Lotoo PAW GT2をオーディオ専門店スタッフがレビューします。アナログ部とデジタル部が分離した構造とS/N比が高く、やや硬質のフラット傾向で躍動感のあるダイナミックなサウンドが特徴の人気シリーズの進化を実感できるDAPを詳しく紹介します。
目次
Lotoo PAW Goldシリーズとは
PAW GT2の特徴
PAW GT2の音質レビュー
製品仕様
まとめ
Lotoo(ロトゥー)は1999年に設立された中国・INFOMEDIA社のオーディオブランドです。日本市場には2014年12月に上陸をはたしますが、当時はハイレゾDAPブームのまっただ中ということもあり、このLotooが国内第1弾モデルとしてリリースしたのもやはりハイレゾDAPの「PAW Gold」でした。
タッチスクリーン操作のスマートなDAPが多数リリースされたこの時代に無骨なデザイン、ハードウェアボタンによる操作、そして28万円超という価格にもかかわらずその高い音質で人気を博し、その後マイナーチェンジモデルの「PAW Gold 2」(2018年2月発売)、タッチスクリーン搭載モデルの「PAW Gold TOUCH」(2018年10月発売)へと続くLotooのフラッグシップDAPシリーズです。
そして日本市場上陸からちょうど10年となる今年、PAW Gold TOUCHの後継モデルが6年ぶりに登場しました!それがこちらの「PAW GT2」です!
今回はこのPAW GT2について、詳細および音質レビューをお送りします。
まずはPAW GT2の外観からご紹介しましょう。サイズは132.8mm x 70.8mmと前モデルTOUCH(119mm × 68.6mm)よりやや縦長。本体右上にはシリーズ伝統の”金色のボリュームノブ”が光ります。
こちらが背面…おや、これはどう見ても平坦ではないですね。
左側面から見ると一目瞭然、今回のPAW GT2はちょうど「一般的なDAPにひとまわり小さなポータブルアンプをくっつけた」ようなデザインとなっています。
このため厚みは32.4mmと、TOUCH(21mm)よりもかなり増しています。
これは見た目のインパクトの大きさもありますが、どうやらこのPAW GT2の特徴のひとつである、内部のデジタル回路とアナログ回路を基板ごと分け、さらに物理的なシールド層を間に設ける”サンドイッチ構造”を実現するためのデザインでもあるようです。
搭載するDACチップは多くのハイクラスDAPや据置DACなどでも採用例の多い「AKM AK4191EQ + AK4499EX」です。
また、Bluetooth接続(SBC/AAC/LDACに対応)のほか、最大ロスレス96kHz/24bit対応のLotoo独自のワイヤレスロスレスオーディオ伝送技術「LTTP(Lotoo Tele-Transport Protocol)」を搭載しているのも特徴のひとつです。このLTTPはハイエンド・オールインワン・ポータブル・オーディオ・システム「Mjolnir」およびPAW GT2以降の今後発売されるすべてのLotoo製品に搭載されるとのことです。
こちらが上部から見た様子。シリーズ伝統のボリュームガードに守られた金色のボリュームノブが目立つ一方で、本体底面に一段低くなる形で貼りつくように設けられたヘッドホン出力端子(左:3.5mm、右:4.4mm)が強烈な個性を放っています。
最大出力は1000mW/ch (32Ω負荷・4.4mm側)と高出力なほか、Low/High/Super highの3段階のゲイン設定が可能です。
気をつけなければならないのが、この段差があるために太いプラグカバーのついたケーブルでは”物理的に接続することができない”可能性がある、という点です。たとえば下の写真は「final D8000 DC Pro Edition」付属の4.4mmバランスケーブルを刺した様子ですが、かなりギリギリであることがわかります。
右側面には左から「戻る」「再生・停止」「進む」、そして電源の各物理ボタンが並びます。なお、「戻る」「進む」については設定から入れ替えが可能です。
本体底面にはカバーつきのSDXCカードスロット(最大2TB対応)と、充電用のUSB Type-C端子を備えています。
PAW GT2はこれもまたシリーズの伝統として内蔵メモリを持たず、すべての音楽データは”フルサイズのSDカード”に入れて再生します。他のDAPでよく使われているmicroSDカードの場合、この写真のように変換アダプタが必要になりますのでご注意ください。
ちなみにPAW Goldシリーズに採用されているOSはAndroidではなく、独自の「Lotoo OS」となっています。そのため別途アプリをインストールしたり、サブスクサービスを利用したりというような使い方はできませんのでこの点もご注意を。
(WiFi経由でのDLNA・Airplay接続は可能です)
おなじみの”爆速起動”もしっかり引き継がれていますよ。
※サンプル機を使用しているため「SAMPLE」の文字が表示されています
それではPAW GT2の音質を確認してみたいと思います。
イヤホンには個人的リファレンスのカスタムIEM・qdc Anole V14-C(4.4mmバランス)を組み合わせてみました。PAW GT2のゲイン設定はHighにしています。
【商品情報】qdc Anole V14-C
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やや硬質さを感じさせるフラット傾向のサウンドですが、出力の高さによる制動がしっかりしているため低域にも物足りなさはなく、むしろS/N比の高さからくる音の強弱・抑揚がはっきりと耳に届くため「派手ではないのにダイナミックに音の動きを感じる」というちょっと不思議な感覚が味わえる音作りです。極端な音のキャラクターづけはありませんが、高域のピンと張りつめた透明感、中域の腰の据わった実体感など、組み合わせるイヤホンの実力に沿ったかたちで実直に音を鳴らしてくれる、そんなプレイヤーだと思います。今回の試聴でも、普段から聴きなれているはずなのに「ああ、やっぱりV14-Cって良いな」と改めて実感することになりました。
さて、出力の高さについてはヘッドホンをつないで確かめてみましょう。今度はfinal D8000 DC Pro Edition(4.4mmバランス)での試聴です。PAW GT2のゲイン設定はSuper highに切り替えました。
【商品情報】final D8000 DC Pro Edition
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D8000 DC Pro Editionは出力側のドライブ性能が低域の出方に直結する、というくらい難しい平面磁界型のヘッドホンですが、まったく音がやせたような印象もなくどしっとした低域が味わえます。ボリューム位置も65/100ほどで充分な音量がとれているようです。さすがにSuper highゲインではPAW GT2本体がそこそこ熱を持つのでこれで何時間も…というのは少し考えてしまいますが、一般的なヘッドホンであれば物足りなさは感じないレベルの出力の高さはあるように思いました。
DACチップ | AKM 4191EQ+デュアルAK4499EX | サイズ | 132.8mm x 70.8mm |
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重量 | 388g | ディスプレイ | 800x480 4インチタッチスクリーン |
OS | Lotoo OS搭載 | 連続再生時間 | 10時間(バッテリー容量:8,300mAh) |
出力 | 4.4mmバランス、3.5mmシングルエンド | Bluetooth送受信 | SBC, AAC, LDAC |
【商品情報】Lotoo PAW GT2
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