Austrian Audio The Composer をレコーディングエンジニアの太田タカシさんがレビューします。シリーズの最大口径となるHi-X49 DLCドライバーを搭載、フラットな音色でオールラウンダーなヘッドホンを詳しく紹介します。
目次
はじめに
Austrian Audio とは
The Composerの外観と特徴
The Composerの装着感レビュー
The Composerの音質レビュー
製品仕様
まとめ
忙しい時こそ少し時間を作って落ち着いて音楽に身を任せる時間が欲しくなったりしませんか?ヘッドホンをして椅子にもたれかかって目を閉じて音楽聴くのっていいですよね。音質が良ければ良いほど没入感もひとしお...というわけで今回は、Austrian Audioから新しく発売されたフラッグシップヘッドホン「The Composer」をレビューしていきます。
Austrian Audioは2017年オーストリアのウイーンで創業した比較的新しいメーカーですが、AKGに在籍していたエンジニアが多数参加しているということもあり、レコーディングエンジニアの中でもAustrian Audioのマイクははだいぶ早い段階から注目されていました。かくいう私もAustrian Audioのマイクを愛用しており、普段のレコーディングからライブの録音まで幅広くお世話になっています。
マイクの製造でスタートを切った印象のAustrian Audioですが、近年ヘッドホンもリファレンス用、プロ用、コンシュマー用と多岐にわたって製品を発表しています。使っているエンジニアから評判の声も聞こえてきます。
そして今回レビューするThe ComposerはAustrian Audioが"プレミアム"と位置付けているリファレンスヘッドホンです。HPには「リファレンスヘッドホンの新たな基準を打ち立てます。」と、かなりの自信をのぞかせています!
まずは、特徴から詳しく見ていきましょう。
箱を開けると中には黒いシックな木箱が収められています。スタートガイドには、リボンがついており、素敵なギフトをプレゼントされたような気分になりますね。大事に使っていこうという気持ちになりました。...借り物なんですけどね。
肝心な見た目ですが上位機種にありがちなコテコテな高級感というより、シックでスタイリッシュに洗練されたデザインがカッコイイ!と感動しました。Austrian Audioのヘッドホンは、デザインに統一感があるのですが、The Composerは全く異なる印象です。
ハウジングはメッシュ構造の開放型となっています。ヘッドバンドの接続部分は可動式となっており、ヘッドバンドの角度調整が可能です。ハウジング側にはコネクタが設置されています。そして、メッシュの内側にレッドカラーのブランドロゴが覗きます。かっこいいですね。
ドライバーには、Hi-Xドライバーシリーズの最大口径となるHi-X49 DLCドライバーが搭載されています。
Hi-Xテクノロジー(ハイエクスカーション・アコーステイック・テクノロジー)とは、Austrian Audio独自の技術で、リング磁石システムを搭載することでエアフローを向上させクラス最強レベルの磁場を実現、さらに銅覆アルミ製のボイスコイルと組み合わせることでボイスコイルの軽量化を図り信号に対してより正確にレスポンスするという技術です。
また、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)でコーティングしたダイアフラムを採用しておりあらゆる音量でも対応することが可能となっているとのことです。
全体の空気感や解像感を再現する要ともいえるドライバー部分、定評のあるHi-Xドライバーのサウンドについては後ほど詳しくレビューしていきます。
ヘッドバンドはアルミ製のフレームの内側にクッションが付いています。サイドに調整用のアジャスターがあり、押しながら動かすことによって装着感を調整出来る仕組みになっています。フレームの裏にレーザーで「The Composer Maide in Austria」と刻印してあります。ここにもスタイリッシュなかっこよさを感じるところですね。
イヤーパッドは低反発のクッション性で高級な車のシートのような感触があります。そして、ポイントとなるのがマグネット脱着式となっている点です。交換が容易なので長く使うことを考えると嬉しいデザインですね。
イヤーカップは上下左右結構自由に動くのでとても収まりが良い印象です。
コネクターはハウジングの外側に接続部がある独特な作りです。バナナプラグが採用されていますので自作してリケーブルをしたいという方も楽しめる仕様になっています。
ケーブルは、標準のフォーンケーブルとバランス接続用の4PinXLRそして4.4mmのバランスケーブルが付属しています。
装着してまず思ったのは軽い...!ということでした。着圧感はもう少しあったほうがいいかもと思いましたが、時間が経つと馴染んでくる感じがしましたのであまり問題にならなそうです。
ヘッドバンドも柔らかいため頭部の重みもあまり気にならないと思います。個人的にはもう少し頭の上部に位置して欲しかったので、ベルトのセッティングは少し気になる部分でした。頭の大きさが小さいという方は一度試着してみた方がいいかもしれません。
それでは、音質レビューをしていきたいと思います。今回はエンジニアはもちろん、オーディオファイルの方やポタアンで聴く方を想定して3パターンで試聴してみました。
まずは、1. Mac Mini →Symphony I/O Mk IIで試聴します。
最初はクラシックから試聴したのですが、再生した瞬間、あれ?設定間違えてスピーカーから音出しちゃったかな?というくらい自然でフラットな鳴りです。その後、J-POPやロック、アニソンなどを聴いてみましたが、耳に張り付く感じがなく、かといって遠くない音質感でとても好感を覚えました。
続いて、2. Mac Mini → RME ADI-2/4 Pro SEで試聴しました。
1と2の両方の環境で聴いた感想になりますが、やはりヘッドホン自体はフラットという印象で、ヘッドホンアンプの癖の違いが手に取るようにわかります。視聴したヘッドホンアンプRME ADI-2/4 Pro SEの特徴である中音域の厚みをしっかりと感じられます。
最後に、3. iPhone 15 Pro Max → FiiO KA5で試聴しました。
KA5は、バランス接続対応なので4.4mmバランス接続で聴いてみました。こちらも味付けがなくバランス接続の良さであるセンターラインの滲みの少なさを発揮してくれています。特に低音域の定位はすごくいい感じです。
3パターン聴いてみての感想として、音色は極めてフラット、どこかの帯域が出張っている感じはしないです。人によっては地味に聞こえるかもしれないですが、ヘッドホンアンプの音の違いがわかりやすいので、アンプ側で好みに合わせることは可能だと思います。
個人的にはリファレンスで使うヘッドホンはフラットであってほしいので高評価ですね。
音像の距離感は近からず遠からずなのですが、気持ち近いくらいなのでジャンルフリーで聴けるオールラウンダーな印象です。
また、定位がすごくハッキリしているので動くようなパンニングは非常にスムーズです。もう一点、特筆したいのがアンプのパワーには左右されない良さがあります。オーディオインターフェイスのヘッドホンアンプでもポータブルアンプでもしっかり鳴らすことができます。
音量による音質変化も少なく、大きい音で鳴らしても歪み感はなく小さい音で鳴らしてもトランジェント感をしっかりと感じることができます。
型式 | 開放型 | ドライバーユニット | Hi-X49 DLC |
---|---|---|---|
感度 | 112dBspl/V | インピーダンス | 22Ω |
連続再生時間 | - | 充電時間 | - |
対応コーデック | - | 質量 | 約385g |
【商品情報】Austrian Audio The Composer
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