FitEar IMarge Universalのオーディオ専門店スタッフレビューです。IMargeのために開発されたSonion製フルレンジBAにESTをちょい足ししたドライバー構成の浮遊感と没入感をあわせ持ったイヤホンを詳しく紹介します。
目次
FitEarのユニバーサルイヤホンとは
FitEar IMarge Universalの特徴
FitEar IMarge Universalの音質レビュー
製品仕様
まとめ
いまやライブやステージで見かけない日はない、というくらい数多くの国内アーティストに愛用されている”イヤモニ”のメーカーであり、同時にやはり数多くのファンにも愛用されているイヤホンメーカーでもあるのがFitEar(フィットイヤー)。ユーザーの耳型に合わせて作成されるイヤモニ・カスタムイヤホンの技術や音質をそのままユニバーサルイヤホン(イヤーピースを装着する通常のタイプ)に落とし込む、という今ではほとんどのカスタムイヤホンメーカーが行っているモデル展開をはじめて本格化したブランドでもあります。
そのFitEarから、また新たなユニバーサルイヤホンが登場しました!それがこちらの「IMarge Universal」(イマージュ ユニバーサル、以下「IMarge」)です!
今回はこのIMargeについて、詳細および音質レビューをお届けします。
ところで皆様は2年ほど前に掲載したこちらのインタビュー記事をご存知でしょうか?コロナ禍を経て久々に開催されたリアルイベント・春のヘッドフォン祭2022 miniで発表された、FitEarのメディカルグレードシルバー製筐体を持つイヤホン「Silver」開発者インタビューです。
おなじみの須山社長に加えて、このSilverがデビュー作となったエンジニア・堀田さんがはじめて表舞台に登場した記事でもあります。
【メーカーインタビュー】FitEar Silverは搭載ドライバーも開発者もニューカマー!
» こちらの記事を見る
実は今回発売を迎えたIMargeもその堀田さんが手掛けたイヤホン!しかもなにかテーマを与えられての開発でなく、採用するドライバーの選定から音決めまですべてを堀田さんがいちから作り上げたという意欲作なのです。
IMarge、というちょっと変わったモデル名は、堀田さんが開発のテーマに掲げた「Immersive(没入するような)」「Imagine, Image(想像する)」「Merge(取り混ぜる)」「Emerge(浮かび上がる)」などのキーワードをAIチャットツールに入力、それをもとに名付けたとのこと。
まずは外観から。クリアカラーのフェイスプレート部はFitEar全モデル共通の、ケーブルコネクタと一体化した砲台型となっています。コネクタはいまやすっかり”FitEar端子”として有名になった、左右で太さの異なる2ピンタイプ。装着時の接触や保持にスプリングの仕組みが使われており、軍や警察の使用機器でも50年以上にわたって採用されているほど信頼性の高い端子です。
本体はこのIMargeで初めて採用されたカラー・グリットアッシュ。写真ではわかりにくいのですが、よく見るとグレーの中にラメが入ったカラーリングとなっています。現在FitEarイヤホンのシェルは3Dプリンタで作成されているのですが、このラメを綺麗に積層させるのは非常に大変だったそうです。
ステム(軸)にはこれまでのFitEarユニバーサルモデルの特徴でもある、楕円形の断面と高域減衰を抑制するホーン形状のノズルを組み合わせた「オーバルホーンステム」を採用していますが、本体サイズとあわせこの部分も従来モデルより小型化することでさらに装着感がアップしています。
ドライバー構成は、フルレンジのバランスドアーマチュア2基に静電(EST)型のツイーター2基を組み合わせた”BA+EST”構成。フラットかつワイドレンジなサウンドのBAドライバーに、高域をわずかに補うためのESTドライバーを追加するという「ちょい足し」のコンセプトは、堀田さんのデビュー作・Sliverでも用いられた得意技ですね。
さらにサウンドの基礎部分を担当するBAドライバーは、なんとBAドライバーメーカー・Sonion社に堀田さんが直接かけあって改良を重ねてもらったという、このIMargeのために生まれた特別なドライバーだそうです。
付属ケーブルはFitEarのユニバーサル・カスタム問わず幅広く採用されているcable 013です。
付属のケースにはおなじみのセミハード…ではなく、なんとこちらも本日発売を迎えた韓国の新ブランド・LEPIC(ルピーク)の「JUKEBOX」を採用しています。耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂の外装にシリコン製の柔らかいインナー、そして湿度調節・抗菌・消臭機能を備えた特殊なACSシートを内蔵したイヤホンケースです。
【商品情報】LEPIC JUKEBOX
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付属イヤーピースもIMargeに合わせ一新、SpinFit W1(SS/S/MS/M/Lの5サイズ)が採用されています。なお、今回のサンプルでは単品販売のものと同じくサイズごとに軸の色が異なっていましたが、実際のIMarge製品版では全サイズ同じ色の軸となるとのことです。
それではいよいよIMargeの音質を確認してみたいと思います。プレイヤーにはAsell&Kern KANN ALPHAを組み合わせています。
ふわっとした「浮遊感」、そして気がつくと音楽の世界観にすっかり浸ってしまっている「没入感」をあわせ持つような、中低域メインのリスナーを柔らかく包み込むようなサウンドです。
逆にいえば顕微鏡で覗き込むような解像感やバキバキの低域といったものはありませんが、ゆったり聴いているとふと「お、ここでこんな音が鳴っていたのか」と気づかされるような描写力はしっかりと備えています。
静電型(EST)ドライバー搭載ということであの特徴的なパリッとした高域なのかな、と想像していましたが、実際に聴いてみると伸びやかさはありつつ刺激の少ない、角の丸まった高域であることにも驚かされました。この点は「音の主役(IMargeではSonion製フルレンジBA)を決めて、あとはその主役をうまく輝かせるための”ちょい足し”としてESTを使った」という堀田さんの設計思想がよく表れているのではないかと思います。ほどよい温度の白湯(さゆ)を飲んだ時のように心地よさが身体にしみわたるイヤホン、という印象です。
ドライバー | ハイブリッド型 | ドライバー数 | フルレンジバランスドアーマチュア型ドライバー×2、静電型ツイーター×2 |
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形式 | カナル型 | 周波数応答範囲 | - |
【商品情報】FitEar IMarge Universal
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