FOSTEX TH1000RP・TH1100RPをオーディオ専門店スタッフがレビューします。阿波藍で職人がひとつひとつ染め上げたハードメイプルのハウジングと最新のプレミアムRPドライバーを搭載した異なるキャラクターの2種を詳しく紹介します。
目次
FOSTEXのRPテクノロジーとは
TH1000RP/TH1100RPの特徴
TH1000RPの音質レビュー
まとめ
FOSTEX(フォステクス)は1973年に誕生した、日本の音響機器専業メーカーです。翌1974年にはブランド初となるヘッドホン「T50」を発売しています。
実はこのT50に搭載されていたドライバーこそ、コイルと一体化した振動板を磁石で挟み込み、振動板全体を均一に駆動するという平面駆動方式のひとつ”RP(Regular Phase)テクノロジー”を採用したドライバーだったのです。以来、FOSTEXは素材や形状、回路などあらゆる要素を改良しながら、このRPテクノロジーを絶やすことなく50年にわたり進化させてきました。
そして2024年、RPテクノロジー登場50周年のこの年に2つのRPフラッグシップモデルが発売されました!それがこちらの密閉型ヘッドホン・TH1000RPと開放型ヘッドホン・TH1100RPです!
今回はこのTH1000RPとTH1100RPについて、詳細および音質レビューをお送りします。
まずはパッケージをオープン!SDGsの流れもあるのか、今回のTH1000RP/TH1100RPはどちらもシンプルな紙製の黒い化粧箱に収められています。
パッケージ内容は本体、ケーブル、ポーチ、ドキュメント(安全上のご注意)とこちらもシンプル。付属品を含め製品仕様については基本的にTH1000RP/TH1100RP共通となっており、密閉型か開放型か(およびそれぞれに合わせたチューニング)の違いのみとなっています。
続いて各ヘッドホンの外観を見ていきましょう。まずは密閉型・TH1000RPから。大人気モデル・TH900シリーズなど”木”の印象が強いFOSTEX製ヘッドホンですが、今回はハウジングにバイオリンやギターにも使われるハードメイプル(サトウカエデ)の無垢材を使用しています。
TH1000RPにおける外観上の最大の特徴は、なんといってもこの深みのある藍色!ベースであるハードメイプルの木目をそのまま活かした、自然な風合いのカラーリングとなっています。
一方、こちらが開放型・TH1100RPです。TH1000RPと同じく藍染めのハードメイプルのハウジングですが、開放型ということでTH808やTH909のように格子状のアルミニウム製エッチングパーツがはめ込まれています。
ちなみに、この開口部はTH808/909よりもさらに大型化しています。その分せっかくの藍染めハウジングの面積が小さくなってしまうのがちょっと残念ですね。
TH1000RPとTH1100RPのハウジングを深みのある藍色に染め上げているのは、徳島県の伝統技法である”阿波藍”です。着物やデニムなどの生地に用いられる藍染めですが、徳島では原料の植物・タデアイを平安時代の終わりごろから栽培、このタデアイの葉を乾燥・発酵させた藍染め用の染料である蒅(すくも)は、江戸時代には「阿波の本藍」として全国に知られる特産品となりました。
このTH1000RP/TH1100RPでは、熟練した職人の手作業によって”塗り”と”乾燥”を繰り返し、ハードメイプルのハウジングをひとつひとつ丁寧に染め上げています。
両モデルともハウジングを支えるフレーム部分には、軽量なマグネシウム合金を新規採用。アルミの場合に比べ20%軽くなっているそうです。
ヘッドバンド部はステンレスの板バネを内蔵したバンドと、シープスキン製のヘッドパッドとの二重構造となっています。
イヤーパッドもこの2モデルのために新規開発されたものとなっています。人間の頭部形状にあわせて前方を薄く、後方を厚くした左右非対称形状とすることで装着感を最適化しただけでなく、高耐久性のシルクプロテイン製合皮を採用しました。
これは従来の素材に比べ約3倍もの耐久性をもっており、着脱式で交換もできるため長年に渡って愛用することが可能です。
こちらがイヤーパッドを外した状態のヘッドホン本体です。格子状のパーツの奥には、やはりこのTH1000RP/TH1100RPのために生み出された新開発の”プレミアムRPドライバー”が内蔵されています。
FOSTEX伝統のRPテクノロジーが50年の歳月を経て誕生したプレミアムRPドライバーは、従来品の約1.4倍と大型化した振動板を片側11個、計22個の棒状マグネットで挟み込んだものとなっています。これにより音の立ち上がり・立ち下がりの鋭さや滑らかな周波数特性などを実現しています。
付属のケーブルは、7N(99.99999%)グレードの高純度OFC(無酸素銅)アンバランス・ケーブル(6.3mmプラグ)で、長さは2mと従来モデルのもの(3m)よりやや短めとなっています。外装はPVC(ポリ塩化ビニル)製で、サラサラとした手触りです。ヘッドホンとの接続は歴代THシリーズと同じ2pinコネクタで行います。
なお、別売で4.4mmバランスケーブルも用意されているのでバランス接続派の方はこちらもぜひお試しください。
【商品情報】FOSTEX ET-TH4.4BL
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それではいよいよ両モデルの音質チェックとまいりましょう。組み合わせるヘッドホンアンプには、FIIOデスクトップオーディオシステム・K19を選んでみました。
【商品情報】FIIO K19
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濃密な中低域の厚みと艶、ウォーム感が際立つ音作りで、ホールのような響きが特徴的です。高域はすっと立ち消え、低域は量感控えめながら芯の通った重さを感じさせます。音場はリスナーの周囲ふた周りほどにぐるっと広がるイメージで、複数の楽器による収録やライブ音源などではより活き活きとしたサウンドが楽しめるヘッドホンになっています。
続いてTH1100RPの音質チェックです。
型式 | 密閉ダイナミック型 | ドライバー | RP方式平面振動板 |
---|---|---|---|
インピーダンス | 32 Ω | 感度 | 100 dB/mW(暫定) |
再生周波数帯域 | 10 - 40,000 Hz | 本体質量(ケーブル含まず) | 約420 g |
【商品情報】FOSTEX TH1000RP
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こちらは開放型ということもあり、音の濃密さは薄れややあっさりとした音に仕上がっています。中低域はどちらかといえばドライになりますが、高域の伸び、低域の締まりといった部分はTH1000RPより強く感じられる音づくりです。音場もより左右方向へ広がるようなイメージで、いわゆるモニターライクなサウンドが味わえるヘッドホンになっています。
ハウジングやプレミアムRPドライバーといったベースはまったく同じTH1000RPとTH1100RPではありますが、生み出す音にはかなりキャラクターの違いが出るというのがおもしろいところです。
型式 | オープンダイナミック型 | ドライバー | RP方式平面振動板 |
---|---|---|---|
インピーダンス | 32 Ω | 感度 | 96 dB/mW(暫定) |
再生周波数帯域 | 10 - 40,000 Hz | 本体質量(ケーブル含まず) | 約420 g |
【商品情報】FOSTEX TH1100RP
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