カスタムIEM qdc Anole V14-Cをオーディオ専門店スタッフがレビューします。実際に耳型採取を行い、BA型を10基、EST型を4基の片側計14ドライバー搭載したV14-Cの音質をユニバーサルモデルV14-Sとの比較も含めて紹介します。
前回の記事ではカスタムIEMのオーダーから制作・完成まで紹介しました。今回は、詳しく製品の内容と音質レビューをしていきます。
カスタムイヤホンオーダー方法 | qdc Anole V14-C のカスタムIEMをオーダーから完成まで紹介
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こちらがオーダーしたV14-Cのパッケージ内容です。イヤホン本体にキャリングケース、2.5mmバランス/3.5mmアンバランス/4.4mmバランスの各プラグ、フライトアダプター、3.5mm→6.3mm変換プラグ、クリーニングツール、各種ドキュメントなど、基本的にユニバーサルモデルのV14-Sと同じ構成となっていました。ただし、当然ながらカスタムイヤホンなのでイヤーピースは付属しません。
キャリングケースのフタに埋め込まれているメタルプレートには、しっかりとV14ロゴが刻印されています。
まずはこちら、フェイスプレートから…と、ご覧いただくとおわかりのとおり、ユニバーサルモデルであるAnole V14-Sと同じカラーリングとなっています。
オーダー時にいろいろと悩んだのですが、もともとユニバーサル版の見た目が気に入っていたので、思い切ってまったく同じ3D蓄光フェイスプレート・ゴールドのフチあり(T01-02)を指定しました。モデルごとに異なるプロダクトロゴ(L8)とブランドロゴ(L1)も、ユニバーサル版と同じくゴールドで入れています。
この3D蓄光フェイスプレート、通常はちょっと模様の入ったブラックカラーとして見えますが…
紫外線や太陽光を吸収すると、ご覧のとおり鮮やかなグリーンに発光します。残念ながらユーザー本人は装着してしまうと見ることができませんが、非常にユニークなフェイスプレートなので個人的にオススメです。(撮影時はブラックライトを当てて発光させています)
qdcのカスタムイヤホンは、今年3月からケーブルコネクタを「qdc 2pin」または「カスタムIEM 2pin(フラットタイプ)」のどちらにするか選択できるようになりました。
ここも悩みましたが、V14-Cの付属ケーブルは導体に純銀と純銅を使用し、2.5mm/3.5mm/4.4mmの各プラグに交換可能な「3in1プラグ採用プレミアムケーブル(約120cm)」なので、質の面・プラグの面とも他のケーブルに交換する必要はなさそうと考えて「qdc 2pin」を選択しています。2pinケーブルのストックが豊富な方であれば、一般的な「カスタムIEM 2pin(フラットタイプ)」にしてみても面白いのではないでしょうか。
ケーブルのカラーについては、V-14Cではカッパーまたはブラックのどちらかを選択できます。こちらはユニバーサル版のケーブルがブラックだったので、ちょっと変えてみようということでカッパーを選びました。
ユニバーサル版のシェルカラーは不透明のブラック(シルバーパウダー入り)となっていましたが、こちらも同じでは面白みがないかなと思いトランスルーセント・パープル(015)にしています。
ここもユーザーによって非常に好みが分かれる部分とは思いますが、やっぱりカスタムイヤホンは”中身”が見えるとテンションが上がりますね。10基のBAドライバーと4基のEST(静電)ドライバーがシェル内にギッシリと詰め込まれている様子、各ドライバーから伸びる内部配線や音導管のラインなど…とはいえ、フェイスプレートと同じく装着してしまえば見えなくなってしまうポイントでもあるのですが。
さて、耳へのフィッティングも問題なさそうなのでいよいよ音を聴いてみたいと思います。プレイヤーにはAstell&Kernのフラッグシップモデル「A&Ultima SP3000」を組み合わせ、4.4mmバランスプラグで接続してみました。
Anole V14-Cには低域、中域、高域、超高域を変化させ、合計16種類の音色を歪みなく楽しむことが可能となる独自の「チューニングスイッチ・テクノロジー」が搭載されていますが、まずはすべてOFFにしたスタンダード状態で聴いてみましょう。
やや高域寄りのフラット傾向のサウンドですが、刺さるような刺激はなく非常にスッキリとした高域の伸びに端正な中低域、タイトながら重さを感じさせる低域がバランスよく、しかも勢いをもって耳に流れ込んでくるようなイメージです。
あまり派手な感じはなく、どちらかといえば落ち着きのある音作りではありますが、高い解像度と情報量の多さでリスナーを退屈にさせません。特に低域に関しては、超低域の再生能力が飛躍的に向上したというカスタマイズBAドライバーの存在が大きいのではないかと思います。
また、ちょっと意外なのが音量のとれ方です。EST(静電)ドライバーが4基搭載されているということでいわゆる”鳴らしづらい”イヤホンなのかな?と思いきや、逆に他のイヤホンに比べてもかなり音量がとりやすいモデルになっています。はじめてこのモデルを試聴する際は、普段よりもボリュームを下げてから音出しすることをおすすめします。
続いて、シェル側面に配置された4つのチューニングスイッチを付属のクリーニングツールなどで切り替えて、別のチューニングで聴いてみたいと思います。
チューニングスイッチの組み合わせが16種類もあるので、ひとつひとつどんな音か確かめるのは大変だなあ…と思いきや、ありがたいことにジャンル別のスイッチ配置を記載したカードが同梱されていました。POPやClassicalなど定番ジャンルはもちろん、ACG(アニメ・コミック・ゲーム)が用意されているのはこのジャンルが大人気となっている中国のブランドらしいところかもしれません。
実際にこのカードのとおり設定して聴いてみました。変化の幅はそれほど極端ではありませんが、たしかにそれぞれのジャンルに合った音質傾向に変化します。迷った時はこのカードを参考にスイッチを設定すれば間違いないかと思います。
もうひとつ、「カスタム版のV14-Cとユニバーサル版のV14-Sで音は異なるのか?」というところも確認してみたいと思います。
もちろんドライバー構成はまったく同じなので音も非常に似通ってはいますが、ユニバーサル版の柔らかいイヤーピースとカスタム版の硬質なカナルとの違いが現れるのか、または耳の形にぴったり合って音の逃げ場がなくなるためなのか、カスタム版の方が低域の芯がよりクッキリと出るような印象です。
また、イヤーピースよりもカスタム版の音の出口(ボア)が鼓膜に近いためか、音像も若干頭の中心に寄るような感覚がありました。音のスピード感も(本当に若干ですが)カスタム版の方があるようです。
では単純にカスタム版の方が良いのか?というとこれもまた難しいところです。まず、なんといってもカスタムイヤホンでは「イヤーピースを変えて音の変化を楽しむ」ということができません。それにカスタムイヤホンはその性質のため買取額もユニバーサル版に比べかなり下がってしまいます。
いろいろなイヤホンを次々に買い替えて楽しみたい、という方にはおすすめしにくいのですが、逆に「いろいろ聴いてきたけど、このイヤホンの音が気に入った!」という場合は、カスタムイヤホンにすることでより長くご愛用いただけるのではないかと思います。
ドライバー | ハイブリッド型 | ドライバー数 | 10BA+4EST / 14ドライバー(片側) |
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形式 | 密閉型 | 周波数応答範囲 | 10 - 50,000 Hz |
入力感度 | 105 - 108 dB SPL/mW | インピーダンス | 12 - 20Ω |
【商品情報】qdc Anole V14-C
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