Astell&Kern AK PA10は、ブランド初のClass-Aアンプ搭載アナログポータブルアンプです。バランスとアンバランスで物理的に切り離された入出力回路を搭載することで高音質化。高い駆動力の最新ポタアンを詳しくレビューします。
目次
Astell&Kernとは
AK PA10の外観と特徴
AK PA10音質レビュー
製品仕様
まとめ
Astell&Kern(アステルアンドケルン、以下「AK」)は2012年に設立された韓国のオーディオブランドです。デビュー作であり世界で巻き起こった”ハイレゾプレイヤーブーム”の火付け役となったAK100のほか、さまざまなイヤホンメーカーとのコラボモデル、最近ではAK HC2/HC3といった小型USB-DACなどポータブルオーディオ製品を中心に展開しています。
そんな中、意外にもレパートリーになかったのがポータブルアンプ。2013年にUSB-DAC内蔵の「AK10」を発売、その翌年には大人気コンテンツ『ラブライブ!』とのコラボモデル(なんとμ'sメンバーにあわせた9色展開!)も登場し非常に話題となりましたが、その後AK製のポータブルアンプ製品は登場していませんでした。
それから10年後の2023年、AKブランド初となる”Class-Aアンプ搭載アナログポータブルアンプ”が本日発売を迎えました!それがこちらの「AK PA10」です!
今回はこのAK PA10について、詳細および音質レビューをお届けします。
AK PA10のパッケージ内容は本体、充電用USBケーブル(両端Type-C)、3.5mm端子ミニミニケーブル、シリコンバンド(2本)、マニュアル類となっています。
4.4mmバランス端子用の接続ケーブルはパッケージに含まれていませんのでご注意ください。
こちらがAK PA10の天板部です。これまでのAK製品同様、光の当たり具合で絶妙な影が演出される複雑な形状をしています。なお、このAK PA10のデザインコンセプトは「スロープ」とのことです。
AK PA10が搭載するClass-A(A級動作)アンプ回路はひずみが少さく高音質なサウンドが得られる反面、電力消費と発熱が大きいという側面を持っています。AK PA10の本体には熱伝導率の高いアルミが使われており、使用時の放熱の役目も果たしています。
本体上部には入出力端子とボリュームノブ兼電源スイッチが配置されています。
入力・出力とも左に「4.4mmバランス端子」、右に「3.5mmアンバランス端子」が用意されていますが、ここでも注意しなければならないのが「4.4mm入力時は4.4mm出力のみ、3.5mm入力時は3.5mm出力のみ」にそれぞれ対応しているという点です。これはバランスとアンバランスとで回路を物理的に切り離すことで信号変換を行うことなく、音源ソースを最大限劣化させずに増幅して出力するための仕様となっています。
ボリュームノブは電源スイッチ兼用タイプです。電源ON/OFFの部分だけカチッとクリック感がありますが、それ以降はスムーズな回り心地のノブとなっています。
本体下部には充電用USBコネクタのみ配置されています。なお、AK PA10はアナログアンプですのでこれはあくまで”充電用”です。デジタル入力には対応していません。
天板から見て右側面には3つのスライドスイッチが配置されています。左側面にはなにもありません。
スライドスイッチは左から順に、
・クロスフィード(ON/OFF)
・ゲインコントロール(Low/High)
・カレント(電流)コントロール(Low:デフォルト/Mid:+50mA/High:+100mA)
となっています。
このうち、AK PA10の大きな特徴がカレントコントロール機能です。3段階に切替可能で、電流値に対するA級アンプの特性を強調し、より力強いサウンドを作り出すことが可能となっています。
付属のシリコンバンドにはしっかりと「Astell&Kern」ロゴが刻まれています。
このシリコンバンド、いにしえのポタアンユーザーには「懐かしい!」という感じのアイテムですが、最近のポータブルオーディオファンの中には「なにに使うのかわからない…」という方もいるかも知れませんね。
答えはこちら。
このシリコンバンドは、ポータブルアンプとプレイヤーを重ねて固定する時に使うものなのです。なお、AK PA10の背面にはAK製品ではおなじみの幾何学模様が施されたラバーパッドが貼り付けられており、重ねたプレイヤーがズレにくくなっています。
