FOSTEX T50RPmk4Q / T60RPmk2Q × 太田タカシ|プロエンジニアが音質を比較レビュー

目次
はじめに
FOSTEXとは
T50RPmk4Qとは
T50RPmk4Qの音質
T50RPmk4QとT50RPmk4の比較
T60RPmk2Qとは
T60RPmk2Qの音質
T60RPmk2QとT60RPmk2の比較
それぞれのおすすめユーザー
まとめ

太田タカシ(レコーディングエンジニア)
バンド活動の傍ら専門学校でレコーディングを学ぶ。卒業後はスタジオ勤務で、レコーディングをしつつアレンジの基礎と制作進行を身につけた。その後、レコーディング・ミックス・マスタリング業務に従事した後、フリーランスに転身。現在はレコーディングの他にサウンドプロデュースや若手育成にも力を入れつつ、ゲーム音楽やVtuberの作品にも参加している。
主な作品参加アーティストはIndigo la End・ゲスの極み乙女。・リーガルリリー・グソクムズ・20th Centuryなど。
X: @Tario_Rec Instagram: @tario_
はじめに
みなさんこんにちは。レコーディングエンジニアの太田です。
今回は、FOSTEXの「T50RPmk4Q」と「T60RPmk2Q」を紹介します。
モニターヘッドホンとして人気の「T50RPmk4」と、リスニングヘッドホンの「T60RPmk2」。それぞれの特徴を受け継ぎながら、さらなるアップデートが施された上位モデルが、今回取り上げる2機種です。
本記事では、それぞれのベースモデルと聴き比べ、制作現場での使い勝手とリスニングの両面からレコーディングエンジニアの視点でレビューします。
FOSTEXとは
FOSTEX(フォステクス)は1973年の誕生以降、長年にわたってプロオーディオ製品を手がけてきた日本の音響ブランドです。
ヘッドホンの印象が強いと思いますが、制作現場ではモニタースピーカーやレコーダーなど、さまざまなFOSTEX製品が使われてきました。
レコーディングエンジニアである私もレコーディングや音楽制作の「現場を支えてきたブランド」という印象を持っています。業務機器らしい実用性を大切にしながら独自の技術や音作りを追求している点が、FOSTEXならではの魅力だと思います。
T50RPmk4Qとは
T50RPmk4Qは人気のモニターヘッドホン「T50RPmk4」をベースに、さらなる高音質化を図った上位モデルです。
【商品情報】FOSTEX T50RPmk4Q
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大きなアップデートとなるのが、ドライバーから出力端子までをつなぐ内部配線です。T50RPmk4の3Nグレードに対し、T50RPmk4Qでは純度99.99999%以上の7Nグレード高純度OFC線を採用。フラッグシップモデルで培われた高音質設計が取り入れられています。
ドライバーは、FOSTEX独自の「RPテクノロジー」による第4世代の全面駆動型平面振動板ドライバーが採用されています。
外観はFOSTEXのモニターヘッドホンらしい、やや無骨な印象です。
セミオープン型のハウジングをはじめ、基本的な構造やデザインはT50RPmk4から受け継がれています。
また、Qシリーズ専用の「究」ロゴが、ベースモデルとの外観上の違いとなっています。
本体重量は約330gと見た目ほど重くなく、装着しても重さは気になりませんでした。側圧も適度で、イヤーパッドには耳全体がすっぽり収まる余裕があります。耳まわりが圧迫されにくく、長時間の作業でも痛くなりにくいです。
ヘッドバンドの長さは無段階で調整できるため、自分に合った位置へ細かく合わせられます。
左右両方のハウジングに4極3.5mm端子が備わっており、ケーブルを左右どちらからでも接続できます。別売ケーブルで4.4mmバランス接続も可能です。
スタジオでの取り回しだけでなく、さまざまな再生環境に合わせやすい点も実用的だと感じました。
T50RPmk4Qの音質
今回は、以下2つの環境で試聴を行いました。
リスニング環境での試聴
| 音像・質感・距離感 | 近すぎず遠すぎないニュートラルな距離感。 モニターライクだが、過度に鋭く聴かせるタイプではない。 ギターの質感は歪みの量だけでなく、粒の大きさまで捉えやすい。アンプや歪みのキャラクターを細かく確認できる |
|---|---|
| 音場 | 過度に広く演出せず、モニターヘッドホンとして適度な広さ。ライブ音源では会場の広がりや空気感も自然に再現 |
