beyerdynamic DT 1770 PRO MK II・DT 1990 PRO MK II をオーディオ専門店スタッフがレビューします。9年ぶりにリニューアルした密閉型・開放型スタジオモニターヘッドホンを前モデルと比較しながら紹介します。
目次
beyerdynamic DTシリーズとは
密閉型モデル「DT 1770 PRO MK II」の特徴
開放型モデル「DT 1990 PRO MK II」の特徴
両モデルの音質チェック
製品仕様
まとめ
1924年に設立されたドイツ・ベルリンのオーディオメーカーといえばbeyerdynamic(ベイヤーダイナミック、以下「beyer」)。1937年に世界で初めてとなるダイナミック型ヘッドホン・DT48を発売して以来、放送局用のDT100や多くのレコーディングスタジオで使われているDT770/990など、数々の名機を生み出してきました。
その中で2015年夏に発表・発売され、長年にわたり世界中のヘッドホンファンから愛されてきたスタジオモデルが密閉型のDT 1770 PRO・開放型のDT 1990 PROの2つです。
その2モデルがついにこの2024年末にリニューアルをはたします!それがこちらの「DT 1770 PRO MK II」と「DT 1990 PRO MK II」です!
今回はこのDT 1770 PRO MK IIおよびDT 1990 PRO MK IIについて、詳細と音質レビューをお送りしたいと思います。
まずは密閉型モデルのDT 1770 PRO MK IIからご紹介しましょう。今回は代理店よりサンプル品をお借りしてのレビューとなるため、一部に銀色の代理店シールが貼ってありますのでご了承ください。
付属品は特製ハードケース、ストレートケーブル(3m)、コイルケーブル(5m)、そして人工レザーのイヤーパッドです。
2本のケーブルには3.5→6.3mm変換プラグも付属しています。
イヤーパッドについては本体装着済みのベロア製が音質と快適性のバランスのとれたタイプで、人工レザー製が外部からの騒音を遮断する高密閉性タイプになっています。
内側のフィルターはフラットなスポンジから、モールドを施した立体的なものに変わっています。
ハウジングは基本的に前モデル・DT 1770 PROと同じデザインですが、前モデルにはあった「Ω数の記載」と「Made in Germany」の文字がなくなっている、モデル名の部分のみわずかに帯状の凹みが設けられているなど、ちょっとした変化も見られますね。
なお、「Made in Germany」の文字はヘッドバンド内側に移動しただけでこのDT 1770 PRO MK IIもしっかりドイツ製ですのでご安心を。
ヘッドバンドも基本的には前モデルと同じつくりですが…
この9年の間にブランドロゴが変わったこともあって、頭頂部のロゴからは古くからのbeyerファンにはおなじみの「))))」がなくなりました。
前モデルから変わったのは外見ではなくその”中身”です。
今回のDT 1770 PRO MK IIおよび1990 PRO MK IIでは、強力な磁束密度を生み出すことでおなじみのテスラドライバーが「TESLA.45 ドライバー」に進化!素材の見直しや構造の最適化を行うことで、ひずみとインパルス応答(入力に対する出力反応の速さ)が大幅に改善したためインピーダンスが前モデルの250Ωから「30Ω」となり、より幅広いデバイスで使用できるようになりました。
ケーブルコネクタは前モデルと同じmini XLRの3ピンタイプで、残念ながらバランス接続には対応していません。
続いては開放型モデル・DT 1990 PRO MK IIのご紹介です。
こちらも付属品は特製ハードケース、ストレートケーブル(3m)、コイルケーブル(5m)と基本的にはDT 1770 PRO MK IIと同じですが、装着済み・付属の2種類あるイヤーパッドはどちらもベロア製となっています。
一見同じようなベロア製イヤーパッドですが、実は裏を返すとご覧のとおり、周囲に空けられた穴の数が違っています。
20個もの穴が開けられているのが装着済みの「プロデューシング ベロア」で、わずかに低音をブーストすることで豊かなサウンドを実現しています。4個の穴が開けられているのが「ミキシング & マスタリング ベロア」で、こちらはその名のとおりより分析的なサウンドを提供してくれるというイヤーパッドです。好みに応じて付け替えが楽しめます。
ハウジングも基本的に前モデル・DT 1990 PROに似たデザインとなっていますが、たとえばハウジング表面のスリット(穴)が前モデルでは上下で半分ずつずれて配置されていたのに対し、今回は左右で1段ずつずれた配置になっているため見分けがつきやすくなっています。
なお、こちらもヘッドバンド内側にはドイツ製であることを示す「Made in Germany」の文字が刻まれています。
そのほか、ヘッドバンドやケーブルコネクタ、ドライバーなどの仕様は先にご紹介したDT 1770 PRO MK IIと同じとなっています。
それではいよいよ両モデルの音質チェックです。組み合わせるヘッドホンアンプには、TEACのデュアルモノーラル・ヘッドホンアンプ搭載DAC・UD-507を選んでみました。
【商品情報】TEAC UD-507-B
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まずは密閉型モデル・DT 1770 PRO MK IIを聴いてみましょう。イヤーパッドはベロアタイプを装着して試聴しました。
底力を感じさせる低域の存在感を中心に、存在感のある中域にやや抑え気味の高域とが組み合わさり非常に落ち着きのあるサウンドに仕上がっています。特にボーカルの表現には生っぽさを感じさせます。音場としてはやや狭めではありますがリスナーの周囲を囲むように展開され、分離感・定位感の良さもあるのでスタジオモニターとしての実力はしっかりと引き継いでいるように思いました。
前モデルと比較するといわゆる「音の暗さ」がやわらぎ、若干明るめな方向に変化したように聴こえます。この「暗さ」はある意味”beyerらしさ”が現れているポイントでもあるので評価が難しいところですが、逆にいえば「見通しの良い音」になった、ということにもなります。この部分は時代とともに変化する音楽シーンへのbeyerなりの対応なのかも知れません。
続いて開放型モデル・DT 1990 PRO MK IIも聴いてみましょう。イヤーパッドは「プロデューシング ベロア」を装着しての試聴です。
サウンドバランスは先に聴いたDT 1770 PRO MK IIによく似ていますが、こちらの方が高域の伸びを感じさせます。音場も若干広がりが出て、生っぽさよりも作り込まれたスタジオライブを聴いているかのような表現をするヘッドホンです。
こちらも前モデルと比較すると、特徴的な(気になる方には欠点とも言われた)「高域の荒さ」がなくなり、非常になめらかで自然な鋭さを持ったように聴こえます。これも”1990らしさ”を構成するポイントではありましたが、時には聴き疲れを生むこともあった部分だけに、長時間の使用を考えると順当な変化なのではないでしょうか。
トランスデューサ | ダイナミック | ケーシング | 密閉型 |
---|---|---|---|
着用形式 | オーバーイヤー | 周波数特性 | 5 – 40,000 Hz |
公称インピーダンス | 30オーム | 重量 (ケーブルを除く) | 377 g |
【商品情報】beyerdynamic DT 1770 PRO MK II
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トランスデューサ | ダイナミック | ケーシング | 開放型 |
---|---|---|---|
着用形式 | オーバーイヤー | 周波数特性 | 5 – 40,000 Hz |
公称インピーダンス | 30オーム | 重量 (ケーブルを除く) | 376 g |
【商品情報】DT 1990 PRO MK II
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