MYTEK DIGITAL LIBERTY DAC II をレコーディングエンジニアの太田タカシさんがレビューします。コンパクトなサイズに大容量電源を搭載、厚みのある中低域とスピード感のある中高域が特徴のUSB DACを詳しく紹介します。
目次
はじめに
MYTEK DIGITALの特徴
MYTEK DIGITAL LIBERTY DAC IIの特徴
MYTEK DIGITAL LIBERTY DAC II の音質レビュー
製品仕様
まとめ
みなさんこんにちは、レコーディングエンジニアの太田です。今回のレビューはDAC(Digital to Analog Converter/デジタルトゥアナログコンバーター)です。音の最終的な出口であるヘッドホンにこだわるのはもちろんですが音の源泉とも言えるDACも忘れずにこだわっていきたいところです。
実際に、多くのエンジニアがミックスやマスタリング時のAD(Analog to Digital)とDA(Digital to Analog)にはこだわりを持っているのではないでしょうか。
もちろん、音楽を日常的に楽しんでいるオーディオファイルも最適なDACを探しているという方が多いと思います。今回はそんな大事な部分であるDACの中でも定番とも言えるMYTEC DIGITAL LIBERTY DAC IIをレビューしていきます。
MYTEK DIGITAL(マイテックデジタル)は、1992年にアメリカのヒットファクトリーやスカイラインといったレコーディングスタジオで技術エンジニア(レコーディング機材をカスタムしたりレコーディングエンジニアや顧客の要望に応えて新規で機材を作ったりするエンジニア)のミハウ・ユーレビッチが立ち上げた音響機器メーカーです。彼が製作したDAコンバーは多くのレコーディングスタジオやマスタリングスタジオで使用されています。
デジタルレコーディング初期の時代からプロの現場で培った技術をこそがMYTEK DIGITALの特徴と言えるのではないでしょうか。
サイズは140x225x44mmでコンパクトな印象ですが、中にトランス電源が入っているためかずっしりと重みを感じます。天板に「M」のロゴと、熱を逃がすための穴がデザインされており、中のLEDライトが光っているところが見えてかっこいいですね。
フロントパネルは至極シンプルな構成です。6.3mmヘッドホンアウト、インジケーター、ボリュームコントロールとなっています。
LEDインジケーターも視認性がよく、ひと目でインプットの種類、ビットレート、サンプルレートが分かるようになっています。このような欲しい情報がひと目で分かる設計は、一瞬の判断が必要となるプロの現場で機材を製作してきたノウハウが活かされているのではないでしょうか。
リアパネルは電源IECコネクター、デジタル入力部、アナログ出力部が設置されています。
入力はデジタルのみです。USB B端子×1系統、RCA同軸×2系統、TOSLINK×1系統、AES /EBU×1系統の接続が可能です。384kHz32BitまでのPCMデータ、DSD256まで幅広く対応ししています。
逆に出力はアナログのみでXLRバランス×1系統、RCAアンバランス×1系統、6.3mmヘッドホン×1系統の構成です。
リモートコントローラー、USBケーブル、電源ケーブル、取扱説明書、保証書、2PIN-3PIN変換アダプターが同梱されています。
DACチップはESS Technology社SABRE 2M DAC シリーズのフラッグシップDAC「ES9038Q2M」が採用されています。ESS社独自のHyperstreamⅡ技術により最大127dbのダイナミックレンジと優れた過渡特性と低歪みで繊細な音から迫力のある音まで余すことなく再現できます。
LIBERTY DAC II の特徴を見ていく中で特に注目したいのが、この電源です。このサイズでスイッチング電源ではなくトランス電源を乗せるとは!と驚いてしまいました。
このサイズで採用例の多いスイッチング電源は効率やサイズが小さいというメリットはあるものの電磁干渉によるノイズが発生しやすいというデメリットがあるため、別途ノイズ対策が必要な場合があります。
一方トロイダルトランス電源は、高い効率に加え、低ノイズで耐熱性が高く、音質的にはいいことづくめなことが多いです。電源部に余裕を持たせることは、低歪みで再生させるために不可欠な要素となりますが、スイッチング電源より場所を取るため、その分大きく重くなってしまいます。
