Astell&Kern(アステルアンドケルン) A&ultima SP3000の音質レビューです。一大ハイレゾDAP(デジタルオーディオプレーヤー)ブームを巻き起こしたデビューから10年、Astell&Kernの最新フラッグシップポータブルプレーヤーの進化に迫ります。
Astell&Kernとは
Astell&Kern A&ultima SP3000の外観と特徴
Astell&Kern A&ultima SP3000音質レビュー
製品仕様
まとめ
いまから10年前の10月27日、あるポータブルプレイヤーが日本で初披露・発売されました。
その名は「Astell&Kern AK100」。その後のハイレゾブーム、DAPブームを巻き起こしたきっかけとなった、まさにオーディオの歴史を変えた製品です。
そのAK100の発売から10年目となる今年10月、3年ぶりに新型フラッグシップモデルが登場しました。それがこちらの「Astell&Kerrn A&Ultima SP3000」(以下SP3000)です!
今回はこのSP3000について、改めて詳細と音質について詳しくお届けいたします。
Astell&Kern伝統のデザインアイデンティティーである「光と影」のうち、”光に包まれる”というコンセプトのもと設計された今回のSP3000はハウジング素材に『Stainless Steel 904L』を採用しています。これは別名スーパーステンレスとも呼ばれ、通常のステンレスよりもクロムやモリブデン、ニッケルの成分を多く含むいっぽう、鉄の成分を大幅に減少することで高い耐久性と耐食性、そしてなによりも非常に美しい光沢をもつ金属となっています。この904LをDAPのハウジング素材に採用したのは、SP3000が世界初だそうです。
なお、SP3000はブラック、シルバーの2色展開ですが、今回のレビュー用サンプルはシルバーモデルを使用しています。
右側面にはA&Ultimaシリーズでおなじみとなる、腕時計のリューズのような電源ボタン兼ボリュームノブが配置されています。そういえば、Stainless Steel 904Lは世界的にも有名な高級腕時計でも使われている素材でもありますね。
左側面には「戻る」「再生」「進む」の3つのボタンが配置されていますが、これまでのSP1000/SP2000と異なりこのボタン群を頂点として出っ張ったようなデザインとなっています。
本体上面には左から2.5mmバランス、4.4mmバランス、3.5mmシングルエンドの各イヤホン出力端子が並びます。
底面にはUSB Type-C端子とmicroSDカードスロットが並びます。なお、microSDカードスロットはSP2000同様、バネ式で道具不要のスロットになっていますのでカードの着脱時にはうっかり飛ばしたりしないようご注意ください。
(光の当たり具合で黒っぽく写っていますが実物はシルバーです)
背面のパネルには角度によって微妙に見えたり見えなかったりする、デザインアイデンティティー「光と影」を表現した幾何学模様が刻まれています。
外見的な特徴に続き、お次は内部の特徴についてお話したいと思います。
SP3000は世界で初めて、デジタル信号処理とアナログ信号処理を完全に分離した「HEXAオーディオ回路構造」を搭載しました。
さらにSP3000では旭化成エレクトロニクス社の最新フラッグシップDACチップである「AK4499EX」を4基使用していますが、この使い方が従来のDAPとひとあじ違います。
通常のDAPではシングルエンド・バランスどちらの出力にも同じDACチップを使用し、シングルエンド用・バランス用の各アンプ部に信号をそれぞれ送り出しているのですが、SP3000ではDACチップの時点からシングルエンド・バランスの各回路を独立させた「デュアルオーディオ回路」を実現しました。これにより、S/N比は歴代AKプレイヤーで最高となる”130dB”を達成したとのことです。
また、ユーザーインターフェース面にもAKプレイヤーとしては新しい試みが導入されています。たとえばこのCDジャケット風表示、ただ単にアートワークを並べているわけではなくしっかりCDのプラケースまで表現しているという芸の細かさです。
#SP3000 の新UI、その昔iPodを愛用していた方々にはたまらないのでは…?! #AstellnKern pic.twitter.com/HYj38aQFNB
— フジヤエービック -FUJIYA AVIC- (@FUJIYAAVIC) September 13, 2022
それではSP3000の音質も確認していきましょう。せっかくのAKフラッグシップ機なので、組み合わせるイヤホンにもそれにふさわしいクラスのモデルを…ということでqdc TIGERを選んでみました。
シャープで音のひとつひとつをハッキリを描き出すかのような解像感の高さと、それらをなめらかに結び付けて「音」から「音楽」へと組み立ててユーザーの耳に届ける、Astell&Kernが10年かけて培った技術力の高さがうかがえるプレイヤーです。
音色はややクールですがけっして情感やエネルギーが失われるわけでもなく、S/N比の高さから特にボーカルなどでは無音状態から最初の一言が出てくるまでの緩急でもう歌の世界に引き込まれるような生々しさを味わえます。音場は充分な広さがありますが、左右ばかりでなく前後の位置関係が明確に表現されるようです。今回組み合わせたqdc TIGERは6BA+2ESTというドライバー構成のため再生機器のパワーが要求されるところのあるイヤホンですが、タイトながらしっかりと芯のある、腰の据わった低域を再現してくれています。Astell&Kernの歴代モデルを知る方であれば、ポータブルオーディオが進化を重ねてきた10年という歳月を改めて実感できるサウンドに仕上がっているのではないでしょうか。
しばらく試聴してみてちょっと気になった点といえば、あまりに研ぎ澄まされたそのデザインでしょうか。約493gという重さもあって、持っているとときどきカドが手のひらに食い込んでイタタ…となることがありました。磨き抜かれたStainless Steel 904Lのボディを保護する意味でも、付属のレザーケースにしっかり入れてのご使用をお勧めします。
DAC | AK4191EQ×2 + AK4499EX×4 (Dual-DAC×2) | 出力インピーダンス | アンバランス 3.5mm (0.7Ω) / バランス 2.5mm (1.7Ω) 4.4mm (1.6Ω) |
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入力 | USB Type-C (充電&データ転送) | 出力 | 3.5mm3極アンバランス出力 (光デジタル出力兼用)、2.5mm4極バランス出力 / 4.4mm5極バランス出力 (GND接続あり) |
サイズ | 82.4mm × 139.4mm × 18.3mm | 重量 | 約493g |
充電時間 | 約3.5時間 (QC 3.0充電時) | 再生時間 | 約10時間 (FLAC、44.1KHz/16bit、Vol.80、LCD Off) |
【商品情報】Astell&Kern A&ultima SP3000
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Astell&Kern「A&Ultima SP3000」は
・ハウジング素材に高い耐久性と美しい光沢をもつ『Stainless Steel 904L』を採用
・デジタル/アナログ処理およびシングルエンド/バランス回路を完全分離
・音楽の世界に引き込まれるようなS/N比の高さと、高解像度でなめらかさをもったサウンド
と、まさにAstell&Kernがこれまで歩んできた10年の歴史が凝縮した、ハイクオリティなポータブルプレイヤーとなっています。
SP3000はただいま大好評発売中です!試聴機も店頭にご用意しておりますので、ぜひお気に入りの楽曲入りmicroSDカード・イヤホンをお持ちのうえご試聴ください。もちろんqdc TIGERをはじめとした各種ハイクラスイヤホンのデモ機と組み合わせてのご試聴もOKです!