ULTRASONEのフラッグシップヘッドホン「edition15」をレコーディングエンジニアの太田タカシさんがレビューします。質の高いスピーカーで音楽を聴いている感覚に近いというedition15をエンジニアならではの視点で紐解きます。
目次
はじめに
ULTRASONE(ウルトラゾーン)とは?
シリーズの特徴
ULTRASONE edition15 の外観と特徴
ULTRASONE edition15 レビュー
edition15とSignature MASTERの比較レビュー
製品仕様
まとめ
はじめまして、レコーディングエンジニアの太田タカシです。
レコーディングの現場でも切っても切れない大事な機材のひとつヘッドホン。そんな中でもULTRASONE「Signeture MASTER」はその低音の再生能力とトランジェントの再現性で話題になり、ここ数年レコーディング、マスタリングエンジニアの中でも新しいスタンダードになってきています。
僕自身も1年ほどSigneture MASTERをメインのヘッドホンとして主にレコーディングやミキシングの確認用で使っているのですが、ヘッドホンらしからぬ立体感でスピーカーとの切り替えがしやすいため、音の確認がスムーズに行える点が気に入っています。
また、レコーディングの際にアーティストの方に使ってもらうこともあるのですが、自身の演奏や歌唱のニュアンスが掴みやすいと好評です。
今回はそんなULTRASONEのフラッグシップモデル「edition15」をレビューします。同社のハイエンドヘッドホンであること、そして個人的には大好きな開放型ということもあり、とても楽しみです。ULTRASONE独自の技術もおもしろいのでその辺も触れていこうと思っています。
ULTRASONE(ウルトラゾーン)は、ドイツに本社を置くヘッドホンメーカーです。ヘッドホンでもスピーカーで聴いているような自然な音の響きと定位感を実現するナチュラルサラウンドサウンド・テクノロジー「S-Logic」をはじめ60もの特許を所得し、自然な臨場感を追求し続け、独自の技術と発想でプロダクトを作っているメーカーです。
レビューに移る前にEditionシリーズについて触れておきましょう。
ULTRASONEのEditionシリーズは、同社が誇るハイエンドヘッドフォンのシリーズのひとつで、
主な特徴としては
その中でもedition15はEditonシリーズのフラッグシップモデルでULTRASONEが培ってきたノウハウとそれらを昇華させた革新的なハイブリットテクノロジーを搭載した開放型ヘッドホンです。
それでは、edition15を紐解いていきましょう。
箱をあけると中から立派なレザーケースが出てきます。このような仕様は、レコーディング用の機材やヘッドホンにはあまりないので凄くテンションが上がります。
また、同封されている封筒にはシリアルと周波数特性が記録されている紙が入っています。署名もしっかり記入されており、品質管理の徹底にもプライドが見てとれます。
テンションの上がるレザーケースを開けると中には
edition15本体を手に取ってみると、しっかりとした造りを感じさせる重さを感じますが、装着していると疲れてしまうような重さではなさそうです。
ハウジングはアメリカンチェリーウッドとステレンススチールのハイブリット仕様で、フレームを担うチェリーウッドは経年変化を楽しめるようにワックス仕上げです。
プレートを担うステンレススチールには1200もの開孔穴をドライバーポジションから放射状に配置されており、音抜けとデザイン性を両立した作りとなっています。
ヘッドバンドはメリノシープスキンレザーが採用されています。とても柔らかい肌触りでクッションもしっかり効いているので長時間装着していても負担がかかりにくいのではないでしょうか。
イヤーパッドにはマイクロベロア素材が使われています。深めに作られているので圧迫感はなく余裕を感じられると思います。
このイヤーパッドはマグネット脱着式となっていて、オプションで別売りのメリノシープスキンレザーのタイプも用意されており、ジャンルや好みによって「音を着せ替える」ことができます。
40mmチタン/ゴールドプレイテッド・マイラーを採用。チタンとゴールドそれぞれの性能を引き出したハイブリットドライバーで広大な空間を表現しつ高密度かつ明瞭な定位感のサウンドを特徴としています。
個人的にも注目しているULTRASONE最大の特徴ともいえるS-Logic EXテクノロジーも、もちろん採用されています。
通常ヘッドホン環境だと頭の中に音が定位していくのですが、この技術によってスピーカーで聞いているような自然な広がりと定位を感じることができます。また低域電磁波低減ULEテクノロジーによってドライバーマグネットから放出される低域の電磁波を軽減してくれるそうです。
さて、ここからは実際に音を聴いてみましょう!
