iBasso Audio DX340 をオーディオ専門店スタッフがレビューします。AC電源対応やディスクリートDAC回路搭載など新しいアプローチが満載の据え置きもポータブルも対応したフラッグシップDAP(音楽プレーヤー)を詳しく紹介します。
目次
iBasso Audio DX3x0シリーズとは
iBasso Audio DX340の特徴
DX340の音質レビュー
製品仕様
まとめ
iBasso Audio(アイバッソオーディオ)は2006年に設立された中国のポータブルオーディオメーカーです。小型USB-DACやイヤホンなどさまざまなジャンルの機器をリリースしていますが、なんといってもその中心となるのが2012年に『世界初のAndroid OS採用オーディオプレイヤー』として登場したDX100から始まる”DXシリーズ”ではないでしょうか。
DXシリーズのフラッグシップモデルには代々「DX300(2021年1月発売)」「DX320(2022年6月発売)」、派生モデルの「DX320 Edition X(2022年10月発売)」「DX320MAX Ti(2023年6月発売)」と”300番台”のナンバーが付けられてきました。
【音質レビュー】iBasso Audio DX320は、さらなる音楽体験を楽しめるフラッグシップDAP
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そんなDX3x0シリーズに、ついに最新モデルが登場することとなりました!それがこちらの「DX340」です!
今回はこのDX340について、詳細および音質レビューをお届けします。
DX340のパッケージ内容は本体以外に専用レザーケース、充電およびデータ転送用のUSBケーブル、マニュアル、保護フィルム、同軸デジタルケーブル、iBassoのDAPではおなじみのバーンイン(エージング)ケーブル、シリコンゴム製のキャップ、そしてDC12V電源ケーブルとなっています。この電源ケーブルははたしてなんのために…?!
こちらがDX340本体です。筐体にはニッケルやモリブデンを加えることで耐腐食性を高めたステンレス鋼・SUS316を採用しています。大きさは約150mm×77.5mm×19mm、重さは約486gとハイクラスDAPとしては標準的なサイズ感。ディスプレイは6.0インチ・1080×2160のAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)フルスクリーンで、非常に鮮やかです。
全体的なデザインはDX180やDX260と同じく、直線で構成された”インダストリアル・デザイン”が採用されています。
本体下部には左から4.4mmバランス、3.5mmシングルエンドの各ヘッドホン出力端子が並び、それぞれラインアウト端子兼用(設定で切替)です。おや、一番右にある謎の黒いキャップはいったい…?!
実はこれこそがDX340標準添付の専用アンプカード・AMP15で初採用となった「DC12V電源入力」機能のためのコネクタなのです!先にご紹介した付属品のDC電源ケーブルはここに刺して使うことになります。
このDC12V電源入力で接続することにより、通常(内蔵バッテリー)は±8Vで駆動するアナログ回路の電圧が±12Vに上昇、最大2,150mW+2,150mW@32Ωの出力と更にノイズレスなサウンドへとアップグレードする「Super Gain Mode」が使用可能になります。
なお、この電源コネクタおよびDC電源ケーブルはあくまでアナログ回路への電源供給用となっているため、充電機能はありません。充電は従来のDXシリーズと同じくUSB端子から行います。
なお、このDX340はすでに発売済みのAMP12/AMP13/AMP14などといった「AMP1x」シリーズのアンプカードをサポートした、交換式アンプモジュール対応モデルとなっています。ただし、交換用の適合プレートは後日販売予定となっておりますのでご注意ください。
本体上部にはmicroSD用カードスロット、充電用USB Type-C端子、そしてSPDIFデジタル出力端子を備えています。
本体右側面には「戻る」「再生・停止」「進む」の各ボタンおよびボリュームノブ(電源ボタン兼用)が配置されています。
なお、左側面にはなにもありません。
こちらがDX340の背面。ボリュームノブ付近のみ一段掘り下げたような形ですが、全体的には直線的でフラットなデザインとなっています。
ボリュームノブ周辺がネジ留めとなっているのも、DX180やDX260同様にパーツの交換や内部基板へのアクセスなどメーカーによるメンテナンスがしやすく、より長く愛用いただけるようにとのこと。
付属のレザーケースを装着するとこんな感じになります。
続いて内部設計についてもご紹介しましょう。DX340では既製品のDACチップを用いない”ディスクリートPWM-DAC回路”で信号をデコードします。iBasso Audio製品としてはハイクラスポータブルアンプ・D16 TAIPANで採用歴のあるディスクリートDAC回路ですが、同社製DAPではこのDX340で初めて搭載しました。
DXシリーズの特徴である、オーディオ再生処理専用の"FPGA"と呼ばれるICチップを併用することで音質向上を図る技術”FPGA-Masterテクノロジー”は、「FPGA-Master 3.0」へと進化しました。DX180やDX260に搭載されていた「2.0」をベースとしながら新たに独自の高調波調整アルゴリズムを搭載することで、ユーザーによる5種類の倍音付加機能”ハーモニックデジタルフィルター”を実現したとのことです。
それではDX340のサウンドチェックです。今回はAcoustuneの最新モデル・HS1900X SHINOGI-鎬-を組み合わせて試聴してみました。アンプゲインはLow、ハーモニックデジタルフィルターは基本的にニュートラルサウンドのH1を設定しています。
【商品情報】Acoustune HS1900X SHINOGI-鎬-
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全体的にやや硬質さのあるフラットバランスで、一音一音の輪郭をくっきりと浮かび上がらせてステージにちりばめたかのように解像感の高さを感じさせる音作りです。S/N比も高いためより音の粒立ちが強く感じられますが、録音状態の良くない音源では音が団子状にくっつきあったまま聴こえてしまう面があるので再生音源に厳しいDAPであると思います。
曲によってはあまりにも音の輪郭が際立ってしまい刺激が強く感じることもありましたが、そこで役立つのがハーモニックデジタルフィルターです。これはイコライザーのように音質そのものを変えるようなものではありませんが、輪郭と輪郭の間をスムーズにつなぎ合わせ、より聴きやすさが増すような効果を感じました。
さて、せっかくなのでもうひとつ、このDX340で搭載された”DC12V電源入力”の実力も試してみましょう。
こちらはDan Clark Audioのv-Panar(平面)ドライバー搭載ヘッドホン・E3を組み合わせ、Super Gain ModeをON・アンプゲインをHighに設定しています。
【商品情報】Dan Clark Audio E3
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E3はしっかり駆動させようとするとなかなか難しいヘッドホンで、パワーの足りないプレイヤーではのっぺりとした音になってしまうのですが、さすがにこのSuper Gain Modeの状態ではメリハリの効いた立体的なサウンドを聴かせてくれます。ここでアンプゲインはHighのままSuper Gain ModeだけをOFFにしてみると、音量的には特に変化はないもののドライバーの制動があまり効かなくなってしまうようで、急に躍動感に欠ける音になってしまいました。ゴムキャップがちょっと外しづらいという欠点はありますが、室内など電源が確保できる環境ではこのDC12V電源入力を使わない手はないと思います。
筐体材質 | ステンレス合金 | サイズ | 約150×77.5×19(mm) |
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重量 | 約486g | DAC | 独自開発 ディスクリートPWM-DAC回路 |
ディスプレイ | 6.0インチAMOLED | 充電時間 | 約2.5時間 |
再生時間 | 約11時間(使用方法・動作状況により変動します) | 内蔵ストレージ | 8GB RAM+256GB ROM |
【商品情報】iBasso Audio DX340
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