ハイクラスポータブルアンプBrise Audio「TSURANAGI」がついに出荷開始しました。大柄なサイズ、そして約30万円という価格で話題となった「TSURANAGI」を今回は音質レビューをまじえて詳細をお届けします。
Brise Audioとは
ポータブルアンプ「TSURANAGI」
Brise Audio TSURANAGIの外観
Brise Audio TSURANAGI音質レビュー
製品仕様
まとめ
Brise Audio(ブリスオーディオ)は2015年に群馬県で設立されたオーディオケーブルメーカーです。
ブランド名の由来はフランス語の”そよかぜ”で、「聴く人が心地よいと感じるような音の製品を作りたい」という想いを込めて命名されています。
ヘッドホン・イヤホン用のケーブル制作にも早くから着手しており、2016年の春のヘッドフォン祭を皮切りに多くのオーディオイベントに出展。そのケーブルが生み出す音と、きめ細かなカスタマイズ対応で国内外を問わず多くのユーザーから支持されているブランドです。
さて、「Brise Audioはケーブルメーカー」とご紹介しましたが、実は昨年末から”ケーブルではない”製品を数多くご注文いただいているのです。
それがこちら、ポータブルアンプ『TSURANAGI』です!
この『TSURANAGI』、ポータブルアンプとしては異例の大きさ、そしてなんといっても297,000円(税込)というなかなかのお値段を誇る製品なのですが、それでも驚くほどの人気を集めています。
今回は『TSURANAGI』の詳細と、その音質についてご紹介したいと思います。
まずは「なぜケーブルメーカーであるBrise Audioがポータブルアンプを作ったのか?」というお話からお伝えします。
オーディオケーブルの制作には当然ながら「その音が正確に評価できるオーディオシステム」が必要となります。
数々のハイエンド機材を試してきたBrise Audioでしたが、ヘッドホン用のアンプに関しては納得できる製品が見当たらなかったとのことで、「それなら自分たちで作ってしまおう」と作られたのがイベントなどでもよく見かけるこの大きなヘッドホンアンプ。こちらはあくまでケーブル開発のための評価用機材となり、販売はされていません。
同様に、Brise Audioが理想とするポータブルオーディオ環境を構築するために開発されたのがこの『TSURANAGI』というわけです。
実は2年以上前から開発はスタート、2019年11月に実施された「秋のヘッドフォン祭」ではいかにも”開発中”という、基板だけの展示も行われていました。
それでは改めて、晴れて製品版として登場した『TSURANAGI』に触れてみたいと思います。
日本神話の”水面の神”の名がつけられたポータブルアンプですが、そのサイズは幅80mm x 高さ30mm x 奥行120mmとそれなりにビッグ。重さは約360gです。
フロントパネルには入力端子として4.4mmバランスジャックと3.5mmシングルエンドジャック、出力端子として2.5mmと4.4mmのバランスジャックが配置されています。
入力はトグルスイッチでどちらか一方に切り替えが必要です。
出力端子の上にはバッテリーインジケーターを配備。
電源のオン・オフはボリュームスイッチ連動式です。
TSURANAGIは2,800mAhのバッテリーを内蔵しており、充電は背面のUSB Type-C端子から行います。この端子は充電専用で、USB-DAC機能は非搭載となっています。なお、バッテリー持続時間は約8時間です。
入力のみ、一般的な(バランス出力端子がない)プレイヤーでも接続可能なようにシングルエンド端子を搭載していますが、この『TSURANAGI』は”バランス出力専用”のポータブルアンプです。
とはいえ、ただ単にプレイヤーから入ってきた信号を増幅しているわけではなく、バランス信号を内部で一度アンバランス変換して外来ノイズを徹底的に除去、その後再度バランス信号に再変換してから増幅・出力するという非常に手間のかかる処理を行っています。
このほか、内部配線にはもちろんBriseAudio製ケーブルを採用。
Brise Audioのハイエンドケーブル『MURAKUMO』や『YATONO』で使用される電磁波吸収シールド材やCNT(カーボンナノチューブ)といったノイズ対策を基板などに施すことで、更なる音質アップを図っています。
