DVAS Model2 をオーディオ専門店スタッフがレビューします。ボリューム機構なし、入出力ともバランス接続のみという音質最優先の思い切った仕様とユニークな設計で駆動力の高さが際立つハイクラスヘッドホンパワーアンプを詳しく紹介します。
目次
DVASとは
Model2の外観と特徴
Model2の音質レビュー
製品仕様
まとめ
DVAS(ディーバス)は、大手電機メーカーで長年にわたりDVDプレイヤー開発やTVの音響設計に携わってきた桑原光孝氏が2022年に設立した日本のオーディオブランドです。ちょっと変わったこのブランド名は「Deep Valley Audio Systems」の略称で、これは会社の所在地である埼玉県”深谷”市にちなんだものとのこと。そんなユニークなブランドが作り出した製品もまたユニーク、なんとヘッドホン専用のバランス接続アナログパワーアンプです!
今回はこちらの「Model2」について、詳細と音質レビューをお届けします。
まずはModel2の外観からご紹介しましょう。フロントパネルには電源ボタンと「PROTECTION」と書かれたランプ、そしてXLR3pinx2とXLR4pinのヘッドホン用バランスジャックが備えられているだけのシンプルな構成です。
大きさは幅430mm・奥行き330mm・高さ112mm、重さ17kgのいわゆるフルサイズアンプとなっています。
Model2ではDC漏れや過電流負荷などの異常が発生した場合、電源ボタン横のPROTECTIONランプが点灯しアンプ本体とヘッドホンを守る保護回路が作動するようになっています。
XLR4pinジャックをはさむようにXLR3pinの左右ジャックが配置されているのも面白いところです。
1ヶ所だけ斜めにカットされた部分にはブランドロゴが刻印されています。
このModel2はヘッドホン用の”パワーアンプ”ということで、一般的なヘッドホンアンプにはつきもののボリューム調整機能は一切ありません。音量調節はプレイヤーやDACといった入力機器側で行うことになります。ですので、間違って固定出力の機器を接続したままご使用にならないよう、充分ご注意ください。
一見なんの飾りもないシンプル過ぎるデザインのように見えますが、フロントパネルの左右に開けられた穴がサイドパネルと一体化して角度によっては非常に複雑な形状のようにも見えるという一面も持っています。
こちらがサイドパネル…というよりもこの厚みはサイドブロックと呼ぶべきですね。実はこのサイドブロックには、内部でアンプ基板などを固定するベースの役割を果たしているほか、放熱のためのヒートシンクとしての役割も果たしています。
こちらがModel2の背面です。中央に電源インレット、左右に入力用のXLR3pinジャックを配したのみで、この製品の仕様上の割り切りの良さがうかがえます。
と、ここまでご紹介した仕様や外観などからもかなり個性の強い製品であるModel2ですが、オーディオの要ともいえる電源回路の構成も非常に特徴的なものとなっています。
制御回路専用トランス×1(10VA)、電圧増幅段トロイダルトランス(50VA)×2、電流増幅段トロイダルトランス(80VA)×2の合計5個のマルチ電源トランス方式を採用するという大変なこだわりで、下の写真が実装されている様子なのですが…実はこれ、「Model2を逆さにして本体側のフレームを外した状態」で撮影しています。なんとこれらのトランスや制御回路は、厚さ10mmの天板に取り付けられた”天吊り型”構造となっているのです。
そのため、通常であればさまざまなパーツが固定されているはずの本体の底面には、放熱などのために開口部が大きく設けられており、通気性を高めるためメッシュでカバーされています。
こちらから見ると、たしかにトランスなどが天板から吊り下げられている様子がよくわかります。
なお、付属品はマニュアルと電源ケーブルのみとなっていますので、XLRケーブルは別途ご用意ください。
それではModel2の音質を確かめてみたいと思います。これまでご紹介したとおりこのModel2はボリューム機構を持たないアンプですので、今回はハイクラスDACのロングセラーモデル・Chord Electronics DAVEを組み合わせ、DAVE側で音量を調節しながら試聴します。
ヘッドホンにはDan Clark Audioの開放型・EXPANSEを選んでみました。EXPANSEはコンパクトな見た目に反して、しっかり鳴らすには充分なパワーを必要とするヘッドホンですがはたしてどうでしょうか。
【商品情報】Chord Electronics DAVE
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【商品情報】Dan Clark Audio EXPANSE
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Chord特有の解像度の高さに、歯切れの良さと透明感が際立つサウンドがベースとなっていますが、そこに若干の”生々しさ”が加わったような印象を受けます。
基本的には上流(今回でいえばDAVE)のキャラクターを充分に活かす傾向かと思いますが、そこにModel2の持つ駆動力の高さが加わることでサウンドに瞬発力が生まれているように感じました。特にEXPANSEを鳴らすうえでここまでの”キレ”を味わえるアンプというのはなかなかお目にかかれないのではないでしょうか。
いろいろと音源を変えながら試聴していく中で、この瞬発力とキレの良さが存分に楽しめるのが「津軽三味線」でした。太棹に鋭くバチを叩きつけた音の迫力は、多少の録音の古さすら忘れさせるものがあります。なかなか試聴では選ばれにくいジャンルかもしれませんが、機会がありましたらぜひお試しください。
サイズ(W幅×H高さ×D奥行) | 430mm×112mm×330mm | 重さ | 17kg |
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接続方式(入力) | XLRバランス入力 | 接続方式(出力) | XLR3pin x2、XLR4pin |
出力 | 3.5W+3.5W(32Ω) | 入力インピーダンス | 10kΩ |
【商品情報】DVAS Model2
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