Astell&Kern PD10のオーディオ専門店スタッフによる特徴と音質、 A&ultima SP3000 SilverとKANN ULTRAとの比較レビューです。デュアルアンプと最新DACチップが生み出す、キレのある開放的なサウンド! 据え置きストリーマーとしても活躍する新世代DAPを詳しくご紹介します。
目次
Astell&Kernとは
本体特徴
内部特徴
音質比較レビュー
製品仕様
まとめ
Astell&Kern(アステル・アンド・ケルン)は、2012年に韓国ソウルで設立されたオーディオブランドです。日本でも「AKシリーズ」や「SPシリーズ」といったポータブルデジタルオーディオプレーヤー(以下、DAP)を中心に、ヘッドホンアンプやイヤホンなどが人気のブランドとして知られています。
新たに発売された「PD10」は、従来のDAPシリーズとは異なる、新しいコンセプトを採用した新世代DAPです。
Astell&Kernの人気フラッグシップDAP「A&ultima SP3000 Silver」と比較しながら、進化したポイントや特徴・音質の変化について詳しくレビューします。
「PD10」について代理店のアユート社にインタビューしました。フジヤエービック公式YouTubeで公開中です。ぜひ、こちらもあわせてご覧ください。
はじめに、サイズと重さを「A&ultima SP3000 Silver」と比較します。
「PD10」のサイズは縦75.4mm × 幅149.5mm × 厚さ17.3mm。ディスプレイは6インチで、「A&ultima SP3000 Silver」の5.46インチよりもやや大きく、縦長の形状です。重さも45g軽くなっており、全体的にスリムな印象です。
【商品情報】Astell&Kern SP3000 Silver
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本体上部には、電源ボタンと3.5mm / 4.4mmの出力端子が搭載されています。
電源ボタンは、従来の「SPシリーズ」と比べて大きめのサイズで、凹みがあるデザインが特徴です。押しやすく、「しっかり押せているか不安になる」といった心配はなさそうです。
本体底部には、microSDスロットとUSB Type-C端子が配置されています。
本体右側には、曲送り・停止・ボリューム調整の操作ボタンが集約されています。
ボタン操作により片手で持ってスムーズに操作できる点が特徴です。ボリュームホイールは片手での操作が難しい場面もありますが、誤って落としてしまう心配は少ないと思います。
本体左側にはボタンロック機能の切り替えスイッチを搭載。従来モデルでは画面操作でロックのオン/オフを設定していましたが、本機ではボタン操作で簡単に切り替えできるため、よりスムーズに使用できます。
DACチップは、「AKM AK4498EX」をQuad-DAC(Dual DAC×2 AK4191EQ)構成を採用しています。DAPとしては世界初の新型DACチップであり、細部まで鮮明に描写する表現力の高さが特徴です。また、デジタル信号処理とアナログ信号処理を完全に分離する「HEXAオーディオ回路構造」を搭載しており、これにより驚異的なS/N比の向上を実現しています。
「PD10」最大の特徴は「インピーダンス適応デュアルアンプ」の搭載です。
従来の一般的なDAPはゲインの切り替えを1つのアンプで切り替えますが、「PD10」は高インピーダンス用・低インピーダンス用の2つのアンプを搭載。イヤホンやヘッドホンをジャックに接続すると、インピーダンスを自動検知し、最適なアンプへ振り分ける特別な構成を採用しており、さまざまな機器との接続に対応しています。
スタンド型の接続装置「クレードル」が付属するのも大きな特徴です。自宅のオーディオシステムと連携することで、据え置き型ネットワークプレーヤーとして活用可能。接続端子はXLRとUSB-Cのみのシンプルな構成です。さらに、前面のLEDは音源のビットレートに応じて色が変化し、視覚的にもわかりやすい仕様です。
また、クレードルに接続すると「PD10」の画面表示が切り替わり、簡単操作でPhoneアウト/XLRアウトの切り替えが可能です。ポータブルでも据え置きでも高音質を維持しながら、直感的な操作性を実現している点に、Astell&Kernのこだわりが感じられます。
ナイトモードに切り替えると、ディスプレイの色合いが暖色系に変化します。さらに、明るさ調整のスライダーが見やすくなり、操作性が向上しています。
ここからはAstell&Kernの従来モデルと聴き比べしながら、「PD10」の音質をレビューしていきます。
「A&ultima SP3000 Silver」と音質比較します。イヤホンは、「FitEar MH335DW EX」を組み合わせて試聴しました。