| 低域 | 過度な味付けがない自然な印象 |
| 中域 | 見通しが特に良く、ボーカルやギターなど楽曲の中心となる音を追いやすい |
| 高域 | 輪郭を過度に強調せず、自然なバランス |
| 全体的な印象 | 色付けが少なく、必要な音へ自然に意識を向けやすい。長時間のモニタリングにも向いている |
特に印象的だったのは、中域の見通しの良さです。ボーカルやギターなど楽曲の中心となる音を追いやすく、歪んだギターも質感や粒の大きさまで細かく捉えられます。音が厚く重なる場面でも各パートが混み合いにくく、必要な情報へ自然に耳を向けられる点は、モニターヘッドホンとして大きな魅力です。
音源制作での試聴
実際のミックス作業では、リバーブのかかり具合や各楽器の音量バランスを判断しやすく、音源に含まれる前後関係や広がりも素直に確認できます。各パートの音量差も捉えやすく、バランス調整のしやすいモニターヘッドホンだと感じました。
低域は量感を強調せず、タイトにまとまっています。必要以上に広がらないため全体のバランスを把握しやすい一方、豊かな低域の広がりを求める方には少し引き締まって感じられるかもしれません。この部分は性能の優劣というより、用途や好みによって評価が分かれそうです。
特定のジャンルに偏らず、幅広い音楽制作に対応できます。特にギターやボーカルなど中域の情報が多いロックやバンドサウンドでは、各パートの重なりを細かく確認しやすく感じました。空間情報も自然に再現するため、ライブ音源やアコースティックな編成にも向いています。
全体として色付けが少なく、音源の質感や違いを素直に確認できる、モニターらしいバランスに仕上がっていると感じました。
T50RPmk4QとT50RPmk4の比較
T50RPmk4QとベースモデルのT50RPmk4を、同じ試聴環境で比較しました。基本となる音の方向性には共通点がありますが、実際に聴き比べてみると、両モデルの間には想像していた以上に明確な違いがありました。
【商品情報】FOSTEX T50RPMK4
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外観・装着感
外観や装着感には大きな違いがなく、基本的なハウジング形状やイヤーパッド、約330gという重量、左右どちらからでも接続できる4極3.5mm端子などは共通しています。外観上で分かりやすい違いは、T50RPmk4Qに入れられたQシリーズ専用のロゴとケーブル被膜です。
音質傾向
T50RPmk4QからT50RPmk4へ切り替えると、まず音場が少しコンパクトになり、音の質感もやや柔らかく感じられます。高域の伸びや空間の広がりはQよりも控えめのため、相対的にベースの存在へ耳が向きやすくなりました。
一方、T50RPmk4Qは高域がより自然に伸び、音場の見通しも広く感じられます。帯域全体の情報が整理され、各楽器の分離や細かな質感、空間の見え方もより明確です。
T50RPmk4も単体では十分にモニターらしい音ですが、Qと比較すると解像度や空間表現には明確な差があります。ベースモデルのまとまりの良さを残しながら、情報量と見通しを段違いに高めたのがT50RPmk4Qという印象です。
おすすめ楽曲ジャンル
▼T50RPmk4Q
| 音の傾向 | 色付けが少なく、解像度とバランスに優れたモニターサウンド。高域の伸びや空間情報も捉えやすい |
|---|---|
| おすすめのジャンル・用途 | ロック、オルタナ、バンドサウンド、アコースティック、ライブ音源など。幅広い音楽制作にも対応 |
▼T50RPmk4
| 音の傾向 | Qよりも柔らかくコンパクトで、素直なモニターサウンド |
|---|---|
| おすすめのジャンル・用途 | 過度な情報量よりも、まとまりのある自然な音を好む方におすすめ |
音源制作(ミックス作業)でおすすめなのは
実際のミックス作業でも、個人的には明確にT50RPmk4Qの方が使いやすいと感じます。各楽器の音量関係を俯瞰しやすく、リバーブの量や前後の距離感もより細かく確認できます。音数の多い場面でも、それぞれのパートがどのように重なっているかを把握しやすいため、バランスを調整する際の迷いが少なくなりました。
比較すると、Qが大きくアップデートされていることが実感できました。ベースモデルの持つ素直さを受け継ぎながら、解像度や帯域バランス、空間表現を高めたT50RPmk4Q。制作現場でどちらかを選ぶのであれば、迷わずT50RPmk4Qを選びます。
T60RPmk2Qとは
