Astell&Kernから4.4mmバランス接続専用という思い切った仕様の小型USB-DACが登場しました。iPhoneユーザーも安心のLightning変換アダプター付属の注目作「AK HC2」について詳細と音質レビューをお届けします。
2012年10月に発売された「AK100」以来、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)界をリードしてきたのが韓国のオーディオブランドAstell&Kern(アステルアンドケルン、以下「AK」)です。デビューから10年を数えるAKブランドですが、スマートフォンやPCと組み合わせて使うためのデバイスとして2021年3月に発売したのが小型USB-DAC「PEE51」でした。
【試聴レビュー】Astell&Kern(アステルアンドケルン)の新展開!小さなボディに”AK魂”を詰め込んだ小型USB-DAC・PEE51登場
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ケーブル直出し、しかもボタンやスイッチといったものは一切なく3.5mmステレオミニジャックのみ搭載というシンプルすぎる構成と、クリアかつ分離感の優れた音質で大変な人気を集めた製品でしたが、タイミング悪く世界的な半導体不足の時期とぶつかってしまったこともあり惜しまれながら生産完了に…。
しかし、このPEE51の遺伝子を受け継ぎつつもさらにバージョンアップをはたした小型USB-DACがとうとう本日発売を迎えました!それがこちら、AK HC2(以下HC2)です!
今回はこのHC2について、音質レビューとともに詳細をお届けします。
まずはHC2のパッケージ内容からご紹介しましょう。ケーブル直出しの本体とLightning変換アダプタ、マニュアル類だけとなっており、先代モデルともいうべきPEE51なみにシンプルです。
HC2の本体は22.8mm × 60mm × 12.1mmのスティック型USB-DAC部分から、直接Type-C端子のUSBケーブルが伸びた形状となっています。ケーブルの着脱はできません。
ケーブル部にはノイズを最小限に抑え、鮮明でソースに対して忠実なサウンド実現するために、デュアルノイズシールドケーブルを採用しています。銅芯線に錫(すず)コーティングを施し、腐食防止と引っ張り力の強化で耐久性を高めたほか、ケーブル全体をアルミフィルムで包み、錫メッキ銅線を編むことで、ノイズによる音への干渉を極限まで抑えているとのことです。
HC2がPEE51を含めた他の小型USB-DACと大きく異なるポイントが、このイヤホンジャックです。
こちらはなんと4.4mmバランスジャック!そう、HC2は4.4mmバランス接続専用という、非常に思い切った仕様の小型USB-DACなのです!ですので、通常の3.5mmステレオミニプラグのイヤホンはご使用いただけません。
HC2はAKの人気DAP・A&norma SR25 MKIIなどと同じく、シーラスロジック社製のDACチップ「CS43198」を左右に1基ずつ、デュアル搭載しています。さらにDACチップから送られる音声信号を増幅するアンプも左右にそれぞれ用意することで、ノイズを限りなく抑えながら左右のチャンネルセパレーション向上を実現しました。
もうひとつ、先代PEE51からの違いといえばこちらの「USB Type-C to Lightning変換アダプター」の存在が挙げられます。
PEE51はType-C端子での接続のみだったためiPhoneユーザーは使うことができませんでしたが、今回のHC2はこのLightning変換アダプターを使用することでiPhoneをはじめとする各種iOSデバイスでの使用が可能になりました。なお、このアダプターはHC2専用となりますのでご注意下さい。
また、このHC2発売にあわせ専用Androidアプリ「AK HC」も公開されました。こちらはHC2のボリュームアップ・ダウンをより細かく調整するためのアプリとなっています。Androidデバイスはモデルにより、接続した機器が自動的に最大音量に設定される、または小音量で再生されるなど、互換性の問題が発生することがあるため、デバイス本体のボリューム調整がうまくいかない時にご使用下さい。なお、iOSデバイスは本体ボリュームと連動して動作するためアプリはありません。
それではいよいよHC2の音質面もチェックしていきたいと思います。今回はAndroidスマホでサブスク音源を再生しての試聴を行いました。接続するイヤホンには、ちょうど先週発売となったAKの限定モデルで、4.4mmバランスケーブルが標準添付となっているAK ZERO1 Blackを選んでいます。
AK ZERO1の持つスッキリ・明瞭なサウンドはもちろんそのままに、バランス出力ならではの力強さを感じさせる中低域の押し出しが加わった印象です。音場は特に左右方向への広がりを感じますが、一音ごとの粒立ちも充分で立体感もしっかりと表現されています。
また、今回試聴に使用したスマートフォンではスマホ本体のボリュームがおおざっぱにしか上げ下げできず調整がしづらかったため、いったん最大ボリュームにした状態で専用アプリ「AK HC」を使って微調整を行いましたが、やや音量のとりづらいAK ZERO1でも「AK HC」上の数値で30前後あれば充分な音量で再生することができました。このあたりは機器により差異はあるかと思いますが、平面駆動型や静電型といったイヤホンでの使用も問題ないレベルのパワーを持っているようです。
本体素材 | アルミニウム | DAC | Cirrus Logic CS43198×2 (Dual-DAC) |
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入力 | USB Type-C / Lightning(付属変換コネクター使用) | 対応 OS | Windows 10、11 / MAC OS X 10.7 以上、Android OS / iOS(スマートフォン&タブレット PC) |
出力 | 4.4mm5 極バランス出力 (GND 接続あり) | サイズ (W×H×D) | USB プラグ部:12mm × 21mm × 6.5mm、ヘッドホン出力部:22.8mm × 60mm × 12.1mm |
重量 | 約 29g | アウトプットレベル | バランス 4Vrms (無負荷) |
周波数特性 | ±0.011dB (20Hz~20kHz) バランス、±0.145dB (20Hz~70kHz) バランス | 出力インピーダンス | バランス 4.4mm (1.5Ω) |
【商品情報】Astell&Kern AK HC2
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Astell&Kernの小型USB-DAC「AK HC2」は
・4.4mmバランス接続専用という思い切った仕様
・iOSデバイスユーザーも安心のLightning変換アダプターが付属
・バランス出力ならではの力強さを感じさせつつ、広い音場と立体感もしっかり表現
と、他の小型USB-DACと一線を画する個性と音質が特徴の製品となっています。
AK HC2は本日より発売開始、店頭試聴機もご用意しておりますので、ぜひ店頭でそのサウンドをお確かめください!