"全部入りDAP"として好評を博したShanling M6がアクシデントを乗り越えて再登場!今回は新たにESS社製DACチップを搭載したモデル・M6 Ver.21をご紹介します。
ベースモデル・Shanling(シャンリン) M6とは
M6 Ver.21の外観
M6 Ver.21の変更点
M6 Ver.21の音質(M6との比較試聴)
M6 Proとの比較試聴
製品仕様
まとめ
中国・深センのオーディオメーカー・Shanling(シャンリン)といえばポータブルプレイヤーのヒット作を次々と生み出すことで知られています。最近では特にアンダー40kにもかかわらず上位機種に負けないクオリティのエントリーモデル・M3Xが大人気です。
特に2019年12月に発売されたDAP・M6は2.5/4.4mmのバランス端子を両方とも搭載した"全部入りDAP"として話題となりましたが、発売からちょうど1年を迎えた昨年末になんと主要パーツであるDACチップの工場が火災に見舞われるというアクシデントが発生!そのためDACチップの生産がストップ、入手困難となったことにより惜しまれつつも生産完了となりました…。
が、そんな悲劇を乗り越えるようにDACチップをESS社製「ES9038Q2M」に改め、さらに細部にも改良を加えたモデルが登場します!それがこちら、M6 Ver.21!
それではさっそく、M6 Ver.21がどんな変化を迎えたのか見ていきたいと思います。まずはベースモデルとなるM6と、その上位機種であるM6 Proと並べてみると…あれ、真ん中のM6 Proには本体右上の丸みがないという特徴はあるものの、左端のM6と右端のM6 Ver.21はあまり、というか全然変わってない?!強いていえば、よく画面を見ていただくとわかる通り右端のM6 Ver.21ではユーザーインターフェースが真ん中のM6 Proと同じになったというところでしょうか。
ひっくり返して背面の比較。やはり真ん中のM6 Proのみサンドブラスト加工が施されているというわかりやすい特徴はあるものの、左端のM6と右端のM6 Ver.21とではほとんど違いがない!
そう、M6とM6 Ver.21の外見上の違いはただひとつ、「ボリュームノブの色」のみ。M6 Ver.21の方が金色のボリュームノブになっています。ちなみにこのボリュームノブと重さ(M6は228g、M6 Ver.21は233g)以外は同じなので、M6用別売レザーケースがそのまま使用可能です(M6 Ver.21用ケースという形での発売予定はありません)。
たしかに今回はDACチップの変更によるマイナーチェンジ、いくら変わったとはいってもこれは見た目の通りちょっとした変化しかないのかな…という感じがしなくもないのですが、はたして内部の変更点はどうか?!
まずはすでに触れていますが、一番大きい変更点が「DACチップの変更」です。M6ではAKM(旭化成エレクトロニクス) AK4495SEQをデュアル搭載していましたが、M6 Ver.21ではESS ES9038Q2Mのデュアル搭載となりました。また、アンプ回路のローパスフィルタに使用されているオペアンプがTI OPA1612からOPA2211と上位モデルに変更されているなど、ただ単純にDACチップだけを載せ替えたわけではなく、細部にわたって見直しをかけた様子が伺えます。
さて、こうした内部構成の変更が音にどんな変化をもたらしたのか?!