※写真はわかりやすいようにプレイヤーの位置をずらしています
それではAK PA10の音を聴いてみましょう。プレイヤーには同じくAKのフラッグシップモデル・SP3000を、iFi Audio 4.4mm to 4.4mm cableで接続。ヘッドホンには先月発売されたばかりのSENNHEISER HD 660S2(バランスケーブル)を組み合わせてみました。AK PA10の設定はクロスフィード:OFF、ゲイン:High、カレントコントロール:Lowの状態から試聴をスタートしました。
プレイヤー(この組み合わせではSP3000)の音は大きく変えることなく素直に出す一方で、音場の前後感など空間の広がりがぐっと向上する印象です。また、低域の表現に関してはやはり駆動力の違いが出るようで、HD 660S2を直接SP3000につないだ場合にはややおとなしめに”打っている”ように聴こえたバスドラムなどの音が、AK PA10を経由することでズドンと”叩いている”ような躍動感が増しているように感じました。
ここでカレントコントロールスイッチをLowからMid、Highに切り替えてみます。たしかに電流値が高くなるにつれHD 660S2のドライバーの制動性が上がるようで、低域がより締まっていくようです。このあたりは接続するヘッドホンとの相性も大きそうなので、いろいろな機種で試してみると面白そうです。
クロスフィードスイッチも切り替えてみましょう。これは左右の音の一部を意図的にミックスすることでスピーカーで聴いているかのような自然な音像を再現する、という機能です。ヘッドホンアンプでは比較的よく見かける機能ですが、AK PA10ではONにしてもあまり不自然さを感じない、控えめなクロスフィードとなっているようです。一部のヘッドホン・イヤホンでは似たような効果を持たせたモデルもあるため、これも機種ごとに試して合う・合わないを確認してみるとよいかと思います。
近年はかなりDAPの出力も高性能化し、こうしたポータブルアンプの出番もあまりなくなってきたように思っていましたが、DAP自体の性能が上がったから今だからこそ使ってみると「ポタアンを通すこと」の楽しさというものを改めて実感できるのではないでしょうか。
アナログ入力 | アンバランス 3.5mm 3極 / バランス 4.4mm 5極 | ヘッドホン出力 | アンバランス 3.5mm 3極 / バランス 4.4mm 5極 |
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アウトプットレベル | [低ゲイン] 2.1Vrms アンバランス / 4.2Vrms バランス(負荷無し)[高ゲイン] 3.1Vrms アンバランス / 6.2Vrms バランス(負荷無し) | 出力インピーダンス | アンバランス 3.5mm (1.1Ω) / バランス 4.4mm (1.3Ω) |
充電時間 | 約3時間 (9V/1.67A 急速充電) / 約4時間 (5V/2A 通常充電) | 再生時間 | 約12時間 (アンバランス入力1Vrms / 低ゲイン / ボリューム30%) |
サイズ (W×H×D) | 約 73mm × 140mm × 23.3mm | 重量 | 約325g |
【商品情報】Astell&Kern AK PA10
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Astell&Kern初となるアナログポータブルヘッドホンアンプ「AK PA10」は
・AKブランド初のClass-Aアンプ搭載アナログポータブルアンプ
・3.5mm/4.4mmで物理的に切り離された入出力回路を搭載し、音源ソースを最大限劣化させずに増幅
・プレイヤーの音を大きく変えることなく、音場と躍動感がアップする駆動力の高さ
と、基本性能の高いDAPを愛用している方であればなおさらその効果が実感できる”ハイクラスポタアン”となっています。
こちらのAK PA10は本日より発売開始となりました!店頭試聴機もご用意しておりますので、ぜひ店頭でその実力をお確かめください!
4.4mmバランス接続ケーブルの試聴機もお貸出し可能ですよ。