まず視聴環境ですが
PC:Apple Mac Mini (2018) Intel Core i7
オーディオインターフェイス:APOGEE Symphony I/O にヘッドホンアウト
という環境で色んなジャンルを聴いていこうと思います。
実際装着してみて感じたのは、ヘッドバンドが痛くない。イヤーパッドの圧迫感も個人的にはキツすぎず緩すぎずとても良いです。
ひとつ不満をあえて挙げるならケーブルのLRが判りづらいので一目で分かると良いと思いました。
音質的には第一印象としては思ったより開放型特有の広がった印象がないと感じました。オープンなサウンドを想像していたので意外でしたが色々曲を聴いていくと味付けなく録音されている空気感を再現していることに気づきました。
正直にいうと「これ良いミックスは良く聞こえて、良くないミックスは良くなく聞こえるじゃん。。。」と自分が手がけた作品を聴いて自己反省を始めてしまいました。何当たり前のことを言ってるんだと突っ込まれそうですが。「なんとなく良い感じ!」というごまかしが効かないくらい音の根本の部分が視える感じです。ヘッドホンでありながらスピーカーのように楽器の距離を感じられるS-Logicテクノロジーの真髄を見た気がします。
音質的には特に味付けみたいなものは感じられず、エンジニア目線ではかなり好意印象でした。味付けがないと言いましたが解像度は凄く高く中低域から中高域の厚みと再現性は群を抜いたものがあり、ライブ盤やクラシックなどは目を瞑るとコンサートホールで音に包まれているような感動ものです。程よく距離感を感じられるので、幾らでも聴いていられるヘッドホンです。(レビューそっちのけで色々聴き耽ってしまいました)
実際にマスタリング作業で使わせていただいたのですが、その解像度のおかげでどんな処理をするべきかはもちろん、これはしなくて大丈夫という部分も明確に感じられ、全体像がしっかり見渡せる素晴らしいクオリティです。
次に僕が普段から使用しているSignature MASTERとの比較をしていきます。
まず一番の違いは距離感です。editon15は間に空気感を感じSignature MASTERの方が耳元で鳴ってる感があります。edition15は開放型、Signature MASTERは密閉型という違いがしっかり出ています。
音の重心はediton15は中域にフォーカスがある印象、Signature MASTERは中高域にフォーカスがある印象です。細部のディテイールはediton15、スピード感はSignature MASTERに軍配があがる感じでしょうか。これらはどちらが優れているかというよりも用途の差なのかなと思いました。
あえて得意ジャンルを分けるならedition15はクラシック、Jazzやライブ盤など自然な鳴りが大事な音楽やエレクトロやK-POPが向いていると思いました。音数が少ないPOPSも良いと思います。
Signature MASTERは、パンチが大事なラウドなROCK系、音数の多いアニソンやJ -POPなどがリスニング用としては向いている印象です。クリーンが映えるediton15、歪みが煌めくSignature MASTERといったところでしょうか。同じULTRASONEでもこんなにキャラが違うのかと思いました。
先ほど触れたマスタリングでも両方を使い比べたのですが、全体的な空気感や音の出方を教えてくれるediton15、ピンポイントの音のメリハリが大丈夫かを教えてくれるSignature MASTERって感じですね。
どっちもあったら最強じゃん。
型式 | 開放ダイナミック型ヘッドフォン | ドライバー | 40mm チタン/ゴールドプレイテッド・マイラー |
---|---|---|---|
インピーダンス | 40 Ω | 再生周波数帯域 | 5 – 48,000 Hz |
出力音圧レベル | 94 dB | 重量 | 336g(ケーブル含まず) |
【商品情報】ULTRASONE edition15
» 詳細を見る