今回はベースモデル・M6との比較試聴でその音質をお伝えしてみたいと思います。使用するイヤホンはちょうど昨日5月13日から試聴機の展示を開始した、SENNHEISER IE 900!まずは3.5mmアンバランス接続での比較試聴です。
見た目の変化が小さいのに比べ、音質の変化はかなり大きい!というのが第一印象です。ESSのDACチップというと「解像度が高く繊細で分析的な音」というイメージが強いのですが、今回のM6 Ver.21を聴く限りはむしろ「濃密な音」という感じ。これはDACチップの変更で生じる変化よりも、アナログ回路など全体的な見直しをかけたことによる変化がより大きく音に現れた結果ではないでしょうか。
無印M6が余韻の少ない、わりとあっさりした音の表現になっているのに対し、M6 Ver.21では音の強弱がより細かく聴き取れるなど、S/N比の向上もしっかりと聴き取れるかと思います。
続いて4.4mmバランス接続でも比較試聴してみます。
全体的な印象は3.5mmアンバランス接続で聴いた時と変わりませんが、バランス接続により駆動力が上がったためか低域の出方にまた違いが。IE 900自体がバランス接続時に低域の量感がかなり増えるイヤホンでもあるのですが、M6 Ver.21が比較的ゆったり目で柔らかな低域の量が増えるのに対し、無印M6はもともとあっさり目な低域ということもありタイトで押しの強い低域に変化する、という対照的な音の変化を見せます。
また、M6 Ver.21と無印M6では「ゲイン設定」の違いも大きいようです。無印M6がロー・ハイの2段階なのに対し、M6 Ver.21はロー・ミディアム・ハイの3段階となっているのですが、同じロー設定・同じボリューム数値にしてもM6 Ver.21の方が音量としては大きくなっています。感度が高いイヤホンを使用する場合は気をつけたいところです。
それでは上位機種、M6 Proとの比較です。M6 ProのDACチップは据置機器でも使用例の多い、AKM AK4497EQ(デュアル)とこちらもなかなかのスペック。
こちらは先ほどの無印M6の時と比べると、それほど大きな差はないような印象です。強いていえばM6 Proの方が音場の前後感がよりはっきりと表れる感じですが、そのくらいの違いでしょうか。今回は3.5mmアンバランス接続、4.4mmバランス接続とも同じ傾向のようです…なんてさらっと書いてしまいましたが、これはつまりM6 Ver.21が上位機種であるM6 Proといい勝負ができるだけの完成度である、ということになるのです。
DACチップの生産停止にともなうモデルチェンジ、という大きな試練を乗り越えたM6 Ver.21がたどり着いた先は上位機種に匹敵するほどのレベルアップだった!と考えると、なんだかひとつの物語を見たような気にさせられます。
なお、M6 Ver.21・M6 Proともゲイン設定は3段階なのですが、M6 Ver.21が前述の通りロー・ミディアム・ハイであるのに対し、M6 Proはロー・ハイ・ターボという記載になっています。それもあってか、M6 ProのローはM6 Ver.21のローよりもさらに音量が大きくなっていますのでご注意下さい。
本体サイズ |
133.5 x 71 x 17.5mm |
---|---|
重量 |
約 233g |
液晶 |
4.7 inch 1280*720 HD スクリーン |
OS |
Android 7.1 |
対応フォーマット |
DSF / DFF / DXD / APE / FLAC / WAV / AIFF / AIF / DTS / MP3 / WMA / AAC / OGG / ALAC / MP2 / M4A / AC3 / M3U / M3U8 / OPUS / ISO(DTS のものは非対応) |
対応音声形式 |
最大 768 kHz/32bit までの PCM |
ゲイン設定 |
3 段階 (Low / Mid /High) |
内蔵容量 |
32GB + Micro SD カード (最大 2TB まで対応) |
最大連続再生時間 |
11 時間(SE) / 8 時間(バランス) |
バッテリー容量 |
4000mAh |
DAC チップ |
ES9038Q2M x2 |
デジタルフィルター |
7 つの異なるフィルターから選択可能 |
Wi-Fi 対応周波数帯 |
2.4GHz / 5GHz |
Bluetooth バージョン |
4.2 |
対応コーデック |
LDAC / SBC (双方向) |
シングルエンド出力特性値 | |
周波数特性 |
20Hz - 40kHz |
THD+N |
0.0005% |
クロストーク |
76dB @ 32Ω |
ダイナミックレンジ |
123dB |
S/N 比 |
124dB |
フロアノイズ |
>116dB (1.5uV) |
出力インピーダンス |
<0.3Ω |
出力レベル |
12mW @ 32Ω (Low Gain) |
バランス出力特性値 | |
周波数特性 |
20Hz - 40kHz |
THD+N |
0.0006% |
クロストーク |
111dB @ 32Ω |
ダイナミックレンジ |
126dB |
S/N 比 |
127dB |
フロアノイズ |
>114dB (1.9uV) |
出力インピーダンス |
<0.6Ω |
出力レベル |
36mW @ 32Ω (Low Gain) |
「怪我の功名」ということわざがありますが、このM6 Ver.21はまさにその通り、というくらいDAPとしての完成度が高まった機種に生まれ変わりました。
もちろんDACチップをはじめとした半導体不足は深刻な問題としてさまざまなメーカー・製品に影響しているので早く解消してほしいところではありますが、そんなアクシデントにも負けずより良い製品を作り出したShanlingの意地をぜひ一度お試し下さい。
M6 Ver.21の発売は5月21日(金)、ご予約受付および店頭試聴機の展示は本日より開始しております!