスもD8000の方がしっかりと出る印象です。finalがD8000はクラシックに強く、Pro Editionがロック、ポップスに向いてる傾向と紹介していますが、比較試聴するとよくわかりました。
共通して繊細さを感じますが、種類の違う繊細さです。この2つのヘッドホンはそのような違いから、優劣というよりは好みで選んでもらいたいと思いました。そういった意味で低音域の厚みや解像度の高さから個人的にはPro Editonが好みかなぁ。いやでも、女性ボーカルや弦楽器の高域の気持ちよさはD8000かも...。
【商品情報】final D8000 Pro Limited Edition
» 詳細を見る

【商品情報】final D8000
» 詳細を見る

まとめ
D8000とD8000 Pro Editionは率直にお伝えすると、どんな人にもおすすめしたくなるヘッドホンです。
特に音のディティールをしっかり聴いて音楽そのものやアレンジの細部まで楽しみたいという方におすすめできるのではないでしょうか?
平面磁界型ヘッドホンを初めて聴かせていただいたのですが、finalのD8000、D8000 Pro Editon両方共通してこの部分はちょっと...というような苦手な部分が少ないヘッドホンだと感じました。記録された音の波をしっかり追従して再生している感じです。
僕の勝手な主観ですが、ハイエンドヘッドホンは、得意なところはとことん得意、苦手なところはとことん苦手という印象だったのですが、見事に覆りました。
D8000 Pro Editionは立ち上がりの再生が素晴らしいのでリズム感をとても気持ち良く聴くことができます。逆にD8000は空気感の再生に優れているので臨場感を楽しみたいという方におすすめです。

