約30万円という、一見「えっ?!」と思うような価格にはそれなりの理由があるのです。
それでは試聴に移ります。
今回はプレイヤーとしてAstell&Kern KANN ALPHA、イヤホンにFitEar DC Ti(009 Aquaケーブル「4.4mmバランスプラグ」)を選んでみました。
KANN ALPHAとTSURANAGIとの接続には、試聴機としてもご用意している『Brise Audio YATONO MINI LE(両端4.4mmバランス)』を使用しています。
【商品情報】FitEar DC Ti
» 詳細を見る
【商品情報】Brise Audio YATONO-MINI-LE ミニミニケーブル 4.4mm to 4.4mm
» 詳細を見る
DC Tiは静電型ドライバを搭載していることもあり若干鳴らしづらいイヤホンではあるのですが、さすがにアンプにつなぐとそのあたりの不安はまったくなく、持ち味である心地よい響きと音の厚み、縦横への音の広がりなどがしっかりと発揮されているのを感じます。
同時に、無理にパワーを挙げてサウンドバランスを変えてしまうようなこともなく、全帯域に対して均等に底上げを図ったかのような自然さも持ち合わせているようです。
続いてヘッドホンでも試してみたいと思い、ハイクラスヘッドホンの定番機「SENNHEISER HD 820」(純正4.4mmバランスケーブル)をつないでみました。
【商品情報】SENNHEISER HD 820
» 詳細を見る
さすがにイヤホンでの使用時よりもボリュームが必要となるため、KANN ALPHA側の設定をハイゲインにするなど多少の設定変更は必要でしたが、それでもHD 820を鳴らすのに充分な音量は確保できています。
こちらもHD 820ならではの広い音場と情報量の多さはそのまま、ある意味アンプの存在感を変に感じさせることなくしっかりとヘッドホンをドライブしてくれるようなイメージです。
さらに、HD 820のケーブルを純正品から『Brise Audio MIKUMARI Ref.2(4.4mmバランス)』に替えて聴いてみます。
【商品情報】Brise Audio MIKUMARI Ref.2 5極4.4mm 1.3m
» 詳細を見る
この組み合わせにしてみると、このTSURANAGIが「Brise Audioが理想とするポータブルオーディオ環境を構築するために開発された」という言葉の意味がよくわかります。
全体的な解像感がぐっとアップし、高域の伸びや低域の沈み込みなどもより印象を強くする方向に変化します。オリジナルのHD 820の音とはひと味違う傾向ではありますが、こちらもまた魅力あるサウンドといえるのではないでしょうか。
アンプそのものの音の変化には派手さを感じないものの、ケーブルによる音の変化はしっかりと描き出すことができているという点が、TSURANAGIがリファレンスアンプであるということをよく表していると思います。
しばらく聴いていると、このシステムがポータブル機器で鳴っていることを忘れるくらいの表現力です。
サイズ(W幅×H高さ×D奥行) | 80mm×30mm×120mm(突起部含まず) | 重さ | 約360g |
---|---|---|---|
接続方式(入力) | バランス/アンバランス(5極4.4mm+3極3.5mm) | 接続方式(出力) | 5極4.4mmバランス、4極2.5mmバランス |
電源方式 | USB(Type-C)/ 電源バッテリー | ワイヤレス(Bluetooth)対応 | - |
【商品情報】Brise Audio TSURANAGI
» 詳細を見る
Brise Audio TSURANAGIはポータブルアンプとしてはかなり大きめなサイズ、そしてなんといっても約30万円という価格など、ぜひ皆様に…とおすすめしづらい点はあるものの、ポータブル環境でも音質を追求したいという方、そしてなによりBrise Audio製品のファンの方にとってはこの音を聴き逃す理由はない!というレベルのポータブルアンプに仕上がっています。
『TSURANAGI』はただいま台数限定にてご注文受付中です。完売後の次回入荷につきましては半導体不足などの影響もあり未定となっておりますので、ご注意ください。
店頭試聴機もご用意しておりますので、まずは一度お使いのDAPやイヤホン・ヘッドホンと組み合わせてその音質をご確認下さい。