「A&ultima SP3000 Silver」は、粗さがなく、丁寧で透明感のある心地よいサウンドが特徴です。広めのサウンドステージと力強い音の押し出しで、エネルギッシュな音の躍動感が楽しめます。
「PD10」は、さらに広いサウンドステージで、音が高く伸びていく開放感があります。また、音の輪郭がスッキリとしているため、粒立ちとキレの良さが際立ちます。音の分離感や力強さやボーカルの艶やかさも印象的で、高解像度ながらも音楽の楽しさをしっかり表現してくれます。
【商品情報】Astell&Kern SP3000 Silver
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【商品情報】FitEar MH335DW EX
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高出力性能が特徴の「KANN ULTRA」と比較します。ヘッドホンは、高い出力が必要な「Meze Audio POET」を組み合わせました。
まず、「PD10」をノーマルゲインで試聴すると、一聴してしっかりと音が鳴っていることを確認できます。音の芯は太くしっかりとした厚みがあり、特に低域の深みと、中高音域の広がり、豊かな表現力には驚かされました。
続いて「KANN ULTRA」で試聴すると、力強い押し出しと馬力感のあるサウンドが感じられます。ボーカルの艶やかさや繊細な表現力はどちらも高いレベルにありますが、音場の広がりやきめ細かさは、「PD10」の方がより優れています。
「KANN ULTRA」も高出力が魅力のDAPですが、「PD10」はそれを凌駕するほどの駆動力を備えていることを実感しました。
【商品情報】Astell&Kern KANN ULTRA
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【商品情報】Meze Audio POET
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最後に、クレードルを接続して試聴します。アンプは「LUXMAN P-750u MARKII」、ヘッドホンは「Meze Audio POET」を組み合わせました。
高解像度ながらも迫力のあるしっかりとしたサウンドが特徴で、ポップスやロックが相性が良いと感じました。ボリュームを上げなくても十分な駆動力を発揮し、さらにボリュームを上げても破綻しない安定感があります。
【商品情報】Luxman P-750u Mark II
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【商品情報】Meze Audio POET
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対応フォーマット | WAV、FLAC、WMA、MP3、OGG、APE、AAC、ALAC、AIFF、DFF、DSF | DACチップ | AKM AK4191EQ×2 + AK4498EX×4 (Dual-DAC×2) |
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出力端子 | 3.5mm3極アンバランス出力(光デジタル出力兼用)4.4mm5極バランス出力 (5極GND結線) | 再生時間 | 約15時間(ノーマルゲイン、FLAC、44.1KHz/16bit、Vol.50、LCDオフ、アンバランス出力) |
サイズ | 約75.4 × 149.5 × 17.3mm | 重さ | 約435g |
内部メモリ | 256GB [NAND] ※システム領域を含む | 外部メモリ | microSDスロット×1 (最大2TB) |
Bluetooth対応コーデック | SBC、AAC、Qualcomm aptX HD、LDAC、LHDC | OS | Windows 10 (32/64bit) 11 (64bit) / MAC OS X 10.7 |
【商品情報】Astell&Kern PD10
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今回は「Astell&Kern PD10」の特徴と音質、従来モデルとの比較を紹介しました。
・ポータブルDAPとしても据え置き型ストリーマーとしても活躍できる出力と機能
・新型DACチップと回路構造による驚異的なS/N比
・広いサウンドステージと伸びやかな開放感、音楽を楽しく再生してくれる
これまでにない新たなDAPのあり方を掲示したAstell&Kernの最新モデル「PD10」。
店頭試聴機をご用意しておりますので、ぜひお試しください。