T60RPmk2Qは、リスニングヘッドホンとして展開されている「T60RPmk2」をベースに、さらなる高音質化を図った上位モデルです。こちらは正確なモニタリングだけでなく、音楽を聴く楽しさや没入感をより重視したモデルとして位置付けられています。
【商品情報】FOSTEX T60RPmk2Q
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外観でまず目を引くのが、黒胡桃の無垢材から削り出されたハウジングです。手に取ってみると、高級感のあるアコースティック楽器を思わせる佇まいです。こちらのハウジングにも、Qシリーズ専用の「究」ロゴがあしらわれています。
ドライバーはT50RPmk4Qと同じく、第4世代の全面駆動型平面振動板ドライバーを採用。モニター用途を主眼としたT50RPmk4Qとは異なる、リスニング向けの音作りが施されています。
ドライバーと出力端子をつなぐ内部配線もT50RPmk4Qと同様に、7Nグレード高純度OFC線が採用されています。
ケーブルは、左右のハウジングにそれぞれ2極3.5mmプラグを接続するY字型です。T50RPmk4Qのように左右どちらか一方から接続する構造ではありませんが、実際に使用していて取り回しが気になることはありませんでした。また、別売ケーブルを使用すれば4.4mmバランス接続にも対応できます。
本体重量はケーブルを除いて約360gで、T50RPmk4Qより約30g重くなっています。装着した瞬間には少しだけずっしりとした感覚があるものの、気になるほどではありません。
側圧は適度で、低反発のイヤーパッドに耳全体がすっぽり収まります。耳まわりが圧迫されにくく、装着感はT50RPmk4Qと同様に良好です。
T60RPmk2Qの音質
試聴はT50RPmk4Qと同じく、Apogee Symphony I/O Mk IIのヘッドホン出力に接続したPro Toolsのセッションと、MacBook Airのヘッドフォン出力から再生したロスレス音源の、2つの環境で行いました。
| 音像・質感・距離感 | やや遠めの距離感で、音楽を心地よく楽しむリスニングライクな印象。音の質感は柔らかく、温かみがある |
|---|---|
| 音場 | 広めの音場で、個々の音を細かく切り分けるというより、空間全体で包み込むように再現。楽器やボーカルの余韻も感じやすい |
| 低域 | T50RPmk4Qより量感があり、空間全体へ豊かに広がる。細部を追うより、音楽全体の土台として豊かな響きを楽しませる |
| 中域 | 少し艶があり、ボーカルや楽器に滑らかさと温度感を加えた表現 |
| 高域 | 硬さや鋭さを抑えた柔らかな印象。低域や中域と自然につながり、余韻や響きを心地よく聴かせる |
| 全体的な印象 | 広い音場と豊かな響きを活かしたリスニング向けのサウンド。細部を分析するより、音楽全体への没入感を楽しみやすい |
印象的なのは、T50RPmk4Qとのコンセプトの違いです。T50RPmk4Qが音の質感やバランスを見極めるモニターサウンドなのに対し、T60RPmk2Qは広い音場や豊かな余韻を活かして、音楽全体を包み込むように聴かせます。同じ第4世代RPドライバーを搭載しながら、異なる方向性に仕上げられている点が特徴です。
T60RPmk2QとT60RPmk2の比較
T60RPmk2QとベースモデルのT60RPmk2を聴き比べました。両モデルとも黒胡桃無垢材のハウジングを生かした温かみのあるリスニングサウンドですが、その完成度には大きな違いを感じました。
【商品情報】FOSTEX T60RPmk2
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外観・基本仕様
外観や基本仕様は、両モデルに大きな違いはありません。黒胡桃無垢材のハウジング、第4世代RPドライバー、左右独立のY字型ケーブル、約360gの重量などは共通しています。公表されているインピーダンスや感度、再生周波数帯域も同一です。
分かりやすい違いとしては、Qシリーズ専用の「究」ロゴです。
仕様面での大きな違いは内部配線で、ベースモデルの3Nグレードに対して、T60RPmk2Qには7Nグレード高純度OFC線が採用されています。
音質傾向
T60RPmk2QからT60RPmk2へ切り替えると、まず音場が狭くなり、包み込まれるような感覚も控えめになります。低域の量感は残っているものの、輪郭が少しぼやけて聞こえ、低域から中低域にかけての見通しも悪く感じました。