LIBERTY DAC II は、このサイズの中に余剰なくらいの電力量を賄える電源を乗せるところが、音質面のメリットを重視するという録音の現場で機材を扱ってきた職人のこだわりと技術を感じられるところですね。
それでは実際に試聴していきます。
試聴環境はMacBook Air(M2,2022)からUSBでMYTEK DIGITAL LIBERTY DAC IIに接続。
スピーカー(IK multimedia iLoud precision MTM)とヘッドホン(SONY MDR-CD900ST、ULTRASONE Signature MASTER、Apple AirPods Max)で試聴しました。
最近ほとんどの機種でそうなので特筆する必要はないかもしれませんが、PCに接続すると認識されてすぐに使えます。ドライバー要らずで刺せば使える、ほんとありがたいですね。
音域としては中低域の厚みと中高域のスピード感が特徴的で、派手な印象はないのですが、薄くならず自然に広がっていくので映画館で聴いているような臨場感があり、聴いていてワクワクしてきます。映画を観るときや、ゲームプレイに使用すると気持ちがグッと盛り上がりそうです。
様々なジャンルをごちゃ混ぜに試聴してみましたが、 LIBERTY DAC IIで聴くとジャンル選びは不問だと感じました。どのジャンルも過不足なく聴くことができます。強いてあげるとするならば、中から低域がとにかく気持ち良いので、歪んだギターや荘厳なオーケストラは、特に聴いてて楽しい気持ちになるのではないでしょうか。
IK multimedia iLoud precision MTM
スピーカーで聴くと厚みが増した印象を受けます。中低域での存在感が上がり、高域は落ち着いて感じます。暴れ気味だった低域も普段よりも引き締まってモニターしやすく感じました。
ヘッドホンでの試聴で共通した印象では、音がひとつ前に出てくるイメージです。かと言って張り付いた感じは全くなく、厚みを持って前に出てくるので、張り付いた印象の楽曲に関しては嫌味がない距離感を感じます。
SONY MDR-CD900ST
SONY MDR-CD900STではMDR-CD900ST独特の高域が目立つ感じがが抑えられ、すごく聴きやすい印象になりました。その影響か上下に周波数帯域が伸びたようにも感じます。
ULTRASONE Signature MASTER
ULTRASONE Signature MASTERでの印象としてはレンジ感が纏まった印象です。元々ローエンドの再現性が高いヘッドホンですが更にフォーカス感が上がった印象です。
Apple AirPods Max
そしてApple AirPods Maxです。もちろん、どのヘッドホンに対しても印象がグッとよくなったのですが、Apple AirPods Maxもすごく良い印象になりました。
中域の解像度が上がり、聴感上余裕のある聞こえになりました。高域のスピード感も向上してLIBERTY DAC IIとの相性が良いです。有線で使っている方は少ないかもしれませんがApple AirPods Maxと接続しての使用、おすすめです。
これは特筆したい部分として、音量を上げていっても小さい音で再生しても音質が破綻しないです。これは、電源部に余裕があるからだと思いますが、この機材はこの音量だといい感じなんだけどちょっと音大きいんだよなぁ。とか、その逆も時折あるのですがそのジレンマをほとんど感じないと言っても差し支えないと思います。LIBERTY DAC IIは、自分の本当に気持ちいいと思える音量で音楽を楽しむことができると思います。
派手なサウンドよりも中域から低域にかけて重厚感があるサウンドが好きな方や、CDやサブスク音源、レコードだけでなく、映画やゲーム等の音も良い音で聴きたいという方におすすめしたいです。ダイナミックレンジの広さを余すことなく楽しめると思います。
入力端子 | USB B端子×1、RCA同軸×2、TOSLINK×1、AES /EBU×1 | 出力端子 | XLRバランス×1、RCAアンバランス×1、6.3mmヘッドホン×1 |
---|---|---|---|
ヘッドホンアンプ出力 | 300mA | MQA | ハードウェア・フルデコード対応 |
寸法 | 140mmx225mmx44mm | 重量 | 2kg |
【商品情報】MYTEK DIGITAL LIBERTY DAC II
» 詳細を見る
MYTEK DIGITAL LIBERTY DAC IIの特徴は、