Meze Audio LIRIC IIのオーディオ専門店スタッフレビューです。旧LIRICを受け継ぎつつ、木製のイヤーカップや新技術QWRM搭載などの改良により、聴き疲れしにくいゆったりとしたサウンドバランスに進化したヘッドホンを詳しく紹介します。
目次
Meze Audio LIRICとは
LIRIC IIの特徴
LIRIC IIの音質レビュー
製品仕様
まとめ
創設者アントニオ・メゼ氏による芸術的な製品デザインが世界中から高く評価されているオーディオブランドといえばMeze Audio(メゼオーディオ)。もちろんこの日本でも大人気のブランドで、アントニオ氏もヘッドフォン祭などのイベント開催時にはたびたび来日しています。
そのMeze Audioが、独自のMZ4ドライバーを搭載したハイクラス密閉型ヘッドホン「LIRIC(リリック)」を発売したのが2021年12月でした。
【試聴レビュー】Meze Audio LIRIC はブランド初の密閉型平面磁界ヘッドホン、秀逸なデザインと音質をさっそくチェック!
» こちらの記事を見る
それから2年半を経て、このLIRICにバージョンアップモデルが登場しました!それがこちらの「LIRIC II(リリック ツー)」です!
今回はこのLIRIC IIについて、詳細および音質レビューをお送りいたします。
まずは箱をオープン!ご覧のとおり立派な化粧場には、こちらも立派なキャリングケースとちょっとした写真集のようなマニュアルが収められています。
こちらがLIRIC II単体の外観です。旧LIRICと同じサイズで、EmpyreanやEliteに比べるとふたまわりほど小型になっています。
ヘッドバンドやハウジングアーム、太めのシャフトなど機能性とデザイン性の両方が非常に高いのも旧LIRICと変わらず。
装着時に熱や湿気を逃がすための十字型スリットが設けられたヘッドクッションも旧LIRICゆずり。
付属品は先ほどのキャリングケースにケーブルが2種類、ケーブル用ポーチ、3.5mm→6.3mm変換プラグ、航空機内用アダプタとなっています。
ケーブルは一方が旧LIRIC付属のものと同じ3.5㎜端子のTPE ケーブル(3m)、もう一方が4..4mmバランス端子のPCUHDアップグレードカッパーケーブル(1.3m)となっています。パッケージにバランスケーブルが同梱されているというのはありがたいですね。
ここであらためてLIRIC IIのハウジングを眺めてみましょう。旧LIRICでは革張りとなっていたイヤーカップ部には、このLIRIC IIではマカッサエボニーが採用されています。
マカッサエボニーはインドネシア中部にあるスラウェシ島が主な産地となる高級木材のひとつで、日本では”縞黒檀”と呼ばれるほど美しく浮かび上がる縞模様が特徴です。
中央付近には旧LIRICのために開発された、エアフロ―(空気の流れ)を適切に制御しハウジング内の圧力を改善する「PRESSURE EQUALIZATION SYSTEM(圧力標準化システム)」の空気孔も設置されています。
旧LIRICと見比べるとこんな感じです。シボ加工が施された革張りの旧LIRICに対して、磨き上げられたマカッサエボニーの縞模様が美しいLIRIC IIと、どちらも高級感はそのままに個性の違いが現れていて面白いところです。
ハウジングの内側も見てみましょう。どちらも搭載するのはMeze Audioお得意の「平面磁界駆動型等磁力ハイブリッドデュアルコイルドライバー」をポータブル仕様に最適化した『MZ4』ドライバー…なのですが、左のLIRIC IIの方にはよく見るとなにやら「QWRM」と刻まれたパーツがついていますね。
これこそが、今回のLIRIC IIのために新しく開発された革新的な技術「QWRM(Quarter Wavelength Resonator Mask)」!高精度に加工されたメタルコンポーネントでドライバーフレーム上の開口の一部をカバーすることにより、7kHzを超える高周波帯域内にあるピークを効果的に減衰して耳への負担・聴き疲れを軽減するという技術なのです。
そしてもうひとつ、今回のLIRIC IIに加えられた変更点が”イヤーパッドの着脱”!旧LIRICでは着脱不可だったイヤーパッドですが、LIRIC IIではユーザーの要望にお応えする形でマグネット方式の着脱が可能になり、メンテナンス性が向上しました。
イヤーパッド自体の厚みや感触は旧LIRICと同じようで、外側や大きく肌に触れる部分はレザー、内周はスエード調の2種類の素材が使われています。
先に触れたとおり、ケーブルは左右とも3.5mmモノラル端子の着脱式となっています。ここも旧LIRICから受け継がれた部分ですね。
それではいよいよLIRIC IIの音を聴いてみたいと思います。今回はRMEのフラグシップ・マスター・コンバーター・ADI-2/4 Pro SEを用意し、せっかくパッケージに同梱されているのでPCUHDアップグレードカッパーケーブル(4..4mmバランス)で接続してみました。
【商品情報】RME ADI-2/4 Pro SE
» 詳細を見る
伸びやかな高域、音の土台を支える存在感たっぷりの中低域というサウンドバランスは旧LIRICを思わせますが、比較すると旧LIRICの方がやや硬質さのある音であるのに対し、LIRIC IIの方はあらゆる帯域で角のとれた優しい耳当たりになっていることに気づきます。
このあたりは今回採用された”聴き疲れを軽減する”という新技術・QWRMの効果がはっきりと現れている部分ではないでしょうか。音場も旧LIRICがリスナーの周囲をぐるりと囲むように展開されるのに対し、LIRIC IIは一歩先の前方に広く展開されるようなイメージとなっています。
音楽の中に入り込んで没頭するかのように聴き込むかたちとなるのが旧LIRICで、やや離れたところから客観的にゆったりと音楽を味わうのがこのLIRIC IIというように、見た目だけでなくそれぞれの聴かせ方も異なるのがおもしろいところです。
一方で、LIRIC IIの方がインピーダンスが高い(30→61Ω)こともあってかやや鳴らしづらくなっています。DAPなどポータブル環境での使用には相応の出力の高さが必要となりますのでご注意ください。
型式 | 密閉型 | ドライバーユニット | 平面磁界型ハイブリッドデュアルコイルドライバー |
---|---|---|---|
感度 | 100 dB SPL @ 1 kHz, 1mW | インピーダンス | 61Ω |
ひずみ率 | 0.15%未満 | 質量 | 約427g |
【商品情報】Meze Audio LIRIC II
» 詳細を見る