中域の音色やボーカルの距離感は大きく変わらないものの、ベースモデルでは低域が中域へかぶり、ボーカルや楽器の質感を追いにくく感じる場面があります。高域にもやや少しチリチリとした粗さがあり、Qと比べると余韻のつながりは滑らかではありません。
対してT60RPmk2Qは、豊かな低域を保ちながら輪郭が整い、中域の艶やボーカルの存在感も明瞭です。高域の粗さも抑えられ、広い音場と滑らかな響きによって、より自然に音楽へ没入できます。
T60RPmk2の温かさや包み込むような方向性を受け継ぎながら、低域のまとまり、中域の見通し、高域の滑らかさ、音場の広さを引き上げたT60RPmk2Q。両モデルからどちらかを選ぶのであれば、リスニング用途でも制作のアイデアを広げる用途でも、私はT60RPmk2Qを選びます。
おすすめ楽曲ジャンル
▼T60RPmk2Q
| 音の傾向 | 温かみのある中域と豊かな低域を持ち、広い音場や楽器の響き、余韻を楽しみやすいリスニングサウンド |
|---|---|
| おすすめのジャンル・用途 | アコースティック、ジャズ、ライブ音源、オーケストラ、映画音楽、アンビエント、ボーカル、ソウル、R&Bなど |
▼T60RPmk2
| 音の傾向 | 温かく柔らかなリスニングサウンド。Qと比べると音場、帯域バランス、滑らかさは控えめ |
|---|---|
| おすすめのジャンル・用途 | 温かく柔らかな音で、リラックスして音楽を楽しみたい方におすすめ |
両モデルはジャンルを使い分けるというより、T60RPmk2Qがベースモデルの方向性をより高い完成度で楽しませるという関係です。T60RPmk2に音場や帯域バランス、滑らかさを高めたのがT60RPmk2Qという印象です。
それぞれのおすすめユーザー
4機種を選ぶ際は、「音源の細部まで見通せる音が好きか」「豊かな響きに包まれて音楽を楽しみたいか」で考えると分かりやすいと思います。
T50RPmk4シリーズは、楽曲に含まれている情報を整理して見せるモニターサウンド。T60RPmk2シリーズは、音場の広さや温かみ、余韻を楽しむリスニングサウンドです。
そのうえで、より高い解像度や完成度を求める方には、Qの2機種がおすすめです。
T50RPmk4Q
色付けの少ない、見通しの良い音を好む方におすすめです。ボーカルや楽器の位置関係、ギターの歪み、リバーブなど細かな情報を捉えやすく、音楽制作はもちろん録音やミックスの違いを楽しみたい方にも向いています。
迫力のある低域よりも、バランスや解像度を重視する方に適したモデルです。
T50RPmk4
モニターライクで柔らかな音を好む方におすすめです。Qよりも音場がコンパクトでまとまりがあり、細部を分析しすぎず自然に音楽を楽しめます。
過度な味付けのない素直な音を、日常のリスニングでも楽しみたい方に適しています。
T60RPmk2Q
豊かな響きに包まれながら、音楽への没入感を楽しみたい方におすすめです。広い音場と量感のある低域、艶のある中域、滑らかな高域を備え、アコースティックやボーカルなどの音楽と好相性です。
音質だけでなく、黒胡桃無垢材による高級感のある外観や所有する楽しさを重視する方にも向いています。
T60RPmk2
温かく柔らかな音で、リラックスして音楽を楽しみたい方におすすめです。Qほどの解像度や空間表現は求めず、まとまりのあるリスニングサウンドを好む方に向いています。
黒胡桃無垢材による外観や、豊かな低域を楽しみたい方にも適したモデルです。
まとめ
今回4機種を聴き比べて共通して感じたのは、FOSTEXらしい実直な音作りです。低域を過度に膨らませたり、高域を強調して分かりやすい解像感を演出したりするのではなく、音楽が本来持っている質感やバランスを大切にしていると感じました。
また、T50RPmk4シリーズとT60RPmk2シリーズで、目指している方向が明確に分けられている点にも好感を持ちました。これは優劣や音楽制作をするかどうかではなく、自分がどのように音楽を聴いているかで選べます。
そしてQシリーズはそれぞれの個性を別の方向へ変えるのではなく、もともとのコンセプトをさらに高い完成度へ引き上げています。
ベースモデルにも十分な魅力がありますが、質を重視して選ぶのであれば、どちらのシリーズでもQモデルをおすすめというのが私の率直な結論です。
【商品情報】FOSTEX T50RPmk4Q
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【商品情報】FOSTEX T60RPmk2Q
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